アパレル業界の人もそうだが、特にメディア業界の人に顕著なのが洋服に関しての「売れている」という基準である。

メディアの紋切り型としてはこうだ。

低価格品しか売れないと言われているが、一方で〇〇万円もする高額衣料が飛ぶように売れている。

というのが池井戸潤のドラマ並みに黄金のワンパターン化している。
しかし、この「売れている」という基準が何なのかはちょっとわからない。
数量で考えると「売れている」とはいっても圧倒的に少ない場合が多い。

例えば、高額にもかかわらず売れているのがデサントの水沢ダウンである。
8万~12万円くらいの価格帯だが、好調に推移している。
しかし、生産数量はフル稼働しても1万枚未満しかない。
これは設備が小規模なので設備投資なしではこれ以上の生産数量は不可能なのである。

この数量をどう見るかである。

ユニクロのウルトラライトダウンは言うに及ばず、他の低価格ダウン、中価格ダウンはもっと販売数量がある。

これなんかすごく数量的にはビミョウすぎる例ではないかと思うのが、繊研プラスに掲載されたインディマークというブランドのパンツだ。

「インディマーク」デニム調パンツがヒット 2千本超
https://senken.co.jp/posts/indimark-fleece-lining

聴いたことのないブランドだなあと思って記事を読むと、レッドペッパーのブランドとのことだ。
レッドペッパーといえば、刺繍がコテコテに入ったコテコテジーンズの代表として2005年ごろ局地的なブームとなった。
ブランド自体が無くなってしまった「トゥルーレリジョン」の系譜であれをさらにコテコテにしたブランドで、韓国ブランドである。
国内ブランドだとこの系譜にはクックジーンズがある。マイルドヤンキー御用達のテイストである。

見出しは2000本の大ヒットとあるが、どれだけの期間で2000本を売ったのかというと

今年5月からの販売数量は約2000本に達し、来年2月までに3000本の追加販売を見込んでいる。販路は専門店など。

とあり、今年5月からだと半年で2000本ということになる。
経済紙的観点からいうと、6か月で2000本を売れていると言ってしまっていいのか甚だ疑問を感じる。
1か月で300本強だ。価格は1万3800円だから上代ベースの金額で考えてもそれほど大した額ではない。

マックハウスあたりが発売する新商品はだいたい年間2万本とか3万本で計画される。
それと比べると半年で2000本というのはかなり少なく「売れている」と言えるのかどうか。

しかし、結局、「売れている・売れていない」というのはその会社なりブランドなりの売り上げ規模や販売計画に基づいて判断するのがもっとも適切だといえる。

デサントとして水沢ダウンが今の数量で売れていることに満足していればそれは「売れている」「好調」といえる。
レッドペッパーがインディマークのパンツを1年で5000本売れれば良しとしているならそれは「売れている」といえる。

売れている・売れていないというのは、5000本とか8000本で満足するのか、それともそれを通過点としてユニクロよろしく無限成長を目指すのかという企業姿勢・ブランド姿勢にも密接に関係する。

10万円のダウンジャケットはいくら頑張って販促したって、年間に10万枚も売れない。
10万枚を目指すなら値段は絶対に引き下げなくてはならない。

気仙沼ニットだって500枚以上は生産できない。
これを1万枚に増やそうと思うと作る人を増やして販売価格を引き下げなくてはならない。
15万円のセーターなんて買う人はそれほど多くないからだ。

しかし、ブランド側が今の数量で満足だというならそれはそれでありだ。
今の数量で満足して安定的な収益が確保できるならそれは一つのビジネスモデルであり、無限成長を目指すことばかりが正しいとは言えない。

メディアはこの部分を混同してしまっている。
特に経済紙・経済誌の見方はひどい。

1万枚未満の水沢ダウンを引き合いに出して「高額品が飛ぶように売れていますよ」なんて吹聴する。
それをまたちょっとアレな経営者が頭から信じて「高い商品なら売れるらしい」と言い出して、意味のわからないハイエンドモデル化してしまう。その結果、経営は極度に悪化する。場合によっては会社がつぶれてしまう。

今までそういうことがどれほどあったか。

高価格化するということは販売数量が少なくなるということだし、大規模な数量を狙うなら価格は引き下げなくてはならない。
そのどちらを狙うのもそれは経済活動の自由というものだが、高価格で大量に売れるということはほぼない。
インディマークの1万3800円くらいならやり方次第では何万枚か(10万枚は越えない)には達するだろうが、10万円の服が何万枚・何十万枚も売れるようにはならない。これが現実である。

販売数量の違い・販売目標の違い・ブランドのスタンスの違いを一緒にして、「10万円もする〇〇がバカ売れ(でも販売数量は3000枚くらい)」というような煽りは百害あって一利なしである。

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三越伊勢丹HDが「ケイタマルヤマ」を手放す理由とは?
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n06274a064cba

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