初心者向けファッション指南業者の間ではなぜかトレンド不要論がまかり通っているが、以前のブログで書いたように裾丈の長さすらトレンドに左右される。
ズボンや上着の太さも同様だ。
だいたい10年~20年くらいでトレンドが変化する。もっとわかりやすく言うと、大衆の好むポイントが変化する。

変化しなかったら欧米人は古代ローマ帝国時代から服装が変化しないということになるし、日本人は縄文時代から変化していないということになる。

また、好まれる素材もトレンドによって変化する。
トレンド不要論者はこの部分も無視している。

先日から2つのブランドの展示会と店舗内覧会に行った。

ワンオーとガービッジというブランドだ。
ワンオーはいくつかファッション系のメディアで取り上げられているから見た人も多いだろう。

ガービッジのリメイクジーンズ

ワンオーのリメイク商品

ガービッジは小松昇平氏というベテランデザイナーが再スタートで始めたブランドである。

両方とも、どカジュアルで、リメイク商品を目玉としている。
とくにジーンズのリメイクを一押ししている。

正直にいうと、リメイクジーンズの良さは当方にはさっぱりわからない。
破れた箇所を縫い合わせたり、裏布を当てて継ぎ当てたりすることは理解できる。
いわゆる、リペア加工ジーンズと同じだからだ。

しかし、そこに派手なワッペンを貼ったり、目立つ刺繍を入れたりすることは理解ができないし、それを着用したいとも思わない。

disっているのではない。自分の好みではないと言っているのである。

当方なら着用しないし、買わないが、この2つのブランドはいずれも大手有名セレクトショップへの卸売りが決定しているという。
こんなものをあの店に置くのかと驚くのだが、大手セレクトショップの連中はそういう目端だけは効くから、この手の商品が仲間内では盛り上がっているのだろうし、そういうものを好む雰囲気が上得意客の間には広がっているのだろう。
これこそ、まさに「トレンド」である。

新ブランド「ガービッジ」は古着のリーバイス501を仕入れてリメイクすることに現時点では特化している。
ワンオーも古着をリメイクしている。もっともこちらはジーンズに限らず、さまざまなウェアをリメイクしている。

微妙な差異はあるのだが、共通しているのはリメイクに使用する古着ジーンズは、いずれもジーンズマニアが喜ぶような「タテ落ち・凸凹表面感」のデニム生地で作られているのではないというところだ。

80年代~90年代前半の空紡糸デニム生地で作られた古着のリーバイス

ビンテージジーンズブームの後で作られたタテ落ちデニム生地を使ったジーンズ

80年代後半から90年代前半の、のっぺりと凹凸感のない空紡糸デニム生地で作られたジーンズを使用している。

ジーンズ業界の人にとっては基本知識だろうが、そうではない人のために少し空紡糸について書いてみる。
めんどくさい人は読み飛ばしてもらいたい。

空紡糸はオープンエンド糸とも呼ばれ、空気の流れによって原綿を糸に紡ぐ技術である。
空紡糸で織ったり編まれたりした生地は、カサカサしたドライな手触りと、見た目の厚さよりも軽いという特徴がある。
空紡糸との反対はリング糸と呼ばれ、こちらは空紡糸の生地に比べると、ややしっとりとした手触りがあり重量感もある。

空紡糸はその製造工程によって空気を含むので見た目の厚さよりも軽くなる。
また、繊維の長さの違う原綿をそのまま糸にするので、不均一な肌触りとなる。

逆にリング糸は原綿の繊維の長さをそろえて紡績する。

この空紡糸は製造コストが安くて大量生産に適しているから、安くて大量生産大好き国家のアメリカでは非常に喜ばれた。
80年代~90年代前半のアメリカではこの空紡糸の生地が本当によく使われた。
ジーンズしかりTシャツしかりである。

一方、世界的なジーンズのトレンドは、96年くらいに日本で生まれたビンテージジーンズブームによって、80年代以前の「タテ落ち・凹凸感のあるデニム」が好まれるようになった。
現在のマスはこちらになった。
一説には日本のデニム生地工場が世界的に評価されたのは、世界でもいち早く、このビンテージ風デニム生地を再現できたことによるものだといわれている。

さてガービッジが80年代~90年代前半の空紡糸リーバイス501のみをリメイクに使用する理由は2つ考えられる。

1、80年代以前のリーバイス古着は、かつてのビンテージジーンズブームでほとんど買いつくされ、今では手に入らなくなったから
2、空紡糸使いのデニム生地が今のトレンドだから

この2つである。

1の理由はいかんともしがたい。
ないものはない。

問題は2である。
当方も含めた40代以上のオッサン・オバハンにとってのデニム生地とは、ビンテージ風デニム生地で、その価値は不変だと思っている。

しかし、10代後半から20代の若者にとっての注目ジーンズとは、あの安物臭い80年代~90年代前半の空紡糸デニム生地を使ったジーンズなのである。

当方が、月に何度か講義するファッション専門学校の学生は、今わざわざジーンズを買うとしたら、あの80年代風デニム生地を使ったジーンズや80年代の古着を買っている。彼らの間ではあれが「かっこいい」のである。
どう見ても30年前に見た地元の中学生とか高校生にしか見えないのだが、それが良いらしい。

これが「トレンドの変化」である。
変化した理由はいろいろあるだろう。
もしかすると単純にオッサン・オバハンが穿いているから、タテ落ちデニム生地のジーンズは「オッサン・オバハン専用アイテム」に見えるだけなのかもしれない。
しかし、このようにして素材ですら、「トレンド」が変化する。
これを無視してトレンド不要論をぶち上げるのはいかがなものか?
それは単なるポジショントークではないのか。

良心的に指南するなら、「10年~20年ぐらいでトレンドは絶対に変化するからその都度ある程度アジャストすべきだ」と説くことではないのかと思う。

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