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南充浩 オフィシャルブログ

百貨店のECはゾゾタウンには到底追いつけない

2017年11月13日 ネット通販 0

猫も杓子もEC販売強化で本当に大丈夫なのかなと思う。
先日、三越伊勢丹HDもEC強化を改めて説明していたが、正直なところ、大きくは成功しないのではないかと思っている。
三越伊勢丹HD、デジタル活用した新成長戦略を発表
https://www.fashionsnap.com/news/2017-11-08/mi-digital/

記事の中身には別段目新しい箇所はない。
まあ、ありふれたオーソドックスなECについて再説明しているに過ぎない。
そういえば、ECの強化と、その中でのアパレル各社との連携については、退任させられる前の大西洋前社長が構想を漏らしていた。
偶然にも当方もその構想を直接聞いたことがある。
その際の構想では、アパレル各社・各ブランドと連携して物流倉庫を一元化したいという考えだった。
三越伊勢丹のECへの出店・出品者と共同で専用の倉庫を持ち、そこから出荷することでコストを削減したいという考えがあった。
まあ、これも実現せずに終わってしまったのだが。
自前での商品開発機能をほとんど持たない百貨店としては、ECでできることはさまざまなメーカーやブランドからの商品を仕入れて(委託も含めて)サイト上で売るしかない。
オリジナル品は「別注」という形でメーカーやブランド品に作らせるしかない。
記事で気になる箇所がある。

杉江社長は「ゾゾタウンに近いビジネスになるんじゃないか」と展望を語った。

とある。
ここは2つの意味が考えられる。
1、わかりやすい実例としてZOZOを出した
2、本気でそう考えている

である。
案の定、メディアでは「ZOZOのような」という部分が独り歩きして、センセーショナルに煽られているが、実際のところ実現は不可能である。
ZOZOと同じような形態のウェブモールは作ることができるだろうが、売り上げ規模や存在感で並ぶことはないだろう。
この会見での空気感や杉江社長の人となりがわからないので、なんとも言えないが、メディアや出席者にわかりやすい実例としてモール型のZOZOを持ち出して説明したということは十分に考えられる。
1、の場合なら何の心配もないが、もし2だったら、先行きには不安を感じる。
はっきり言ってしまえば、ウェブ上にZOZOは二つ要らないのである。
ファッション衣料品に特化したウェブモールはZOZOが一つあれば十分であり、並立するにはZOZOとよほど差別化されている必要がある。
差別化されていないなら、存在価値はない。
消費者にとっても同じようなモールが二つあっても意味がない。
そして、さらにいうなら、ZOZOには先行者メリットがあり、後発組が簡単に追いつけるものではないということである。
ZOZOTOWNはまだネット通販がそれほど行き渡っていない2004年に開始されている。
そういえば、この時期にすでにAmazonも上陸していた。
当方はネット通販デビューが2015年ごろになるので実際に2004年にネットで物を買ったことはなかったが、Amazonは名前は知っていた。
2004年当時勤務していた編集プロダクションのスタッフたちが何人かAmazonで本を買っていたからだ。
Amazonは当初、本の通販サイトとして上陸していた。
当時の販売形態は、同僚によると、1500円以上で送料無料になるので、彼らはいつも3冊くらいまとめて購入して送料を浮かせていた。
その当時にZOZOの名前は聞いたことがなかった。
当方のECリテラシーなんてその程度のものでしかない。
13年前からサイトを構築して、ノウハウを蓄積したZOZOTOWNに、金看板に胡坐をかいたままの百貨店ECモールが追いつけると思っているのだろうか。すでにZOZOTOWNのブランドは確立されてしまっている。
それに13年遅れで後追いしようということをもしも本気で考えているなら、ちょっとアレすぎるのではないか。
いわゆるランチェスターの法則でいうなら、大手は資本力に物を言わせて後追いで物量作戦を展開すればよいのだが、三越伊勢丹HDはそこまで圧倒的な大手だろうか?
開始当初は一点突破主義の小資本だったZOZOTOWNは13年が経過した現在では大手となっている。
大手に対してそうい後追いは、まるでユニクロを後追いするイオンやイトーヨーカドーなどの大型スーパーの衣料品施策と同じではないか。
ネット通販勃興期の2004年頃に、「インターネットで服を売る」ということを考えた人はたくさんいると思う。
当方だって考えた。
当時、交流があった小規模のIT業者に相談したところ、面白いということで、大阪市内の卸売り型メーカーに何社か声をかけた。
ところが卸売り型メーカー各社は「前例がない」「取引先への説明が難しい」という理由でまったく相手にもしてもらえなかった。
他方、ZOZOTOWNはスタート当初にユナイテッドアローズなどの有力セレクトショップに賛同してもらい、スタートすることができた。
やっぱり持ち込む先は選良しなくてはならない。
古めかしい会社に持ち込んだところで意味はない。
百貨店自体が仕入れ型専門店(委託販売が多いけど)である以上、セレクトショップを取り込んだモールであるZOZOTOWNとは土台、ビジネスモデルが違う。
さらにいうなら、ZOZOTOWNは良くも悪くも、好き嫌いも別にして、前澤社長が露出をすることで消費者への認知度を高めている。
今の百貨店にそれと同等の露出ができる経営陣がいるだろうか。拝見したことがない。
経営陣の顔出しは除いたとしても、今の百貨店の発信はZOZOTOWNの発信には量・質ともに足元にも及ばない。
ECサイトは作っただけでは人は流れてこない。
人を引き込むコンテンツ制作、発信の質量が重要であり、今の百貨店にはその両方を作れるだけの力がない。
本気で「ゾゾタウンに近いビジネス」を模索しているとしたら、なんと身の程しらずなことかww

NOTEを更新~♪
三越伊勢丹HDが「ケイタマルヤマ」を手放す理由とは?
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n06274a064cba
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https://www.instagram.com/minamimitsuhiro
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