南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2011年08月

アイデア商品「靴スリッパ」

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 先日、6年越しで初めて靴職人の今井宏樹さんにお会いした。
今井さんは兵庫県姫路市林田町で、ご自分の靴ブランド「イマイ ヒロキ」を製造しておられる。

8月27日、28日と阪急メンズ館1階靴売り場で臨時出店されており、今井さんによると、過去に数回同じ場所で出店したことがあるという。

今夏もっとも数多く製造したのが「靴っぽいスリッパ」とのこと。
レザー製だと3万円を越えており、布製でも2万円を越える高額品だ。

ちょっと、画像を見ていただきたい。


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こんな感じである。
ゴム底を貼ってあるので、近所のコンビニくらいまでは出かけられる。

従来流通している靴っぽいサンダル(サボと呼ぶのだろうか?)とどう違うのかと、疑問に思い尋ねてみると
「うちのスリッパはヒールがありません」との答えが返ってきた。
サボでヒールがあると、踵部分がホールドされていないため、段差のあるところでは引っかかることが多いらしい。そういう意味では、このスリッパはアイデア商品だといえるだろう。


今井さんのことを初めて知ったのは6年ほど前。
当時、筆者は大阪の小さな編集プロダクションで雑誌の編集、ライター、広告営業を行っていた。
その時にたまたま今井さんの靴を雑誌に掲載したことがある。
取材や画像のやり取りは電話とメールとファックスだけで終わってしまい、
直接お会いすることはなかった。

雑誌の仕事を離れてからは、まったく音沙汰を耳にすることはなかったが、
昨年ツイッターを通じて再会することができた。
そして今回6年越しで初めてお会いすることが出来た次第だ。


今井さんは「このスリッパは夏だけで終わりです」とおっしゃっておられたが、
履き口にボアを貼ったり、中敷きにフリースを貼るなどすれば十分に秋冬にも販売できると思う。
ちょっとした工夫で年間定番になりうるのではないだろうか。


助成金・補助金で一息吐こうとする繊維産地の姿勢は間違っている

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 普段、生地メーカーや産地側に立っての記事が多いが、今日は、産地側にNGを出してみたい。


生地メーカーや染色工場、整理加工場などの製造業が集積している場所を産地というが、
安価な製造が可能な、中国をはじめとするアジア各国に押されて疲弊している。
300件も倒産した産地もある。

最近では、行政が助成金や補助金で支援して、自立化や海外進出を目指させる事業が増えている。
行政の助成金や補助金は様々な形態があり、単年度の物もあれば、例えば3年という複数年に跨るものもある。

さて、先日、某産地が申請した複数年の助成金が認可を受けた。
当然、今年だけではなく来年以降の活動の詳細をある程度決めなくてはならない。複数年の認可を受けても毎年事業計画は提出しないといけないので、年々その内容は変わる。今からすべての計画を立てる必要はない。
しかし、この産地はどうやら来年以降の活動を継続するつもりがないらしい。今年の助成金をもらえばそれで良いというスタンスだ。

これでは、助成金詐欺に等しいのではないかと思う。

よく耳にするが、助成金目当てのコンサルが数多く存在し、助成金申請を手伝ってその上前をハネるという。
これも許し難い行為ではあるが、個人の活動である。この個人の心情が間違っているだけのことであり、大多数の方々が悪いわけではない。
しかし、今回は産地である。複数の企業がその企みに乗っかっている。不心得な個人が勝手に引き起こしたものではないだけに、罪も深いと思う。

もちろん、産地企業各社のおかれた苦しい立場は理解できるが、一時しのぎに今年だけの助成金を掠め取ったところでどれほどの利益になるのだろうか。まったく発展性がない。
それならいっそのこと廃業して工場を売れば良い。土地付きであれば最低でも何百万円かでは売れるだろう。
先日、経営破綻したワイキューブの安田佳生社長は、その著書「千円札は拾うな」の中で、先祖代々の斜陽家業を夜も寝ないで守り抜こうとして、疲労困憊した友人に「それなら廃業して違う商売を始めれば良い」とアドバイスしたことが記されているが、まさにその通りである。


一時しのぎで助成金を手にしたところで、来年以降はどうするのか?
日本の繊維産地を巡る状況は悪化することはあっても良くなることはない。


こういう助成金詐欺、補助金詐欺のような案件を今後は一切許してはならない。



現実味を帯びてきたアパレル不要論

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 今年もいよいよ和歌山県の高野口産地のヒアリングの時期が始まった。
全13社を3日に分けて巡回する。
高野口産地は、フェイクファーとかカットパイル、ベロアなど毛足の長い織物・編物を得意とする産地である。
初日は5社を廻った。

その中の1社の社長が、朝からかなりのハイテンション。
「ビールでもひっかけて来たのか?」と思ったがどうやら素面のご様子。

社長いわく「日本の大手企業には、まともな物作り担当者がおらんようになっとる」とのこと。
東京を拠点に上場している某大手雑貨メーカーと取り引きのある香港企業のスタッフから、直接、社長に電話があったという。
「生地のことで相談したいと、某大手上場企業に電話したところ、まったく話にならない。担当者が物作りを知らなさすぎる。この大手企業では役に立たないので、直接生地製造を担当する貴社に連絡した」。

この大手はアパレルではないが、繊維製品の雑貨も相当数扱っている。
上場しており、日本でも有名な企業ではあるが、企画担当者が生地のことをまったくわからないのは論外だ。
大手アパレルと同様に丸投げ企画と中抜き体質丸出しである。

賛否はあるが「日本は物作りを大切にしなくてはならない」という意見が経済界でも主流を占めている。
これに同意する方々も多いと思う。

しかし、アパレルも雑貨も大手の「物作り丸投げ体質」は年を追うごとにひどくなる一方である。
もういっそのこと、小売業やブランドライセンス管理業に徹すればどうか?
このままでは、アパレルも雑貨メーカーも要らない。

先述の香港企業のように、海外企業が直接、日本の工場と話を詰めて製品開発を進める。
また、工場側も進化しており、若い経営者が自社の生地を使って、オリジナル商品の製造をすでに開始している。いわゆる「ファクトリーブランド」へと進みつつある工場が少なからず存在し始めている。

OEM/ODMや工場に企画開発を丸投げにするようなアパレルも雑貨メーカーも後少しすれば完全に存在意義をなくす。
手抜きの企画開発しかできない企業は、そろそろ市場から退場させられる。

メンズスーツも画像データ転送で製造依頼する時代に

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 今は亡き、児島の大手洗い加工場、共和に取材でお邪魔したことがある。
共和は2009年に営業を停止して廃業となった。

今から思えば、共和は悲運の洗い加工場である。
もともと、メインとしていたラングラージャパンがヴイエフジャパンとなり、さらにそのヴイエフジャパンも解散し、「ラングラー」ブランドもエドウイン商事の子会社のリージャパンに吸収された。
さらに、もう一本の柱であった帝人ワオも親会社によって解散となっており、大口のメイン顧客を2社とも失った。

さて、もう数年前になるが、共和を最後に取材したときのこと。
大口顧客を失った状態で、共和は東京のSPAブランドやセレクトショップのPBなどの洗い加工を手掛けるようになっていた。
共和の福岡社長に見せていただいたのだが、明らかに他社ブランドの店頭商品を写真に写して、画像データをメール添付して送りつけるブランドがあった。
東京の某SPAブランドである。
そのメールには一言「こんな感じでジーンズに洗い加工を施してください」と。

これほど楽で頭を使わない業務もない。
他社ブランドの店頭で気に入った商品を写真に写して、そのままメール転送して「同じように仕上げてくれ」と頼むだけである。

今ではこんな発注のやり方は業界でスタンダードとなっている。
企画担当者はデザイン画を描くこともないし、パターンを考えることもない。指示書すら書く必要がない。

レディースブランドも一般カジュアルもそんな時代である。


先日、ある展示会で「メンズのテイラードスーツも同じですよ」という話を聞いた。
他社ブランドのスーツを写真に撮影し、それをメールにデータ添付して工場に送るらしい。

これにはさすがに驚いた。

メンズのスーツは、微妙なミリ単位の差がブランドやショップの味である。
もともとメンズスーツは、ほぼデザインが固定化されている。それをブランドやショップの持ち味として、
ウエストを何ミリ単位で広くしたり狭めたり、パンツの太さをミリ単位で太くしたり狭くしたりするものである。
他社のスーツを写真撮影し、「これと同じで」という発注で済むならこれほど楽な作業はない。

そこまで手抜きがしたいのなら、メンズのスーツは業界全体で統一パターンを採用すれば良いのである。
どうせデザイン的には変わり映えのしない商品である。
全社統一パターンで製造すれば縫製工場も助かる。


オンワードグループのオフィスユニフォームもミッシェルクランもポールスミスも同じパターンを使えば良い。


こだわりを楽しむはずのメンズスーツまでが、画像データ添付の発注に代わるとは実に嘆かわしい。
これ見よがしにスーツの蘊蓄を語るオッサンもうっとおしい存在だが、他社ブランドの撮影だけでパターンも引かず、指示書も書かないお手軽発注スーツなど、オフィスユニフォームよりも劣る。

日本のアパレル企業の物作り精神は本当に死に絶えてしまったようだ。
今、店頭に並んでいる商品は死骸であり、残骸である。


ピークを過ぎた「山ガール」ブーム

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 散々、既出かもしれないが、「山ガール」ブームのピークは過ぎたようだ。

先日、ティムコのアウトドアブランド「フォックスファイヤー」の展示会にお邪魔した。
ティムコは釣り具メーカーから、ウエアも含むトータルなアウトドアブランドへと転換した異色の会社である。
担当者によると「山ガールブームによって女性客が大幅に増え、アウトドアのすそ野は広がったが、当社ではブームのピークは過ぎたと見ている」という。

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「山ガール」という呼称には以前から非常に違和感を持っている。
どう見ても「ガール」でも「女子」でもない年代の女性が多数含まれているからである。
「山女(やまおんな、やまじょ)」「山オバ」「ヤマダム」あたりの呼び名がしっくりくるように思う。
ちなみに渓流魚のヤマメは漢字では「山女」と書く。


閑話休題

山ガールブームのピークは終わったと言っても、女性のアウトドアファンはある程度の人数を維持したままになる。
彼女らの次の興味は魚釣りに移るのか、山の風景を撮影するアウトドアカメラに移るのかはわからない。
あるいはその両方に分散するのかもしれない。

山ガールというブームが盛り上がったおかげで、アウトドアウエアもずいぶんとデザイン化が進み、カラフルにそしてスマートに進化した。そういう意味では女性ファンの存在は大きかったと言える。

そんな中、アウトドア業界関係者によると、「ザ・ノースフェイス」の売り上げが好調であるという。
もちろん女性客にも支持されている。
「ザ・ノースフェイス」の好調が特筆されるべき理由は、通常の「山ガール対応」をしていないからだ。
山ガール向けに各ブランドは、色柄をカラフルにかわいく変化させてきた。
しかし、「ザ・ノースフェイス」は、シャープでスマートではあるものの、それほどカラフルな色は多用しない。
むしろ、今季はダークでシックである。

通常のアパレル業界に置き換えれば、
「カラフルというトレンド」を無視しているにも関わらず、トレンド層の消費者から支持を集めているという状態にある。
これが可能であるなら、アパレル業界の各ブランドは何も苦労しないだろう。

消費者は「ザ・ノースフェイス」というブランドに特別なステイタス性を感じていると思われる。

そこに至るまでには長い時間が費やされている。
「ザ・ノースフェイス」を日本で展開し続けてきたゴールドウィンの粘り勝ちと言えるかもしれない。

釣り具メーカーから転身してトレンド性と機能性を兼ね備えた自社ブランド「フォックスファイヤー」を開発するに至ったティムコ。
長い年月を費やして、「ザ・ノースフェイス」のステイタス性を確立したゴールドウィン。

この2社の取り組みをアパレル業界各社は参考にすべきではないだろうか。

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