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南充浩 オフィシャルブログ

超ハイスペックな日本の細番手綿糸

2011年6月27日 未分類 1

 日本の産業は、繊維に限らず、スペック重視の「物作り志向」が多い。
個人的には「ムード」とか「スピリット」「マインド」というフワフワした要素で商材を選ぶのは苦手なので、
この「物作り志向」は肌に合っているのだが、逆に日本製品が世界市場向けの販促で苦戦するのも「物作り志向」に偏り過ぎているためだと思う。

それはさておき。

やはり、日本の物作りはすごいと感心させられた。
先日、寝装・リビング関係の小規模なセミナーに参加した。
参加人数は20人くらいだっただろうか。

その後の懇親会で、各社の出席者からいろいろとお話を聞かせていただいたのだが、
羽毛布団のガワ地を製造している会社によると、綿糸で「経糸245番、緯糸300番」を使っているという。
また別の企業は「緯糸に330番の綿糸」を使っているという。

これには非常に驚いた。
業界関係者ならご存知だが、糸の太さは「番手」という言葉で表される。
番手の前には数字が付き、数字が大きければ大きいほどその糸は細いということになる。

一番太い番手は「1番」だが、最近ではその上の「0番」という糸もある。
イタリアやフランスからの高級インポートブランドの細番手のシャツでもだいたい「100番~120番」くらいである。

この「245番、300番、330番」という糸がいかに細いかがわかるだろう。

さらに布団用の生地なので、横幅は162センチある。
通常の生地幅はだいたい150センチくらい。セルビッジデニムは狭幅なので75センチくらいである。
布団用の超超細番手生地は、通常の生地幅よりも12センチ広い。

ついでに言うと、業界関係者なら周知の事実なのだが、
太い糸を紡績するよりも細い糸を紡績する方が難しい。だから高級シャツには細番手が使用され、太番手の織物であるデニムはもともとは安価な生地であり、作業服に使用されていた。
200番を越える糸を紡績することができるのは、おそらく日本の紡績だけだろう。

布団のガワ地は、スペックだけで見ると、他国の追随を許さない最高水準である。
まさに日本的な「物作り志向」を体現しているといえる。

そこで、セミナー講師が、
「その超超細番手の糸を使い、生地の密度を低くして、色柄を工夫したら布団以外の用途(例えば高級シャツ地など)にも進出できますよ」とアドバイスなさっていたが、まさに的確なご意見だと思う。
ただ、問題はこれまでにない用途向けの生地を開発する場合には、別のコストが発生する。
この別のコストとは、デザイナーとの契約費用だったり、試作品の製作費用だったり、そこから次の段階に進むと販促費用が必要となる。
製造業者がこれを捻出する気があるかないかである。

ここを乗り越えるのが苦しいところなのだが、もし、乗り越えられる企業が多数現れれば、
斜陽産業と目されている繊維製造業にも、まだ活路があるのではないかと思うがいかがだろうか。

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 comment
  • h7bb6xg3 より: 2011/06/28(火) 9:12 AM

    どうも、ハンドルネームはenneagramを使っております。はじめまして。こんにちは。
    私が繊維会社に勤務し始めた1987年には、インド長繊維綿で60番手でも高級糸でした。いまや200番手を超えているんですか。
    日本企業のすさまじい技術力は、繊維産業でも世界のトップというわけで、こんなものパキスタンではぜったいつくれない、というものを日本の繊維メーカーはやってのけてしまうわけですね。
    繊維産業や窯業みたいな基本産業が弱くなると、その国の工業力も全体的に衰退するものですけれど、日本の工業力はまだまだ大丈夫というわけですね。
    安心しました。ありがとうございました。

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