南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2011年10月

委託販売を止めない限り、大阪伊勢丹は上向かない

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 もう紙面でご存知の方も多いだろうが、JR大阪三越伊勢丹が初年度売上高目標を200億円も下方修正した。

流通ニュースから引用する。
http://www.ryutsuu.biz/strategy/d102823.html

JR大阪三越伊勢丹の年間売上目標を下方修正すると発表した。

当初計画の550億円を350億円に引き下げた。5月4日の開業から9月末までの累計売上高は152億円で、来場者数は1600万人だった。

同社は、「独自性を打ち出した売場作り(自主編集売場)を展開したが、商品の置き方が分りにくいという声もあり、大阪では浸透しなかった。三越伊勢丹のスタイルが受け入れられなかった」と説明した。

一方で、隣接するファッションビル「Lucua(ルクア)」の年間売上目標は当初の250億円から320億円に上方修正した。9月末までの累計売上高は160億円、来場者数は2070万人だった。


とのことである。


開業3カ月後の7月末時点でJR大阪三越伊勢丹(以下:大阪伊勢丹)の売上高は104億円であり、このペースで行くと、416億円規模にしかならないと、以前にこのブログで書いたことがある。
しかし、その予想は外れ、さらに売上高の低いペースで推移したことがうかがえる。

さて、大阪伊勢丹の敗因は何であろうか?
流通ニュースの記事中にあるように「自主編集売り場の陳列の問題」だったのだろうか?
筆者は違うと思う。

大阪伊勢丹の売り場作りはかなりレベルが高く、他社店舗の勉強にもなるレベルである。
敗因は売り場作りではなく、ブランドラインナップがあまりに陳腐すぎたことである。
近隣に阪急百貨店梅田店、大丸百貨店梅田店という競合が犇めいており、思うままにブランドが集まらなかったという背景はあるにしてもあまりにもラインナップがショボすぎた。

これは筆者の独断と偏見ではなく、近隣の商業施設関係者数人の意見でもある。


3月の記者会見で配布されたプレスリリースから見てみよう。
地下1階には2つに分断されたまったくパワーのない「イセタンガール」がある。
ここには「バーバリーブルーレーベル」「トゥビーバイアニエスベー」「リッチミーニューヨーク」「ペイトンプレイス」「ディアプリンセス」の5つが記されているが、どれも新鮮味があまりない。
「バーバリーブルーレーベル」は底堅い人気があるものの、ピークをとうに過ぎている。
「ペイトンプレイス」はバブル期以降まったく振るわない。「ディアプリンセス」は90年代の神戸エレガンスブーム終焉とともに忘れ去られたブランドである。


3階のコンテンポラリー婦人服売り場は「シアタープロダクツ」「コズミックワンダーライトソース」「トリコ コムデギャルソン」「アナスイ」などのデザイナーズ系のブランドが主体だが、百貨店に来る年配客にはまったく響かない。

4階のベーシック、キャラクター婦人服は「23区」「ザ・ビューオブアンタイトル」という何の変哲もないオンワード樫山とワールドのいつものコンビであり、その横にボーイズの「Bショップ」がある。「Bショップ」は現在好調なブランドだが、このラインナップに加えるべきブランドではない。もっとナチュラルベーシック系のブランドを集積した場所がふさわしい。

自慢だった8階のイセタンメンズには、「バリー」「ダンヒル」「バーバリーロンドン」「アクアスキュータム」「ヒッキーフリーマン」などが並んでおり、バブリーな香りしかしない。



現在、大阪伊勢丹も巻き返すべく、ブランド構成を変える取り組みが始まっているという。
おそらく、希少性の高いブランドを誘致して、自主編集化しようと考えているのではないかと推測するが、それの実現は難しいだろう。
なぜなら、希少性の高いブランドは企業規模が小さい。
その場合、百貨店の最大の弊害である委託販売という取り引き形態が障害となる。

どういうことかというと、百貨店の取り引きはほぼ委託販売である。買い取り率は数%程度だ。
委託販売というのは、売れた枚数だけ小売店側がメーカーに代金を支払うというシステムであり、売れ残った物はメーカーに返品できる。
そうすると、期末には大量の返品が発生することとなる。
先述したオンワード樫山やワールドのような大手企業なら1店舗分くらいの返品は吸収できる。
しかし、年商規模数億円や10億円程度の中小企業ではその返品を吸収することはできない。そのため、中小企業は百貨店との委託販売を嫌がる。

さらに突っ込んで言えば、
先日、小島健輔さんがブログで指摘された通り、
「買い取らないなら編集するな!」ということである。
http://www.apalog.com/kojima/archive/816

文中から引用させていただくと

編集手法は買い取り商法のセレクトショップや欧米の百貨店で発達したもので、自ら品揃えと補給、在庫運用と販売管理を貫徹する者ならではの技術体系なのです。買い取らないで編集するなど権利と義務のはき違えもいいとこで、独占禁止法上の優越的地位の濫用さえ疑われます。

消化仕入れのブランドを編集すればブランド側の補給と販売管理を阻害して売り難い売場になってしまいますから、効率的とも言えません。編集するのは買い取り商品に留め、消化仕入れのブランドは箱展開かコーナー編集に割り切るべきでしょう。『買い取らないなら編集するな』が鉄則だと思います。


ということになる。

以上のことから、
今回の大阪伊勢丹は負けるべくして負けたと言わざるを得ないし、希少ブランドを誘致してラインナップを変え、売り場を活性化させるというプランは委託販売を止めない限り無理である。

百貨店という業態の限界が露呈したと言い切りたい。


過剰供給と過剰仕入れで滞留するローゲージニット

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 昨日、レディースのローゲージニットのことを書いたのだが、少し補足したい。

ローゲージニットは分厚いため、インナーとして着ることはなかなか難しい。
ほとんどがアウターとして利用される。しかし、防風性が皆無であるため、真冬に着用することは適さない。
おそらく16度~22度くらいの気候の時にしか着用できない。
着用期間は10月下旬から11月末。長くても12月上旬までである。

数年来、毎年秋冬にはローゲージニットが期待されているものの、それほど売れずに終わる。
今秋は例年以上に注目されていたが、10月20日の小売店には店頭在庫として滞留しているようだ。

昨日その要因として先に挙げた気温の問題を書いた。

取材したニットメーカーはさらにあと2つの要因を挙げて下さった。

1、ブームと見込んでローゲージニットを製造したメーカーが多く供給過剰に陥った
2、ブームと見込んで自店のキャパシティ以上のローゲージニットを仕入れた小売店が多かった


この2つである。

1つ目は、ニットを得意とするメーカーは毎年ローゲージニットを一定数量製造している。
ブームが来ると見込めばこれを多めに製造する。
今秋は、例年よりも期待値が大きかったので、ニットメーカー各社は数量を多めに製造した。
また普段はあまりニットを製造しないアパレル各社も、ブームと見込んでローゲージニットを製造した。
その結果、供給過剰に陥ったというわけである。

2つ目は、小売店のバイヤーといえども人の子であり、確信を持って発注できる人間などほんの一握りである。
バイヤーは常に迷いながら仕入れている。
ブームであると聞けば、それを無意識で多めに発注することも珍しいケースではない。
また、いつもならA社からだけ仕入れているのに、B社からも仕入れてしまうというようなこともある。
その結果、自店のキャパシティを越えた数量のローゲージニットを仕入れてしまっている小売店も多いようだ。
例えば50枚なら完売できる顧客を持った店が、70枚仕入れてしまっているということである。
しかもいつもならA社から50枚だけ仕入れているのに、B社からも20枚仕入れてしまっている。

これによって、店頭にはローゲージニットが滞留していることとなる。

本当は一定数量が売れているにも関わらず供給過剰、過剰仕入れでローゲージニットが不良在庫化しつつある可能性もある。
しかし、本当にブームで万人が欲しがる商材なら、少々の過剰供給も過剰仕入れも問題ではなく、消化率が高まる。

過剰供給、過剰仕入れをはねのけられないということは、ローゲージニットは機能的要因もあって万人が欲しがる商材ではないということになる。


件のニットメーカーによると、冬本番はやはり、インナーに適したいつものハイゲージセーターに落ち着きそうだという。あと、節電によるウォームビズの本格化から、ハイゲージのタートルネックセーターが動きそうだともいう。

やはり気候要因は無視できないのではないか。


期待外れ?ローゲージニットとショップコート

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 先日、ニットの卸売りメーカーに取材したところ、夏にはあれほど受注が好調だったローゲージニットだが、
10月20日の段階では店頭であまり売れておらず、滞留在庫となっている店が多いという。

8月末ごろまで、3~5ゲージ程度のローゲージニットに注目するという声が多く聞かれ、大阪・泉州のニット工場ではローゲージニットの受注が年末まで満杯だった。
ローゲージニットは着用できる期間がひどく短いため、筆者にはそれが大きく売れるということが信じられなかった。さらに言えば、この数年、毎年秋口には「ローゲージニット」という声が出ていたのだが、大ヒットを見たことがなかった。今回は「ついにヒットするのか?」と期待して見ていたのだが、どうやら期待ほどには動かずに終わる可能性が高くなってきた。

ローゲージニットベスト2








日本の気候に照らし合わせて考えてみると、ローゲージニットは着用期間が1ヶ月半ほどしかない。
通常の衣料品に比べるとかなり短い期間しか着用できない。
今年の気候を思い返してもらいたいのだが、8月は猛暑、9月も20日ごろまで猛暑、一旦気温は低下したものの10月も夏日が多かった。気温が本格的に下がったのは今週に入ってからである。

長期予報は当たるも八卦当たらぬも八卦だが、11月は再び気温が高くなり、12月は寒くなり、1月は厳しい冷え込みになるという。

となると、今年のローゲージニットの着用期間は10月の下旬から11月末まで、長くても12月上旬までということになり、正味1ヶ月半ほどしか着用できない。

ローゲージニットは見た目はかっこ良いのだが非常に機能的ではないため、暑い頃に着用するには暑すぎ、防風性が皆無なので本格的に寒くなるとこれまた着用は難しくなる。おそらく最高気温が16度~22度の期間しか快適に着ることはできない。
そうなると、関東や関西での最適な期間は10月半ば~12月上旬ということになる。

やはり、機能性の低すぎる商品は業界が煽ってもマス商品としては広がらないということなのだろうか。

8月下旬から最高気温が25度を下回るヨーロッパにしか愛用者はいないのだろう。


同じく、ファッション雑誌が押しているが、着用者をさっぱり見かけないアイテムの1つにメンズの「ショップコート」がある。なんだかよく分からないネーミングだが、綿素材のロング丈のカバーオールジャケットだと想像してもらえると一番的確ではないか。

今秋冬のメンズのファッション雑誌には「ショップコート」のページが必ずある。
それほど雑誌は注目しているわけだが、実際に歩いてみると街でそれを着ている男性を見かけたことがない。
筆者は天王寺、難波、心斎橋、梅田あたりをうろうろすることが多いのだが、大阪でマイナーな存在だが、東京の都心ではメジャーな存在なのだろうか?

ただ、この商品もあまり機能的ではない。
Gジャンと同じくらいの生地の厚さがあるため、10月下旬くらいまでは暑すぎて着用できない。
その上、裏地も中綿も取り外し可能なライナーもないため、防寒能力は極度に低い。
また「コート」という名前ではあるものの、身幅やアームホールはジャケットサイズであるため、その下に厚手のものは重ね着できない。

こう考えると、着用期間はローゲージニットと同じく10月下旬~12月上旬までに限られてしまう。

関西でショップコート着用者をほとんど見かけないのは、やはり機能性が低すぎるためではないだろうか。


やはり、その国の気候風土に適した商品でないと、大衆層に売ることは難しいということではないのか。






ボブソンが開拓した保温ジーンズという市場

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 先日、ジョンブルの来春展示会にお邪魔した。

トータルなカジュアルアイテムを展開しているジョンブルだが、児島を拠点にしており、元々はジーンズが強い。
今でもジーンズは主力アイテムの一つである。

しかし、来春企画では、綿麻混のデザインデニムや、ライトオンスのデザインデニムは新規提案しているものの、ベーシックなデニムの新提案はなく、現行商品の補充追加対応のみになるという。

メンズのボトムスではチノパン、カーゴパンツ、カラーストレッチパンツが引き続き主力になるという。

ジョンブルだけの傾向で決めつけるのは早計というものだが、他のジーンズカジュアル関係のメーカーや小売店の現状を聞いても、ベーシックなデニムはあまり動いていないようだ。
2010年春夏からチノパン、カーゴパンツ、カラーストレッチパンツがメインアイテムとなっているが、来春夏もその傾向は変わらないようだ。

メンズのチノパン、カーゴパンツ類



(ジョンブルのチノパン類)



ジーンズの復活はまだまだ先になる可能性が高い。

こうなると、エドウインとリーバイスという国内の大手ジーンズブランドはかなり厳しい。
もちろんその他中小のジーンズ専業メーカーも厳しい。

おそらく、今冬は「防風ジーンズ」「HOTジーンズ」などの保温系の、来春夏は「クールジーンズ」「ドライジーンズ」などの吸水速乾系の機能商品がメイン商材になり、ベーシックな綿100%ジーンズはほとんど話題にも上らないだろう。

こういう機能商品が注目されている状況を見ると、ボブソンは「惜しかったナー」と思う。
身売りされる前の数年間のボブソンは、定番ジーンズが苦戦していたこともあり、多くの機能商品を開発した。
現在、店頭を賑わせている保温ジーンズを真っ先に開発したのもボブソンである。
すでに2000年ごろには開発しており、量販店向けに数多くを販売していた。

しかし、時代が早すぎたのか、ボブソンという会社が粘り腰が足りなかったのか、当時はあまり広がらなかった上に、他社が類似商品で追随し始めると、あっさりとこの市場を手放してしまった。

今更言ってもはじまらないが、あの時にもっとボブソンが先行開拓者として粘っていれば、今年5月の民事再生法は申請しなくても済んだのではないか、その前に身売りしなくても乗り切れたのではないか。と残念に思う。


毎年、保温系ジーンズを目にするたびに、ボブソンを思い出す。

回復基調が鮮明なライトオン

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 ライトオンとジーンズメイトの10月売上速報が発表となった。

ライトオンは
既存店売上高9・8%増
既存店客数3・8%増
既存店客単価5・8%増


と前年実績を上回った。

ちなみに昨年10月の業績は
既存店売上高が14・1%減
既存店客数が13・5%減
既存店客単価が0・7%減

であり、回復基調がより鮮明となっていることがわかる。
今年10月の実績は一昨年実績よりも5%減程度にまで売れ行きが戻っている。

ジーンズメイトは
既存店売上高7・3%減
既存店客数23・2%減
既存店客単価20・7%増


とこちらはまだ下げ止まる傾向が見えない。
とくに客数の23・2%減はかなり厳しい。
客数の落ち込みを客単価増でカバーしようという取り組みが今年初めから続いており、
順調に客単価は増えているが、もう少し客数減を抑える必要があるのではないだろうか。

以前指摘した通り、客単価20%増というのは数字上は凄いが、ことジーンズメイトの実態から見るとあまり大したことではない。

過去、590円とか790円商品を大量に売っていたため、590円を710円に、790円を950円に値上げすると20%増を達成できてしまう。
10,000円を12,000円に値上げするのとはインパクトが違う。



9月、10月とライトオンの店頭を見ていると、
ユニクロとは差別化したカジュアル品の品ぞろえがかなり充実していると思う。
とくに「世界のカーゴパンツ特集」と銘打った各種カーゴパンツの集積コーナーは面白い。
ユニクロや他社SPAブランドとは一線を画している。
昨年もあった企画だが、今秋冬も仕掛けてきたところから類推すると、それなりの手ごたえがあったということだろう。



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