大阪の南港にATCという複合商業施設がある。バブルのピーク時に作られたのだが、バブル崩壊後は凋落の一途をたどり、アウトレットモール「マーレ」を施設内に開業したものの、客足がさっぱり伸びず、テナントも退店しておりゴーストタウンのようになっている。
バブル時の第3セクターの無責任な開発の見本のような建物である。

この1年はATCに行っていないのだが、先日、知り合いのデザイナー氏から「日曜日、久しぶりにATCに行ったら、コスプレイヤーたちの集結地になっている。コスプレイヤーのおかげで、施設内のサイゼリヤは長蛇の列ができるほど繁盛していた」と驚いていた。

ATC凋落の原因はいくつもある。
まず、一つは地下鉄から接続されて南港へ向かうニュートラムの料金が高すぎた。大阪・本町から往復するだけで1000円弱かかる。ニュートラム区間はわずか2,3駅に過ぎないのにだ。4,5年前にニュートラム料金は引き下げられたが、はっきり言って後の祭りである。対応が遅すぎる。

次に、かつてのテナント出店者によると、家賃が高すぎる。家賃はある程度変動しているが、3年前に聞いた話では「1坪10万円」との提示があったという。坪10万円の家賃は大阪なら梅田のテナント出店家賃と変わらない。同じ金額なら梅田で出店するに決まっている。
なぜそんな法外な価格設定なのかというと、第3セクターのお役所仕事の典型なのだが、建設時のバブルのころの家賃設定のままであることと、その家賃をアテにして建設費や施設内装費を費やしてきたから、今更家賃を下げることは赤字になってしまうからだという。
本当にバカも極まれりの話しであり、テナントも集まらず収入は低下の一途をたどっているのに、そんなことをのうのうと言う。

出店者が減少してゴーストタウン化しているのであれば、10坪の店を月額1万円の破格の値段で貸し出して、若手デザイナー事務所や独立したばかりのショップを誘致した方がよほど施設と近隣の活性化につながる。

で、その知り合いのデザイナー氏は「あれほどのコスプレイヤーが土日祝日に集結するのであれば、ATCは集客装置としてコスプレイヤーが利用しやすいような施設や設備を作って、さらにコスプレイヤーを集めたら良いのではないか」という。例えば、コスプレイヤーのためのお着替えルームやコスプレイヤーが買い物をしそうなコスプレ用具一式のショップ。またお金がないコスプレイヤーたちのための格安飲食店の誘致である。
施設内の飲食店で格安ジャンルに属するのがサイゼリヤしかないため、そこに集中してしまう。ならば、吉野家、すき家、松屋、ガストなどを誘致すればさらにATCに集うコスプレイヤーが増える。

例えば、国を挙げて「クールジャパン」を世界に発信しようと経産省は雄たけびだけを挙げている。クールジャパンに含まれるのは漫画、アニメ、特撮、ファッションである。しかし、実際は漫画、アニメ、特撮の文化振興につながるような施策を国が行っているだろうか?
麻生内閣が提案した「アニメの殿堂」は計画中止になり、東京アニメフェアも規制強化で開催が危ぶまれている。大阪府にしたところで、ATCの近隣のWTCに府庁を移転させる計画を立ち上げたものの、それ以外に南港の振興策は皆無である。

「クールジャパン」を標榜するなら、集積しつつあるコスプレイヤーをさらに集めるような施策を打つべきではないか。実態が伴っていないのに「クールジャパン」の看板だけ掲げてもちっともクールではないし、クールジャパンの海外輸出など画に描いた餅である。