南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2012年08月

無制限に選択肢を増やすことは売上増にはつながらない?

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 阪神百貨店の自主編集レディースジーンズ売り場「ジーンズハウス」は2011年3月に40坪も売り場面積を削減された。それまで100坪だったのが、60坪になった。

それでもボトムスの売上高は落ちずに伸び続け、今年上半期は前年比10%増で推移しているという。

そこでこんな記事を書いた。

大阪・梅田の阪神百貨店、強さはデパ地下だけじゃない
流行は下火でも売れる「ジーンズハウス」の秘密

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120823/235939/

30代半ば以上の女性のジーンズ着用比率は高い。
これについての統計データは業界団体にも存在していないのだが、とくにお子様をお持ちの主婦の方は驚くほどジーンズを穿いておられる。

「この層は価格にシビアだからユニクロとか低価格ブランドが主体じゃないの?」という意見もいただいたのだが、これも統計データが無く、経験則だけなのだがこの年代の方は意外にブランド志向も強い。
当然、低価格品も持っておられるが、リーバイスやサムシング、ブラッパーズなどのナショナルブランドもそれなりに所有されている。
もしかしたら、ナショナルブランドの型落ち品で安くなった物を購入されているのかもしれない。


阪神百貨店の主要顧客層が30代半ば以上の女性だったということは、ジーンズがダウントレンドと言われる中で、不幸中の幸いだったのではないだろうか。


もうひとつ、「テーマ別」コーナーの設置も大きい。
例えば「ホワイトジーンズ」とか「夏素材商品」というように、各ブランドからその時々にテーマに応じた商品を集めたコーナーを作っている。
これが消費者にとって分かりやすかったのではないかと考えられる。


もしかしたら、ジーンズの各ナショナルブランドが苦戦している理由の一つに、選択肢が多すぎてわかりにくいというものがあるのではないだろうか。

例えば「リーバイス」を例に考えてみたいのだが、永遠の定番「501」はよく知られているが、そのほかにも502、503、504、505、515、517、511など多数の品番がある。
これらはシルエットの違いで、細いか、太いか、ストレートかブーツカットかというふうに分けられている。

当然、売り場のPOPにも「501がレギュラーストレート」「505は細身のストレート」「517はブーツカット」などと表示されているが、これは一般消費者にとって意外に覚えにくいのかもしれない。

現在、ナショナルブランド各社はスキニー、タイトストレート、レギュラーストレート、少し太めのストレート、太めのストレート、ブーツカットと6種類くらいのシルエットのジーンズを発売している。
さらに股上の浅い深いなども加えると、微細な形の変化のバリエーションは10を越えるのではないだろうか。

果たしてそんなにもシルエットは必要なのだろうか?
3~4種類くらいで十分ではないのか?

これまでのナショナルブランド各社の製品を見ていると、無制限に選択肢を増やしているような気がしてならない。
「選択肢を増やせば利便性がアップし、消費者利益にさらにつながる」と考えているのだと推測するが、本当にそうだろうか?
消費者はジーンズの微細なシルエットの変化をそこまで理解していない。正確にいうなら理解していない消費者が大多数を占めている。
そんな「漠然とした消費者のニーズ」に合わせて10種類も異なるシルエットを作っていても、結局売れるシルエットは2つ、3つに集中するのだから、酷く効率が悪い。


販促コンサルタントの藤村正宏さんは、「消費者は自分のニーズを気づいていない」というブログを書いておられるが、その通りで、ある程度の選択肢を提示することは必要だが、無制限とも思えるような提案は余計に消費者を混乱させ、選ぶのに疲れさせるだけではないだろうか。

100円ショップでの糸販売を始めたニッケ

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 毛紡績最大手のニッケが100円ショップ向け商品の開発・卸に参入したという記事が8月26日の産経新聞に掲載された。

「もっと薄利多売だと…」毛紡績最大手が100円ショップ事業に参入したワケ
http://www.sankeibiz.jp/business/news/120826/bsc1208261931002-n1.htm

見出しだけを読むと、一瞬「ニッケが100円ショップを展開か?」と勘違いしそうになるが、ニッケが100円ショップ向けの開発・卸企業を買収したという話だった。

ニッケというとメンズスーツ関連の生地が思い浮かぶ。
ダーバンの夏用メンズスーツ「モンスーン」の生地はたしかニッケが開発していたと記憶している。

さて、記事を引用すると

 大阪府枚方市の京阪電気鉄道枚方市駅からタクシーで10分あまり。企業の研究所や工場が集中する「枚方東部企業団地」の一角にこぢんまりした倉庫と社屋が現れる。昨年3月、ニッケグループの傘下に入った友栄(ゆうえい)の本社だ。

(中略)

 友栄の平成23年9月期の売上高は7億6千万円、24年9月期は8億円弱を見込む。利益は非公開だが、石井社長は「単月の赤字はなく、卸売業として安定して利益を生み出している」と打ち明ける。

 生産コストの安い中国やベトナムなど東南アジアのメーカーから製品を輸入するほか、プライベートブランド(PB=自主企画)商品を開発し、100円ショップチェーンに卸している。なかでも使い捨ての紙コップやストロー、アルミ鍋、割りばしなどアウトドア用品、パーティー用品の品ぞろえが豊富という。


とのことである。

この友栄という企業だが、数年前に一度訪問したことがある。
当時は違う仕事だったので取材ではなく、営業活動の一貫だった。

今回の買収は、友栄に後継者がいなかったことから、証券会社が仲介したと記事中にある。

実は、野田課長は友栄の創業家出身だが、経営には興味がなく、オーナーだった父に対し家業の売却をすすめた。ニッケグループに買収されてからも、好きなクリエーターとして残った異色の経歴を持つ。

とのことだ。

数年前にお相手していただいたのは、今回引退された創業社長だった。
真面目な商売人という印象で、かなり丁寧に対応していただいたことが印象に残っているが、社長はおそらく覚えておられないだろう。


さて、今回の買収によって、ニッケ側には

毛紡績最大手のニッケの本業とはまったく関係なさそうだが、「毛糸を100円ショップで販売できるかも」(石井社長)との思惑があったようだ。ニッケの毛糸は1玉800~千円程度の高級品が主流だが、子会社で1玉100円の新製品を開発し、今年7月から友栄を通じ、100円ショップへの納入を始めたところ、早くも好評を博しているという。「毛糸の新たな販路も開拓でき、シナジーが出ている」と石井社長は胸を張る。

との思惑がある。

昨日のブログの補足ではないが、早くも大手メーカーは雑貨店への「糸売り」に着手し始めているということになる。
多くの中小の糸メーカーは、「生地メーカーへの卸売りしか販路がない」と思い込んでいる。
実際に、最近接触の多い糸メーカー各社は「どのように卸先を広げるか?」「今の卸先に取り引き量をどれだけ増やせるか?」に重点を置いている。
これはこれで正しい営業戦略だと思う。

しかし、生地メーカーの廃業が相次ぎ、アパレル各社も製造量を絞り込んでいる現状では、生地メーカーを新規開拓することも、現在の卸売り先に取り引き量を増やしてもらうこともかなり困難である。

それならば、今まで遠い存在だと思われがちだった消費者に「糸そのもの」を販売してみてはどうか?
糸メーカーが直営ショップを運営しても良いだろうし、今回のニッケのように100円ショップや雑貨ショップへの「糸売り」を模索してみても良い。

今回のニッケの記事は、糸メーカー各社に大きな示唆を与えているのではないだろうか。


糸を雑貨店で販売してみては?

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 最近、糸メーカーと知り合う機会が増えた。
彼らは生地メーカーに糸を販売することを主体としている。
生地メーカーはその糸で生地を製造し、アパレルや商社に販売する。

糸メーカーの方々に話を伺うと「我々は生地メーカーに販売することしかできない」という答えが返ってくる。
たしかにそれが一番王道だとは思うが、業績が伸び悩んでいるなら、まったく違う販路を開拓してみてはどうだろうか?

これまでからも手芸用品店などに販売されたことはあったかもしれないが、それをさらに一歩進めて雑貨店や100円ショップなどへの販売を模索してみてはどうか。


現在、無期限休業中の雑貨ショップ「タイガー」の内覧会にお邪魔したとき、けっこう広めのスペースで糸やリボンが売られているのを見た。
「タイガー」らしくカラーバリエーションが豊富で、ビビッドなカラーが多い。くすんだような色はあまりなかった。

IMG_0463



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(タイガーで販売されている糸)






日本の雑貨ショップでも糸をこのような形で販売することは可能なのではないかと思う。


生地に関しては「メイドインジャパンの物が欲しい」という手芸ファンが数多く存在する。
国内でもいまだに糸を製造しているメーカーがある。(原料の綿花などは輸入だが)
これを「メイドインジャパンの糸ですよ」とそういう消費者層に販売することは不可能だろうか。


先日の「タイガー」内覧会でそんなことをふと思った。

強者に追随する弱者

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 先日、某素材メーカーの役員から「百貨店アパレルから『ユニクロで売れているあの商品と同じ素材を売ってほしい』と言われることが、ここ数年で日常的になってきた」との声を聞いた。

これには正直驚きを隠せないのだが、ユニクロで売れている各種アイテムは、安ければ1000円、高くても5900円ほどである。(この範囲に収まりきらない商品も一部ある)
百貨店に納入するアパレルの店頭販売価格は、Tシャツ類を除くと安くて5900円、高ければ2万円以上になる。

ジーンズを例に採ると、ユニクロは3990円である。百貨店アパレルだと安くても1万円は超える。
価格にこれくらいの開きがある。

さて、ユニクロで某アイテムが50万枚売れたと仮定する。
百貨店アパレルが、それと同じ素材を使って商品を製造したとして、50万枚はとてもじゃないが売れない。
なぜなら店頭販売価格が違いすぎる。
ユニクロのこの商品の価格が2990円だとする。
おそらく百貨店アパレルは少なくとも9800円くらいになるだろう。

いくら同じ素材を使っているからと言って、近所のユニクロで2990円で購入できるものをわざわざ百貨店まで行って9800円で購入する消費者がどれほど存在するだろうか。

件の素材メーカー役員によると、百貨店アパレルは「ユニクロで50万枚売れたんだから、同じ素材を使えばうちだってそれ並みに売れるのではないか」と主張するらしい。

しかし、店頭販売価格が3倍近く違ううえに、顧客層もまるで異なる。
百貨店愛好者や高額所得者の中にもユニクロ愛好者はそれなりにいるが、ユニクロを愛好する消費者層は多岐に渡っている。低所得者層や中所得者層も数多く取り込んでいる。
高額所得者層の一部を取り込んでいるに過ぎない百貨店アパレルとは、顧客層も違えば、顧客数も大きく異なる。

これだけ異なるのに、何故百貨店アパレルが「ユニクロのあの商品と同じ素材を使えば、うちもユニクロ並みに売れる」との考えに至るのか理解に苦しむ。


何度もランチェスターの法則を引用している。
弱者の法則は、ニッチ戦略であり、1点突破主義である。
強者の法則は、追随主義であり、圧倒的な物量作戦である。


現在のアパレル業界を見ると、強者はユニクロであり、百貨店アパレルは弱者である。
強者ユニクロが、弱者の百貨店アパレルに対して追随主義で物量作戦を展開するなら理解できるが、弱者である百貨店アパレルが、強者ユニクロに追随するのは明らかに愚策である。
圧倒的物量で攻めるならまだしも、物量はユニクロに遠く及ばない。これではユニクロに勝てるはずが無い。


傍から見ていれば容易にわかりそうなものだが、いざ、自分がその中に入ってしまうと物事は見えないらしい。

自戒も込めて、改めて気をつけなくてはならないことを痛感した。

エドウインの損失隠しの衝撃

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 8月24日にエドウインの投資損失隠しが新聞に掲載された。

ジーンズのエドウイン、200億円投資損失隠し
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120823-OYT1T01583.htm


大手ジーンズメーカー「エドウイン」グループが、証券投資の失敗を隠すために不正経理を繰り返していた疑いがあることが、関係者などへの取材でわかった。投資による損失額は200億円以上に上る可能性があるが、社内の一部の関係者しか知らなかったといい、エドウイン社は内部調査を始めた。

同社関係者らによると、同社は証券投資を行っていたが、2008年のリーマン・ショックを契機に200億円以上の運用損が発生した。融資を受けていた銀行などには、こうした損失を隠した決算書類が提出されていた。

 今月上旬、グループの経理担当者が自殺し、不正経理の疑いが発覚。会社あての遺書はなかったが、この経理担当者が持っていたパソコンの中に、投資の失敗を示す内容のメールが残されていた。

 同社は、問題の発覚後、内部調査を進めるとともに、弁護士事務所にも調査を依頼。読売新聞の取材に対し、同社関係者は「粉飾の可能性もあるとみて、内容を調査中」としている。



とのことである。

エドウインはなんといっても国内最大のジーンズブランドであるから、ジーンズ業界関係者には衝撃が走った。
素材メーカーや売り先の何人かに意見を伺ってみたが、「終日この話題で持ち切りだった」というものの、各人とも「今後の動きを静観する」としか言いようがない状況のようだ。

エドウインは株式非公開企業なので、取り引き先や納入業者でもトップクラスの人々しか正確な財務内容を知らない。

エドウイン本体と、「リー」「ラングラー」を展開する子会社のリージャパンを合わせて、売上高は250億円内外であると推測されている。このため、ほぼ年商に匹敵する損失が発覚した衝撃は大きい。

ただ、「オーナー家には今回の損失を大きく上回る資産があると聞いており、それを売却すれば補てんは可能ではないか」と推測する関係者もいる。

今回の件については、一般紙や経済誌のその後の報道を待つほかなさそうである。

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