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南充浩 オフィシャルブログ

衣料品に固執している限り百貨店の業績は回復しない

2017年11月29日 百貨店 0

百貨店という業種の業績回復を目指すなら、所詮は単なる小売店に過ぎないのだから、「売れる物を売れ」としか言いようがない。
「売れない物」「売りにくい物」に固執して何を嘆いているのかと思う。
今、百貨店で「売りにくい物」といえば衣料品、とくに婦人服である。
これを減らして「売りやすい物」である化粧品と食品の売り場を拡張すれば良い。
それだけのことである。
一方、「百貨店=ファッション売り場」だと考えている人からすると、婦人服売り場は減らせないというだろう。
百貨店という業態をどう捉えるかによって結論は異なるが、そもそも百貨店は「ファッション売り場」だったのだろうか?
80年代ごろから「勝手に」ファッション売り場へと変貌させたのではないのか?
なまじ「ファッション売り場」として死守しようとするから苦戦しているのではないか。
失速したはずの”爆買い”が帰ってきた理由
「百貨店業界の底入れは本物だ」
http://president.jp/articles/-/23609

この記事に書かれているように「底入れは本物」だとはまったく思わないが、富裕層の消費が回復しているのは事実である。

インバウンド以外では時計など高額品が堅調だ。高島屋の広報担当者は「日経平均で2万をつけた6月ごろから伸びが顕著になった」と説明。株高の恩恵を受けた富裕層の消費が支えているという。宝飾品は4.0%、美術品は7.9%、それぞれプラスになった。



とのことで、ここに加えて外商も回復しているという。
知り合いの某毛皮業者は、2年ほど前から外商向けの30万円~50万円くらいの毛皮製品(フェイクファーではない)の売れ行きが回復してきて、今年は毎月追加発注が来るという。
これまでは黒、茶、ベージュなどのベーシックカラーの需要ばかりだったが、2年くらい前からはピンクなどの綺麗な色のファーの発注が主流だという。
一方、再三各方面でも報道されているように、インバウンド消費が回復しているが中身は変わっている。
以前は高級ブランド品だったのが化粧品などが主体となっている。
インバウンド消費をことさら重要だとは思わないが、そこに照準を当てても洋服よりは化粧品を強化すべきなのである。
このプレジデントの記事にも


一方で米アマゾンなどのインターネット通販に押される中間所得層は厳しい戦いが続く。高島屋は婦人服が1.7%減、紳士服が4.6%減と衣料品は相変わらず不振だ。

 
とある。
「アマゾンなどのインターネット通販に押される」とはステレオタイプの紋切り型で失笑するほかないが、高島屋だけの数字で見ても衣料品は苦戦している。
百貨店協会の売上速報でも衣料品は押しなべて不調である。
だとしたら、百貨店という「単なる一小売店」がファッション衣料品に固執する意味があるのだろうか。
当方はまったく意味がないと考える。
それは単なる自己満足じゃないのか。
小島健輔さんや松岡真宏さんが指摘しておられるように、百貨店の衣料品売り場は80年代から拡大し始めた。
80年代、90年代と拡大を続けて2010年代に至っている。
http://www.apalog.com/kojima/archive/2077
 

80年頃には1.7倍程度の差(婦人服売り場と紳士服売り場の広さの差)だったのが90年頃には2倍強になり90年代末には3倍にまで開いた経緯を振り返っても、消費の実勢を超えた拡大であった事が伺われる。

 
じゃあ、どうして80年代と90年代はひたすら衣料品売り場を拡張し続けてきたのだろうか。
それは百貨店にとって最も「売りやすい」「売れやすい」物だったからにほかならない。
別に百貨店は元から「服屋」なのではない。
服が売りやすく、売れやすかったから衣料品売り場を広げただけで、当時、ほかの物が売りやすかったなら、それを広げていただろう。
しかし、90年代だとすでに家電量販店が成長しており、家電と玩具は最早値段と品ぞろえの豊富さでは百貨店が勝負できなくなっていた。
だから百貨店は家電と玩具を切り捨てた。
別に衣料品が百貨店のアイデンティティだったわけでもあるまい。
バブル景気とファッションブームでそれが最も売りやすい品物だったというだけに過ぎない。
先ほどの小島健輔さんのブログから再び引用しよう。
 

衣料品は前年(16年)も大きく落としているため前々年比で見ると、紳士服・洋品が8~10月平均で93.4とヒト桁の落ち込みに踏み止まったのに対し、婦人服・洋品は同88.7と大きく落としており、その差は4.7ポイントも開いている。前々年からの減少額(年間)は紳士服・洋品の339.5億円に対して婦人服・洋品は1451.9億円と4.3倍近く、そこにこそ衣料不振の本質が潜んでいるように思われる。
家計支出調査では紳士衣料の1.8倍弱の婦人衣料が百貨店では紳士衣料の三倍近い売場を占めて三倍強を売り上げており、婦人服が過大供給になっている事は間違いない。

 
とのことで、結局は80年代・90年代に婦人服偏重になったままで、それをいまだに維持しようとするから百貨店は苦戦し続けるのである。
今なら、家電量販店の家電に飽き足らないと思っている層を呼び込むというのはどうだろうか?
また自転車やサイクリング用の衣服なんていうのを強化してみてはどうか?
たしかに消費者教育は必要だが、要らない物を無理やりに売り続けるというのはいかがな姿勢だろうか。
百貨店の婦人服売り場なんて伝統芸能でも重要文化財でも国宝でもないのだから、売れなくなればさっさと縮小すれば良いのではないか。
そういう硬直したマインドそのものが百貨店を凋落させていることに気が付くべきである。

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