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南充浩 オフィシャルブログ

ジョガーパンツ風ジーンズで生じている「織物」と「編み物」の錯誤

2017年9月15日 ジーンズ 0

今日はかなりニッチでミクロな話を。
衣料品や生地で、誤解が生じやすい原因の一つとして「名称の定義」があやふや、誤って使われやすいということがある。
例えば、ディーゼルが先行発売し、他社が追随してあっという間に消費者にも浸透したジョガーパンツ風のジーンズ。
通常のストレッチジーンズよりもキックバック性の高いストレッチデニム生地が使用されている。
ウエスト部分がゴム入りだったり、裾がリブ使い・ゴム入りになっていたりというデザインが多いので、着想の元ネタはいわゆるスエットのズボンだったと考えられる。
スエットのズボン風のジーンズがあれば面白いんじゃないかという発想ではないかと想像する。
デニム生地にもストレッチ入りは普及していたが、スエットズボンのリラックス感を再現するためには通常のストレッチデニム生地では不十分でもっとソフトで伸縮性があることが求められる。
そこで、当初の業界には二つの商品があった。
●ディーゼルのジョグジーンズのように、あくまでも織物であるデニム生地で伸縮性の高さとソフト感を追求した商品群。
●もう1つは、スエット生地(編み物)をデニム風に見せた商品群。
とこの2つである。
当初は、デニム風スエット生地を着用した商品群がけっこう店頭に出回っていたが、今はほとんど消えた。
理由は、スエット生地(正規名称は裏毛)はいくら見た目や色合いをデニムに似せても、所詮は編み物なので、ヒゲ加工を施した際にもし、1本でも糸が切れるとそこから穴が拡大して破れてしまうという欠点がある。
また、織物のデニム生地と異なり、ヒゲ加工を施してもメリハリの効いたヒゲが表現しにくいという欠点もあった。
 
そのため、ディーゼルのジョグジーンズに追随したデニム生地使用の商品群が現在の店頭ではほとんどとなっている。
デニム風スエット生地の商品が根絶されたわけではないが、それはあくまでも「デニムっぽいスエット」として商品デザインされていて、デニムの代わりにはなりえていない。
 
各店頭をざっと見まわした感じでいうと、ディーゼルはじめエドウイン、ユニクロとほぼすべてが「ニットデニム」とか「ジョガーパンツ」とか名乗っていながら織物であるストレッチデニム生地を使用している。
だから、もともとは「デニム風ニット(スエット生地は編み物だからニット)」だったのが、現状は「ニット風デニム生地」へと逆転しているのである。
「ニットデニムパンツ」ではなく「ニット風デニムパンツ」が正しい。
まあ、以上のような状況を頭に入れて、続きを読んでいただきたい。
しかし、業界人でもこの「ニット風デニム生地(織物)」と「デニム風裏毛生地(編み物)」の区別ができない人が相当数存在する。
それは、製造方法の違いだけでなく、見た目でも判別できていない。
例えば、名実ともに国内ナンバーワンブランドといえるユニクロでさえそうだ。
現在、ユニクロは「イージージーンズ」というソフトでストレッチ性の高い生地を使用したジーンズを発売している。
そのソフト感、ストレッチ性はほとんどスエットやTシャツなどと変わらないので、ニット(編み物)のように感じられる。
生地の裏面を見ても、パイル状っぽくなっているので、トレーナー類と同じ裏毛生地なのかと見誤ってしまう。
しかし、このイージージーンズに使われている生地はれっきとした「織物」なのである。
経糸と緯糸で構成された織物だ。
純然たるデニム生地ではなく、二重織の技術を応用したデニム風織物というのが正式な生地の説明になる。
それをユニクロでさえ「ニット生地」と認識しているようで、「裏地パイル」と説明してしまっている。
それは弛んだ緯糸で決して、タオル生地のような「パイル」ではない。

ユニクロのイージージーンズ


イージージーンズに使用されている生地の裏面が白くて裏毛状になっている理由は、
1、二重織なので表面と裏面に出てくる色や柄が異なる
2、ループ状に見えるのは緯糸が弛んでいるから。
それは不良品ではなく、ストレッチ性とソフト感を出すためにわざと緯糸を弛ませている

というこの2つである。
実は同じ技法で織った二重織り生地でも緯糸をもっとピンと張ることで、裏面の見え方はまったく異なる。

過去の他社製品に使用された二重織りの裏面


しかし、ピンと張るとソフト感とストレッチ性は幾分か損なわれる。
結局どこまでソフトにするのか、ストレッチ性を高めるのか、で緯糸の張り具合を変えるのであり、それを考えることが本来の商品企画である。
ソフト感とストレッチ性を幾分か殺しても良いのか、逆に高めたいのか。
ならそれを実現できる生地はどのように織るのか。緯糸は弛ませるのか張るのか。
それが企画の仕事だ。
ユニクロでさえ見分けができないということは、そういうことをすべて生地問屋や生地メーカー、製造業者に丸投げしているから、わからないのである。
かくして、安易な誤った説明が流布され、消費者も混乱するし、メディアも混乱する。
だからファッション、衣料品業界は「ええかげん」とみなされがちになる。
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アパレル業界は丸投げ体質か?
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