南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

2011年05月

服装一つ自主的に決められない日本企業の惨状

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 スーパークールビズが発表されたものの、服装の是非が取りざたされて、一部の企業を除いてはあまり進む気配が感じられない。
ポロシャツでは相手先に失礼になるのではないか?という意見が多いようだが、
全企業がポロシャツになれば、失礼もクソもない。
そういう方々は、昨年並みの猛暑となったと仮定して、気温35度・湿度70%・冷房なしの状態で、脱水症状になっても「失礼にあたるから」と上着を着用し続ければ良い。


例えば、ハワイではアロハが正装とされており、
ホテルの従業員もアロハを着用している。
ハワイのホテルに行って「こいつら失礼極まりない」と怒る人がいるのだろうか?


今回のスーパークールビズ騒動の発端は電力不足であるとはいえ、
政府に服装のガイドラインを決めてもらうというのは、服装後進国であることを暴露してしまったといえる。

読売新聞「ニュースで学ぶNGスタイル」から平井義裕さんの言葉を引用すると


いい年をした大人が、ドレスコードがないとコーディネートを決められないというのも情けないのです。今回の環境省の制定した「スーパークールビズ」は、「まだ日本はファッション後進国です」と世界に発信してしまったようなものです。

ということになる。


これでは、国策してデザイン業界に対して莫大な資金を投下している韓国にも早晩、日本はこの分野でも負けてしまうだろう。



これまで、日本の男性はあまりにも「とりあえずスーツ」「とりあえずネクタイ」という安直な服装が多かった。
居酒屋での「とりあずビール」じゃないんだからと思う。
そして、カジュアルとフォーマルの違いも自分で考えてこなかった。
自分の洋服を自分で選ばずに妻に選んで買ってきてもらう男性があまりにも多い。
だから、オチマーケティングオフィスの生地雅之さんが常々から提唱していらっしゃるように
「男性服売り場でも実際に買いに来るのは奥様が多いので、什器の背丈は低めにしましょう」という
手法が必要になるのである。


妻が勝手に買ってくるから、サイズ感のおかしな服を着ている男性が多い。
服は必ず試着してみないとジャストサイズがわからない。
男性は売り場に来ないので、妻が選ぶことになるが、そのときに妻は
「もし小さかったら困る。確実に着られるサイズを選ぼう」と考える。
そうすると、MよりはLに、LよりはLLにということになり、
男性は常にワンサイズ大きめの服を着ることになる。
洋服に関しては「大は小を兼ねる」ということにはならない。
ヒップホップアーティストではないのだから、ワンサイズ大きめの洋服はあまりにもおかしい。


先日、朝日新聞でスーパークールビズについて
ユナイテッドアローズのクリエイティブアドバイザーの栗野宏文・上級顧問は
日本の男性について、「常に制服としてのスーツ姿で、場面に合わせて選択してこなかった」と感じる。「本来何を着るべきか、服の本質に立ち返る機会になるのでは」

http://mytown.asahi.com/saitama/news.php?k_id=11000001105260002

と指摘しておられたが、まさにその通りである。


これまでカジュアルフライデー(死語)だなんだかんだと言われてきたが、
年配男性は一向に洋服に無頓着なままで、一向に変わらなかった。
その価値観を今回の電力不足のクールビズにまで押しつけるのはいかがなものだろうか?

近鉄と大丸松坂屋が販売員もクールビズに

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 電力不足によるスーパークールビズの動きだが、近鉄百貨店が売り場社員にも対応することを打ち出した。
また大丸松坂屋百貨店でも5月16日から同じ取り組みを開始しているという。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110529-00000504-san-soci

近鉄百貨店では店内の空調温度を見直すとともに、男性従業員のネクタイを外すことを決めた。高級ブランドを販売するテナントでも導入する徹底振りに社内では異論も出たが、「お客さまからすれば区別はつかない」として決定した。

 同百貨店幹部は「正装といえばネクタイ。百貨店として外してもいいのか、と懸念の声もあった」としつつも、「お客さまの意識も変わっている。クールビズといいながら、売る方が暑い服装では意味がない」と新たな取り組みに意欲を燃やす。大丸松坂屋百貨店でも同様の取り組みを5月16日から開始している。


という。

今回の近鉄の措置は英断といえる。
また大丸松坂屋の対応の早さも評価できる。
文中にあるように「クールビズといいながら、売る方が暑い服装では意味がない」というのはまったくその通りで、
「スーパークールビズでございます」と言いながら、販売員が上着着用でネクタイ締めて汗だくでは著しく説得力にかける。


近鉄百貨店の社員をリストラしながら、リーマンショック以前に決定した阿倍野店の建て替えを粛々と遂行する姿には大いに疑問を抱いていたが、今回の取り組みは支持したい。
また、いち早く「脱百貨店」的売り場を作っている大丸松坂屋の一貫した姿勢もさすがである。


ところで、疑問なのだが、百貨店の社員がネクタイをしていないとお客に失礼と思われるのだろうか?
たしかに欧米ではドレスコードが厳密である。これは従業員やスタッフだけが厳密に守らなくてはならないというものではなく、お客の方も守らねばならない。
例えば高級ホテルや格式あるレストランなどでは、Tシャツ・短パン姿のお客は入店を断られる。
お客と従業員の服装の「正装ぶり」はほぼ釣り合っているといえる。


しかし、日本は従業員に対するドレスコードは著しく厳しいが、お客に対するドレスコードは極限まで甘い。
高級ホテルでも高級レストランでもTシャツ・短パン・サンダル姿のおっちゃんがウロウロしている。
当然百貨店のお客の服装もバラバラである。
起きてすぐに寝巻のままで来店するようなお客、Tシャツ・短パン・サンダル着用でまるで「裸の大将」みたいなお客、上下ジャージ姿でまるで野球大会の帰り道のようなお客 ― などなど。
こういうお客が少なからずいる店頭で、そこまで「従業員のネクタイが~」というようなお客はそれほどいないと思うのだが、いかがだろうか?


日本の洋服文化はいまだに欧米からの「借り物」の域を脱しておらず、
過剰に「正装」するか、過剰な「カジュアル」でもOKかのどちらかしかないような印象がある。
百貨店の店員が「ネクタイをするかしないか」だけでここまで論争し、一般紙が掲載するのもまことにアホらしい。
「正装」にこだわるならいっそのこと男性社員はモーニングで接客させたら良い。

お客は商品を買いに来ており、親切な接客を百貨店に期待しているのであって、決して「百貨店従業員のネクタイ姿」を見に来ているわけではない。




終わらない消費者の衣料品デフレ志向

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 何人かの知り合いと話題になるのが「衣料品の価格差はわかりにくい」ということ。
どういうことかというと、例えば19000円のスーツと59000円のスーツの明確な差があまりない。
続けて言うなら1900円のTシャツと4900円のTシャツの差もわかりにくい。

これが家電製品、自動車などの工業機械製品なら価格差がわかりやすい。
よほど特殊なブランドを除いては、ほぼ性能や耐久性の良さと値段の高さが反比例する。
70万円の自動車と、300万円の自動車は明らかに違うし、
5万円のパソコンと15万円のパソコンは明らかに性能が違う。


衣料品の場合は、安い物でも耐久性があり長持ちする場合もあるし、
往々にして高級品の方が手入れに手間がかかり、耐久性のない物も多い。

ある知り合いが、イタリア製の高級生地を使ってスーツをパターンオーダーしたことがある。
生地代込みで69000円か79000円だった。その店は通常の生地を使えば39000円でパターンオーダーができる。
ベージュ色のなかなか良い感じの生地である。
しかし、後に分かるのだが、この生地には一つ困る点があった。
水に濡れるとその部分が変色してしまうのである。
乾いた後も微妙に元の色とは異なっている。
晴れの日専用スーツであり、なんとも取り扱いが面倒くさい。

自分のような貧乏人からすれば「高い金払ってるのに、なんじゃこの不便なスーツは」ということになってしまう。
逆に言えば「お金持ちは雨の日は、自動車か何かで送り迎えしてもらうものでザマすわよ」ということなのだろう。

また別の知り合いは、これもイタリア製の超高級生地を使った10万円を越えるスーツを作った。
ところが、このスーツは、1度着用したら数日休ませないといけないほど、デリケートな生地だった。
連日着用すると膝は出るし、袖口やポケットの縁が擦り切れてしまうという。
貧乏人にとって何とも面倒くさいスーツである。


お金持ちは「スーツはたくさん所有しているので、1度着用したスーツをローテーションで着まわしても次の登板は10日以上後になるザマすわよ」ということなのだろう。


なんだかスーツの話しばかりになってしまったが、
衣料品の各アイテムについても同じことである。
3万円のジーンズが長持ちするかというとそうでもないし、7900円あたりのジーンズが一番長持ちしたりもする。


衣料品は実用品であると同時に嗜好品である側面もあるので、
実用面ばかりに目を向けてはいけないことは良く分かっている。
それでも、やはり価格は分かりにくいと感じる。
ここを分かりやすくしない限り、消費者の衣料品デフレ志向は終わることがないだろう。

クールビズこそが「伝統と文化の積み重ね」だ!

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 スーパークールビズ続きで恐縮だが、今日は素朴な疑問を。

戦前や昭和30年代ごろの映画やそれを舞台にしたドラマを見ていると、
男性のサラリーマンは、真夏に開襟シャツを着て、ノーネクタイで仕事をしている。
外出時にはパナマ帽やカンカン帽を被っていることが多い。
終戦直後から万博直前までを舞台にしたドラマ「官僚たちの夏」の登場人物も
そういう服装の人が多かった。


冷房のない時代だから、そういう服装でないと熱中症で倒れる人が続出したのだろう。
気候的に見ても非常に合理的である。


いつの時代から日本のビジネスマンは、クソ暑い真夏にジャケットを着込んで、
のど元をネクタイで締めるようになったのだろう?
社内は冷房があるとはいえ、外回りがメインとなる営業マンや外交員ですら、
真夏にジャケットを着込み、長袖シャツを着てネクタイを締めるのは不合理極まりない。

誰が、なぜそのような服装を男性に強制していったのだろうか?


読売新聞のコラム「ニュースで学ぶNGスタイル」で平井義裕さんも

http://otona.yomiuri.co.jp/pleasure/fashion/110524.htm

昭和30年代のサラリーマンの姿、開襟シャツにゆったりとしたパンツ、メッシュの靴にパナマ帽――。冷房が発達していなかったこの時代のファッションにこそ、スーパークールビズのヒントがあるのかもしれません。

と書いておられる。


自分の浅い知見では、
亡くなられた石津謙介さんあたりが、
真夏でもネクタイを締めたスーツスタイルを広めたと聞いているが、
古い時代の話しなので事実かどうかもわからない。
誰がどのように広めたのかと責任を追及する気はないのだが、
「ずいぶんと無駄でバカげたことを広めてくれたよなあ」という感想しかない。


この気候に反した着こなしのおかげで、どれほど多くのサラリーマンが、
何十年間という長期間に渡って、夏場に苦しんできたのだろうか。


今年の夏は、冷房のなかった昭和30年代に逆戻りするのと同じ状況になる。
あの当時の着こなしこそが、日本の気候に適した「洋装文化」だったと言える。
これこそが真の「伝統と文化の積み重ね」だと思うのだが。



「SAVE BIZ」を業界に先駆けて提案したはるやまの姿勢を評価したい

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 先日、ある知り合いから
「アパレル、ファッション業界のスーパークールビズ対応について教えてほしい」と言われた。
今月、環境省からスーパークールビズの発表があったばかりで、アパレル・ファッション業界もどの程度対応するのか模様眺めをしているのだろうと思う。
知る限りでは、具体的な打ち出しを行っているブランドはない。

しらべていくと、
紳士服チェーン店のはるやまが「SAVE BIZ(セイブビズ)」と名付けていち早く積極的に提案を行っていることがわかった。

http://journal.mycom.co.jp/news/2011/05/17/026/index.html?rt=mt

このマイコミジャーナルに全文が掲載されている。

今夏のクールビズは、これまでと違って
「電力供給が足りなくなるかもしれないので、冷房はほとんど使うことができない」前提がある。
(この電力不足は原発推進派のデマで、実際は電力供給は足りているという説もある)
一方、これまでのクールビズは
「冷房は使えるのだけれどもCO2削減のために冷房温度を2~3度上げましょう」というもので、
冷房は使えるという前提であり、どうしようもなく暑いと感じれば冷房温度は下げられた。
(これにも異論があって、冷房温度を上げても電気代節約にはなるが、CO2削減には効果なしという説もある)


今回のはるやまの対応は素早く、積極的で
いち早くスタイルの提案を打ち出したところを個人的には評価をしたい。
「SAVE BIZ」には電力節約を助けましょうという意味が込められている。

具体的にどのようなルックスになるのかをマイコミジャーナルのイラストを引用して見ていただく。

001



真中がこれまでのクールビズで、
右から2番目と右端が今回のセイブビズである。

はるやまはさすがに衣料品の企業らしく、パンツの裾を10cmほどロールアップしたスタイルを採り入れている。
以前も書いたように、パンツの裾を10cm短くするだけで、熱の放出量は増えて、涼しくなる。
また短パンほどくつろいだ感じもしない。この長さがいわゆるクロップド丈や8分丈・7分丈という長さになる。

はるやまのツープライススーツショップ「パーフェクトスーツファクトリー(PSFA)」は、ホストっぽいデザインのシャツ、ネクタイが多くあまりセンスが良いとは思えないが、今回の「SAVE BIZ」のスタイルは良いと思う。


今回のスーパークールビズについて「積み重ねてきた文化を破壊する」との反対の声もある。
しかし、日本はこと紳士服に関してはほとんどが欧米からの借り物文化であり、積み上げてきた形跡はない。
「積み重ねてきた文化」と仰々しくいうなら、なんであんなにドレスコードを無視したスーツスタイルのオッチャンがオフィスに溢れているのだろうか。
また冠婚葬祭に着用している略礼服なるものは、日本独自の規格であり欧米には存在しない。
欧米の積み重ねてきた服装文化を無視した略礼服はOKで、スーパークールビズはダメという理由がわからない。
「積み重ねてきた文化破壊論」はクールビズ導入時にも述べておられる方がいた。
そもそも日本のビジネススーツ文化は、欧米の文化を見よう見まねで採り入れたもので、一般のスーツ族は「文化」とやらの知識はほとんどない。

モーニングは昼間着用で、タキシードは夜着用するということすら知らない人が大半である。


くだらない借り物の文化に固執するよりも、業界として気温に応じたスタイルを構築、提案する方がよほど建設的であり文化的である。



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