南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2012年12月

新会社でも自家工場群は残してもらいたい

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 年明け早々にどう決着するのか話題を集めているのがエドウインの再建問題だろう。
12月14日の新聞報道によると、伊藤忠商事、豊田通商、ワールドが支援に名乗りを挙げているという。

ジーンズ業界に長く携わった者として、エドウインの再建問題の衝撃は大きい。
ジーンズナショナルブランド各社の売上高が年々縮小していく状況下で、最後の砦とも言える企業だった。
支援に名乗りを挙げた3社のうち、どこに支援先が決まろうとも、従来のエドウインとは企業風土の異なった新しいエドウインになるだろう。当然、純然たる「ジーンズ専業アパレル」ではなくなる。

経緯を整理すると8月下旬に200億円の損失隠しが報じられ、その後、さらなる損失隠し、債務超過などが報じられた。
今秋の報道によると、300億円を超えるデリバティブ損失、600億円にも及ぶ資産架空計上、500億円を超える債務超過状態、10年以上の粉飾決算などがあったとされている。

それを受けて、

12月14日に約20行の金融機関を集めた債権者説明会を開き、金融機関の債権放棄を伴う私的整理で再建を目指す方針を確認した。同社を巡っては、証券投資の失敗による損失を隠した不正経理の疑いが浮上。事実関係の解明と支援企業の選定を進めた後、常見修二社長は経営責任を取って退任する意向を示した。

と日経新聞が報じている。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD140O6_U2A211C1TJ1000/

私的整理すると企業は通常どうなるかというと、

一般的に私的整理で事業を継続する場合は、金融機関に債権放棄を求めるが、取り引き先との債権・債務は全額清算されるか、事業を継承した会社に引き継がれる。

と12月18日の繊研新聞が解説している。

ということは、事業継承会社の「新エドウイン」のような企業が立ち上げられ、現在の業務はそちらに引き継がれると見るべきだろう。

新会社の経営陣は支援企業から来ることが確実視されているので、企業体質は明らかに変わってしまう。
良いも悪いも含めた「ジーンズ専業アパレル」らしさとは、今後決別することになるだろう。


ただ、新会社になっても何とか東北地方(青森、秋田、宮城)にある15の縫製工場・加工場は残してもらいたいと思う。そこまで大規模な自家工場群を持つジーンズ専業アパレルはエドウインしかいない。
ある大手洗い加工場社長が今年7月ごろ「自社製品の製造を自家工場である程度賄いきれるジーンズアパレルはエドウインのほか、ドミンゴ、ブルーウェイくらいしか残っていない」とおっしゃっていた。

エドウインの場合、これでもピーク時よりは自家工場数が減ったと言われるが、それでも規模は業界でも群を抜いている。


エドウインのジーンズは海外でも高い評価を受けていると聞く。
そういう物作りの体制・体質を、何とか新会社でも残してもらいたいと切に望む。


絞り込む作業の方が大切では?

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 以前、ジーンズ専業アパレルは選択肢を広げ過ぎたことがあだになったのではないかと書いたことがある。

先日、阪急百貨店うめだ本店のレディースジーンズ売り場を取材した。

http://www.apparel-mag.com/abm/article/trend/310

リニューアルした売り場はわずかに15坪しかない。
売り場を覗くといつものように様々なブランドが並べられている。
けれどもよく見ると、1品番しかないブランドもある。
普通のジーンズ売り場を見慣れている者にとってはちょっと奇妙に映る。

普通なら少なくとも同一ブランドで4~5品番並んでいる。

しかし、この売り場は狭さ故に、あえて「そのブランドの最も強い品番のみ」に絞り込んでいる。
だから「○○」というブランドはスキニーのみ、「××」というブランドはタイトストレートのみ、という陳列になっているわけだ。

筆者は個人的に「これまでのジーンズ業界に欠けていたのはこの視点ではないか」と感じた。

とくにこの売り場は「ファッションの切り口」を全面に打ち出し、ボリュームである中価格帯を捨てて高価格帯に絞り込んでいる。
ジーンズをファッションとして売るならこの提案はアリだろう。
いわゆる「専門店」「ブティック」「セレクトショップ」という業態ならこの手法は取り入れて良いのではないだろうか。


幅広い層に売ろうとするとどうしても選択肢を増やすことが当然と考えられている。
けれども、年配層にも広く支持されているユニクロでさえ、以前書いたようにメンズジーンズは4シルエットしか存在しない。
ジーンズナショナルブランドのように8種類も9種類ものシルエットは逆に必要ないのかもしれない。


ジーンズナショナルブランドはこれまで様々なシルエット、加工方法を編み出してきた。
そういう開発研究を続けるという姿勢自体は否定しない。
むしろドンドン研究開発を続けてもらいたいと思う。
けれども今後は、そこから絞り込んで提案するという作業が求められているのではないだろうか。

不振イベントのその後の意外な効果

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 少し前のことになるが、通販サイトのZOZOTOWNがリアルな展示受注会「ZOZOCOLLE」を2日間に渡って開催した。
その結果は、入場客数が1万5000人、売上高が1億5000万円だった。
当初の計画では入場客数が3万人で、売上高が3億円だったのだからこれだけを見ると明らかに失敗である。

そのことについてブログで書いたことがある。

付け加えるなら、出展ブランドは200もあったのだから1ブランド当たりの平均売上高は75万円ということになり、多くのブランドは赤字を計上したことだろう。
さらに、売れたブランドと売れなかったブランドの格差は激しく、マスターマインドは何千万円単位の売上高があったと聞く。ということは、売上高が限りなくゼロに近かったブランドも多数あるということになる。

先日、このイベントについてさらに踏み込んで考察しているブログを見つけた。
出展社ご自身が書かれているので、発言の重みと説得力が段違いである。

「売れないZOZOCOLLE と 売れるZOZO 」

http://chapterworld.typepad.jp/sholife/2012/09/%E5%A3%B2%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84zozocolle-%E3%81%A8-%E5%A3%B2%E3%82%8C%E3%82%8B-zozo-.html

先日、9月15日と16日にZOZOCOLLEなるものが幕張メッセで開催された。これは、ZOZOTOWNに出店しているメーカーの店舗が、ZOZOのお客様に商品を見てもらい先行受注をしてもらう。いわば、ZOZOTOWNはネットだけでなくリアルの商品展示会を開く、新しい試みであった。

結果は散々なものであった。予定では、3万人の入場と3億の売り上げ。しかし、実際は1.5万人の入場と1.5億の売り上げ、そしてほとんどの売り上げが、 ZOZOさんがライセンスで売った、マスターマインド(これは中国での二次マーケット用?)であった。弊社、CHAPTERWORLD, も散々な結果であった。私は、ZOZOCOLLEに関していい話を聞いたことがなかった。(経費の大幅な赤字である)



とのことである。ここまでなら、当ブログや他ブログでの指摘とほぼ同じであるが、このZOZOCOLLEは意外な効果もあったという。

しかし、話はこれで終わらない。多分多くの店舗からクレームがきたのだと思う。なにせ、多くの店舗さんは、かなり力を入れてZOZOCOLLEに出店していた。(多分1千万円近くかけた大手セレクトさんは大赤字)そこで、ZOZOは大盤振る舞いを行うこととした。32万人の上顧客に、2万円以上買ったら5000円のクーポンを、配布した。(先週の金曜日から、今週の土曜日まで)そしたら、ZOZOの売り上げが上がった。怖いほど上がった。(この3日間だけ、もちろん弊社の数字の話であるが)なにせ15億のクーポン、購買効果60億。(30万人 X 5000円、しかしそれを使うには、20000円 X 30万人)ZOZOの利益率は25%ぐらいなので25%OFFは問題ないのかもしれない。

儲かっている会社はこのようなことができる。やはりすごいと感謝している。しかし、ZOZOの顧客が本当に増えているのか?それはわからない。



とのことである。
意外な副産物といえる。

そしてこれは出展社ならではの視点であり、外野の人間では到底思い至らない。


筆者はあまりネット通販は使用しない。
何度か利用したことがあるが、数えるほどであり、実際の店舗で見つけた商品をネットで購入したことがるという程度である。その際は実際の店舗で何度か試着をし、素材の触感も確かめてからネットで購入するという念の入れようである。
ネットで購入するのは、「実際の店舗に足を運ぶ時間がないとき」「ネットで買った方が安い、もしくは多くの特典が付いているとき」に限られているのが現状である。

閑話休題

今回のイベントについてその後の効果に触れている論評を見たことがなかった。(当ブログも含めて)
このような効果があるなら、出展による赤字はちょっと割高な広告料を払ったと思えるだろう。

けれども結局、ネット顧客は「割引販売目的」なのかと思わないでもない。
そういう筆者が「割引販売目的」でしかネット通販を利用しないのだけれども。

で、ブログ主は

私も少しネットを理解してきたのだが、ネットは顧客の数である。もちろん良いもの、お客様の必要なものを売るのが前提であるが。大競争時代。(猫も杓子もネット)私は、ここにきて初めて新しく店を開きたいと店舗用地を探している。

と結んでおられるのだが、割引販売目的の顧客が多いネット通販全盛時代だからこそ、リアル店舗が脚光を浴びることがあるのではないかとも思う。



12月商戦は「好調」ではなさそう

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 ライトオンとジーンズメイトの12月度売上速報は発表された。

ライトオンは
既存店売上高が前年比1・1%減
既存店客数が同7・5%減
既存店客単価が同6・9%増


ジーンズメイトは
既存店売上高が前年比1・1%増
既存店客数が同1・2%増
既存店客単価が同0・1%減

だった。

今秋冬の商況を業界全体で見ると、9月・10月絶不調、11月好調というところである。
11月は好調だったものの、セールが始まった12月はそれほどでもないという声を耳にする。

今回のライトオンとジーンズメイトの商況はその声を反映しているのではないかと感じる。
「好調だった」と報じている媒体もあるが、どう見ても「好調」ではない。
ほぼ前年並みなので「堅調」というべきだろう。

ジーンズメイトは長年続いてきた苦戦状態がようやく底を打ったのではないかと考えられる。

ところで、今回はライトオンの客数減の多さが気にかかる。
何度も書いているが発表されている「客数」は「入店客数」ではなく「買い上げ客数」であるので、客数が減るということは買い上げ客数が減っているということになる。
今回はその分、客単価が増えているので、複数の商品を購入する人が増えたのか、昨年よりセール商品の値引き率を高止まりさせたかのどちらかだろう。

買い上げ客数減少ということは、それだけ「消費者が欲しい」と思える物が無いということなので、小売業では要注意である。
客単価減少よりも客数減少の方が小売店にとっては深刻な問題である。


さて、あと1週間後には冬セールが大々的に始まるのだが、今回のセールは盛り上がるのだろうか?


小資本でも生き残りは可能ではないか

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 12月19日、ヒルトン大阪のヒルトンプラザイースト3階にレディースブティック「ギャビィ」がオープンした。
なんでわざわざここで紹介するかというと、非常に小規模なレディースブティックだからだ。

写真


写真2



昨今の情勢では、都心一等地の商業施設にショップを構えるのは大手資本によるブランドだと相場が決まっている。その結果、どの商業施設も同じようなブランドがテナントとして納まっている。
「日本初出店」「関西初出店」などの文字が躍り、それが人目を引きつけるのはわずかな期間で、3年もしないうちに近隣に二号店、三号店が出店され、梅田も心斎橋も天王寺も同じラインナップですねということになる。

この「ギャビィ」は関西に4店舗しか展開していなかった。
南森町、千林店、香里園店、甲陽園店(西宮)である。
今回このうち、千林店と甲陽園店を閉店しての梅田のヒルトンへ出店である。

社長の福山陽さんに尋ねると「来年(2013年)で創業30周年を迎えるところへ、今回の話が持ち込まれたので決意しました」という。

4店舗で30年も続けてこられたところが大したものだと思う。
オリジナルブランドとイタリアからのインポートブランドを扱っていて、ジャケットやスーツは10万円くらいするし、セーターなんかも3万円くらいする。現在の通念だと「高い服」に分類される。
オリジナルブランドも扱っているブランドもそれほど有名でもない。

だから今後も爆発的に大きくなることはないと思うが、30年もやって来られたということはそれだけ固定客が存在するということだろう。
2年や3年、5年くらいはまったく売れなくても借金でなんとかビジネスを続けることはできる。しかし、10年以上続けようと思うとそれなりの売上高と利益がなくてはだめだ。
例え4店舗だとしても。

通常、繊維アパレル業界の人や我々も含めた報道側もついつい「年商規模は500億円」とか「中期目標で売上高100億円を目指す」などという情報に関心を向ける。
けれども真に価値のある情報とは、小規模ながら20年や30年続けてこられている企業の取り組みではないだろうか。
そういう情報が発信されないと、中小零細企業はまったく先行きに希望が持てない。生き残っているのは大手資本ばかりという状況になってしまう。現に繊維アパレル業界はそのようになりつつある。

もちろん「ギャビィ」にも幸運な側面はある。
例えば2013年で30周年を迎えるというからスタートしたのは83年だったということになる。
83年といえば高度経済成長は一段落したが、数年後にはバブル経済を迎えるほんの手前の時期である、今とは比べ物にならないほど景況感のあった時代であろう。
筆者は当時13歳なので景況感などまったくわからないのだが。

だから高額な商品も今よりは売りやすかっただろう。
その当時のお客が固定化し、今まで「ギャビィ」を支えてきたのだと思う。
もしスタート時が2000年代だったら、そういう高級店が支持されたかどうかわからない。固定客が多数生まれたかどうかも疑問だ。
そういう観点から見ると、時代の流れに上手く乗ることができたのではないかと思う。

けれども過ぎ去った良き時代をうらやんでいても仕方が無い。
今の情勢を踏まえる必要がある。それでもこの店には他の中小零細企業が参考にできる要素があるのではないかと思う。

報道側もそういう情報を拾い上げることができれば、繊維アパレル業界も変わるかもしれない。
そんなことを考えさせられた。
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