このところ、毎回楽しみに読んでいるブログがある。

オンデーズの社長のブログである。
いわゆる低価格眼鏡店のオンデーズを買い取り再生した社長の回顧録なのだが、通常の回顧録は絵に描いたようなキレイごとや、フィクションめいたドラマチックな場面が登場して嘘臭さ満載だが、この社長の回顧録は日常的でリアルさがあり生々しい。

赤字で債務超過の会社を買い取っているから資金繰りの話がほとんどだ。
従業員のマインド改革も出てくるが、ドラマや映画のようなわけには行かない。
一つ難関を乗り越えるとまた別の難関に直面しそれを徐々に何とかかんとか解決するという感じである。

自分の身を振り返ってみれば、実際の業務や仕事なんてそんなもので、「サラリーマン金太郎」みたいに飛び込んだ先の社長に気に入られていきなり10億円の取り引きが決まるなんて言うことはあり得ない。
あんなものは本宮ひろ志一流のファンタジーでしかない。

で、今回は第8話で、新生オンデーズが新規出店を果たしたことがメインである。
相変わらず生々しくて泥臭くて良いが、中には小売店に参考になる部分があったのでそれを紹介したい。

第8話 新店舗
https://note.mu/shuji7771/n/n1978972bea6c?creator_urlname=shuji7771

資金繰りに窮する中、社長の中には整合性があるものの、従業員からするとまったく理由がつかめないまま、高田馬場に新規路面店を出店したが、かなり力を入れて販促を行ったにもかかわらず、オープン当日はお客が来なかったというところがある。
で、通行人を捕まえて入店しなかった理由を尋ねる。

突然呼び⽌められ、⼀瞬怪訝な表情を浮かべた若者だったが、気さくな感じで答えてくれた。

「うーーん、なんか、お洒落過ぎて気後れしたんですよね・・」

僕は後頭部をバットで殴られたような思いだった。僕自身が最もこだわった「お洒落さ」が、逆に敷居を高くしてしまっていたというのか。

「それに、狭いから気まずい感じもするよね。⼊ったら最後、何か買わないと出られないような圧迫感が凄いある。」

この言葉も、僕を激しく打ちのめした。そう⾔われてみれば、出⼊口が 1 か所しかないため、店の中は袋⼩路状態だ。ショッピングモール内のインショップの場合、ファサードは広く開放されていて、2⽅向ないし3 方向に出入り口がある場合もあるから、お客様は気軽に⼊って気軽に出ていける。しかし、路面店では 1か所しかない出⼊り口が、圧迫感と入りにくさを感じさせてしまっていたのだ。

インショップの解放感と比較して、正味6坪以下で閉ざされた路面店に、お客様が気まずさや圧迫感を感じるのは無理もない事だ。

「あと、だいたい今日は特に何も買うつもりは無かったんで・・」

最大の勘違いはここだった。大事なのは、店前の通行量よりも、店の前を歩く人たちの「ショッピングモチベーション」なのだ。つまりどれだけ沢山の人が店の前を歩いていようが、買い物をするつもりで歩いていない人達に財布を開いてもらい、お金を出してもらうのには、とてつもなく高いハードルがあったのだ。

一方、ショッピングモールや商店街に来る人たちの多くは、予め何かしらを買おうと思って歩いている。つまり“ショッピングモチベーションが高い”のだ。この場合だと必ずしも自分達の商品が目当ての商品ではなくても、ついで買いをしてもらえることがある。お客様は、その日は何かしらを「買おう」と思って歩いていたのだから、いわゆる財布の紐が緩い状態にあるからだ。

高田馬場の駅前は通行量こそ多いが、そのほとんどは通勤や通学で、買い物をする目的で歩いている人たちはほとんどいない。ショッピングモチベーションがほとんどない人たちの波に向かって僕らはメガネを買ってくれと、むやみやたらに叫んでいただけだったのだ・・。

ちょっと長いので、まとめなおすと、この通行人が入店しようとしなかった理由は、

1、店構えがおしゃれすぎた
2、入り口が1つしかなくて入ったら何か買わずには出られないかもしれないと恐怖を感じた
3、あくまでも通行のために前を通っただけで買い物をする気が元からなかった

の3点になる。

これってすごく重要なことが書かれてあるのではないかと思う。

通常、「ダサい店」よりも「おしゃれな店」の方が良いとされている。
しかし、「おしゃれすぎる」とかえってマス層の客は入りづらく感じる。
少数の先端層を相手にしたくてそういう店作りをするのなら何の問題もないが、ある程度のマス層に売りたいのに先端層が好むような「過剰におしゃれ」な店を作るのはまったく逆効果でしかない。

多くのアパレル業界人やデザイナーズブランドが失敗するのもここではないのか。

彼らはそのセンスの好き嫌いは別としてすごくおしゃれである。
しかし、そんな先端のおしゃれ感を全開にした店を作っても普通の消費者には入りづらいだけだし、一見したところで「あ、これは俺用の店ではない」と判断して敬遠する。

そこで店作りを修正すれば良いのに、業界人はなまじ自分のセンスに過剰に自信があるから、「消費者が退化した」とか「俺のセンスを理解できない消費者のレベルが低い」とか的外れな文句を言い始める。あほか。
ターゲットに設定した層に商品や店作りを合わせられない点で、悪いのは企業やブランド側にある。
あんたらに現実対応能力がないだけの話だ。そして売れなくてアパレル不況だと嘆いている。
売りたいんだったら売れるような商品や店作りをしろよ。

2は覚えのある店も多いだろう。

3についてだが、目の前を何万人通ろうが、買い物をする気がないなら、だれも買わない。
当たり前のことだが、これも多くのブランドや企業が見落としているのではないか。

だから通行人が多いところに無造作に出店して失敗を繰り返しているのではないのか。

ユニクロのように下着や靴下、折り畳み傘を売っていたり、コンビニだったらそれでも良い。買い物をする気がなかった通行人だって、ちょうど靴下が破れたとか、ガムが買いたくなったとかいうことがあるからだ。しかし、純然たるファッション用品を売っている店に買い物をする気がなかった通行人が飛び込んでくることはほぼない。とくにこれから出かけようとしている午前中は。

夕方帰宅途中ならあるかもしれない。

となると、この手の路面でファッション衣料を売る店が取り組むべき販促はどうなるのかが見えてくるのではないか。
あとは、目的買いで来てくれる「固定客」「ファン」をどれだけ作れるかということで、それにはある程度の時間と手間と金はかかる。
無名のブランドが出店しても、明日からすぐにファンができるわけではない。

ともあれ、この回顧録は最終回まで読んでみたいと思う。最終回が書かれるのはいつになるかわからないけど。
あ、ちなみにオンデーズで眼鏡を買ったことはまだない。(笑)

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シャツ専門アパレル各社の生き残りと消滅を回顧する
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n3d3b62325395

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