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南充浩 オフィシャルブログ

異業種オーナーが考えるほどには、出版は儲からない

2011年6月22日 未分類 0

 先日、惜しまれつつも子供服雑誌「マリア」が休刊となった。
出版元のアンジュパブリッシングも解散となる。残念だが、創刊されたばかりの「フリッカ」も休刊である。

数年前に関西圏のエリアファッション雑誌「カスタマ」も休刊となった。

「カスタマ」と「マリア」に共通することは、出版社のオーナーが異業種であることである。
個人的には「異業種の出版参入はかなり難しい」と考えている。
正確に言うなら「参入することに対してはそれほど難しくはないが、異業種出身のオーナーが考えるほど、現在の出版業は儲かる仕事ではない」ということになる。

まず、参入するためには誌面を作らなくてはならないのだが、これは意外に難しくない。
出版業界出身でフリーのライター、編集者、カメラマンは全国に腐るほどいる。
OEM/ODM業者が無数にあり、素人オーナーでも商品を作ることが簡単にできるアパレル業界と似ている。
さて、先日も書いたように、現状の雑誌の利益はほとんどが広告掲載料によるものである。
バブルの頃なら広告は勝手に集まっていたが、バブル崩壊から10年後の2000年代には、広告は血のにじむような営業でも獲得できないものになってしまった。
これは、出版社の営業マンや広告代理店の営業マンが悪いわけではなく、スポンサーとなるべきメーカーやショップの売上高が激減しているためである。「無い袖は振れない」というやつだ。

先日、知り合いから聞いた話だが、1985年ごろのバブル期、30歳手前のヒラの銀行員が独立した。
同年代の知り合いと2人で、広告代理店のようなものを起業すると同時に、顔見知りだった某超大手企業の社長に営業したところ「毎月1000万円だけで良かったら広告費を任す」と言われたそうで、起業直後に早くも年間1億2000万円の売上高を確保したことになる。
「さすがバブル」としか言いようがない。
現在ではこうはいかない。各雑誌とも1ブランドから30万円の広告料を得るために必死である。
30万円の広告料でも出さないブランドは出さないし、出せないブランドは出せない。(無い袖は振れないから)

こう見ると、バブル崩壊までは、たしかに出版業は「金のなる木」だったといえる。
しかし、バブル崩壊以降、さらにリーマンショック以降は、すっかり「儲からない職種」となってしまった。

出版の「文化産業」的側面に憧憬を抱く、異業種の経営者は多い。
今後も異業種からの参入はあるだろうと思う。しかし、くれぐれも「大儲けできる」とは考えない方が良い。
あくまでも「文化産業」に、見返りを求めず「投資」する程度のスタンスでないと、期待が失望に変わってしまう。

余談だが、「出版は儲からない」というブログを書いていて、気が付いた。
現在は、アパレルも「儲からない業界」である。その出版とアパレルの両方に足を突っ込んでいる自分は、二重に儲からない立場にいるようだ。

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