日米ともに従来型ファッションビジネスが行き詰まりを見せ始めたことから、「反トレンド論」みたいなものを見る機会がある。

米国でいうなら、それは「ノームコア」というトレンド(笑)になり、日本もそのトレンドを輸入した。

「トレンドに踊らされずにベーシックな服を着よう」という「トレンド」がノームコアだから、反トレンド論者がノームコアという「トレンド」に飛びつく構図はちょっと笑えて来る。

彼らは「トレンドとはビジネス目的で形成されているものだから、それに乗るのはアホらしい(意訳)」という主張をしているが果たしてそうだろうか?

現代ファッションでの「トレンド」が作られているということは否定しない。
特に流行色協会とやらが、2年前から設定する「トレンドカラー」なんて最たるものだ。
2年前に流行色を設定するとか意味わからん。それこそ「利権の塊」じゃないのか。

それはさておき。

しかし、衣服に流行があるというのは、今に始まったことではない。
いつの時代にも衣服の流行というのは存在する。
もうちょっと正確にいうと「衣服の流行り廃り」は古来から存在している。

そうでなければ、我々は今、この服装を着用していない。

近年のトレンドはたしかに人為的な側面はあるが、それでもままならないこともある。
「トレンド最右翼」とみなされていながらさっぱり売れなかった服も珍しくない。
また、予想外の商品がトレンドに浮上することもある。

このあたりの流れから考えると、トレンドは決して人為的に作られたものだけではなく、自然発生的要素もあるといえる。

ローマ帝国時代、為政者はトーガと呼ばれる長い布を体に巻き付けていた。
まあ、シーツを体に巻き付けているのを想像するとだいたいイメージできるのではないかと思う。

ローマ時代のトーガ

あんなもんにトレンドやファッションが存在するのかと普通なら思うが、それがそうではなかったらしい。

塩野七生さんのベストセラー「ローマ人の物語」(新潮社)によると、あのトーガにすらトレンドやファッションが存在したらしい。

どこをどう折り返して、ヒダを作るかとか、どれだけ布を余らせるかとか、シワの作り方・ヒダの作り方がカッコイイとかそういう価値観があったという。

塩野七生さんによると、ユリウス・カエサルはそのトーガの着こなしでファッションリーダーだった(意訳)という。

塩野七生さんの「カエサルLOVE」は有名だから、幾分か割り引くとしても、トーガの着こなしに「イケてる、イケてない」という価値観があったというのが驚きである。

要するにローマ帝国時代からトレンドはあったということになり、それは決してノームコア論者が言うような「ビジネスを背景」としたものではないということがわかる。
何せあの当時は今のようなファッションビジネスは存在していなかったのだから。

我が国でもそうだろう。

直垂や狩衣が今に生き残っていないのはなぜだ。
流行り廃りがあったから、それらは今の和服・呉服には残っていないのである。

江戸時代だって様々なトレンドがあったようで、男性の月代の剃り方だってその時々のトレンドがあった。

結局、今のファッションビジネスがあってもなくても洋の東西を問わず、人間が存在する限り、トレンドは存在するということになる。

つまるところ、トレンドや流行り廃りのサイクルが早いか遅いかの違いだけではないのか。

だから、反トレンド論というのはその大半が、自分のビジネスを拡大するための「単なるポジショントークにすぎない」と当方は見ている。

ところで、アパレルビジネスを総括したような記事では「最近、トレンド品を高額で販売する手法が通用しなくなり、アパレルは苦戦に転じた」というような意味のことが書かれてあるが、そんなビジネスモデルはどうなのだろうか?極めて非合理的ではないかと思う。

大学卒業後就職した洋服販売チェーン店は、渥美俊一氏のペガサスセミナーの流れを汲む会社だったので、そういう本を何冊か読まされたし、社内勉強会でもそこでの話題が出た。

そのときに「流行り廃りが緩やかで長期間使えるベーシック品は高額で、商品寿命の短いトレンド品は買いやすい廉価で販売する。これが消費者利益だ」という内容を習ったと記憶している。

この考え方は非常に合理的で論理的だと感じる。

ここでいうトレンド品とは、95年当時のナイキエアマックス95みたいな特定の品番への集中した人気ではなく、例えば「今季はワイドパンツが流行している」というような広い商品群を指している。

メンズで言えば、紺ブレなんかはディテール変化が緩やかだから比較的高価格に設定しても理屈には合う。一方、ガウチョパンツなんていうのは一過性トレンドだから買いやすい値段で販売する方が理論的だろう。

アパレル企業やブランドが衰退した理由はいくつもの複合的要因が複雑に絡み合った結果だと思うが、「トレンド品を高く売る」という非合理的なビジネスモデルもその一因だといえるのではないか。そして、ノームコアというトレンドに飛びついた反トレンド論者wwwwが反発しているのはそういうビジネスモデルに対してではないかとも思う。

我々一般人は、過度なトレンド崇拝論にも過度な反トレンド論にも耳を傾ける必要はなく、合理的に論理的に服を選べばよいだけである。

noteで有料記事を更新しました~♪

アパレル業界は丸投げ体質か?
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n7d4a58f99afe

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/