製造業者がフリーライダーになろうとした話
2017年9月6日 産地 0
国内の産地や製造加工業者からは、ブランドにひどい目に合わされたという話をよく聞く。
例えば、無断返品されたとか、商品の未引き取りがあるとか、難しい仕様なのに納期が短かったとか、サンプルを渡したら他の安い工場にコピーさせたとか、そういう類の話は掃いて捨てるほどある。
その一方で、ブランド側からも産地や製造加工業者の取り扱いに困るという話もある。
こちらは大概が、産地や製造加工業者がブランドの製品デザインやマーチャンダイジングに口をはさんでくることだ。
もちろん、製造業者の見地から、生地や縫製、その他仕様についてアドバイスすることは必要だし、それはブランド側にとってもありがたい話で、実際に、製造業者のアドバイスによる改良があったから商品化できたということはけっこうある。
これは理想的な取り組みだといえる。
しかし、こんな困った例もある。
先日、あるデザイナーから相談を受けた。
相談内容はこうだ。
「新しいブランドを立ち上げるために製造業者と何度もミーティングをしていたら、業者が『いろいろとアイデアが湧いてきた』と言い始めて、業者自身がデザインした商品を新ブランドのラインナップに差し込もうとし始めた。何度断っても聞き入れようとしない」
とのことだった。
当方は、即座に「それは製造業者のタダ乗りだから、その業者を切るべきだ」と返答しておいた。
この製造業者は根本的に勘違いをしている。
というか勘違いしかしていない。
まず、第1に、ブランドの立ち上がりはブランドコンセプトに沿った商品のみを展開すべきで、他の異なるテイストの商品を差し込むべきではない。
立ち上がりで商品のテイストが乱れれば、ブランドとして離陸できない。
そのブランドが成長し、拡大した場合には、そういう「異なる」商品をアクセントとして差し込むこともできるが、これからスタートするブランドにそういうことをすべきではない。
次に、製造業者はあくまでも製造業者でしかない。デザイナーではない。
個人的にこの製造業者が悪質だと思うところは、デザイナーの新ブランドにタダ乗りしようとしているところだ。最近流行りの言葉で言うとフリーライダーだ。
便乗である。
もし、製造業者にアイデアが湧いてきて、そのアイデアと自分のデザインで勝てると思うなら、自身のブランドを立ち上げて売り出すべきである。
売れる自信がないからデザイナーのブランド・アイデアに便乗、タダ乗りしようと思っているだけのことだ。
しかも、業者にアイデアが湧いたのは、デザイナーの発案に触発されたからで、言ってみれば二次創作のようなものである。
二次創作を本家の創作者に押し付けるという態度はお笑い種でしかない。
実はこの手のことは、今に始まったことではなく、昔から産地や製造加工業者にはけっこうあった。
「父親の時代には『ワシはセンスがあるから~』と言って自分がデザインした商品を他社のブランドに差し込もうとしたことは珍しくなかった」という製造関係者もいる。
センスがあるなら、自分でブランドを立ち上げるべきであり、何を寝言を言っているのかと呆れるほかない。
国内の産地や製造加工業者は衰退・減少しており、自社製品の開発が生き残りの一つの方法だとみなされている。
自社製品開発はかなり難しい。そう簡単に収益化できるものではないし、下請けしかしてこなかった製造加工業者にそのノウハウはない。
それゆえ、今後はこういうブランドにタダ乗りしようとする業者は昔よりも多く出現するのではないかと考えられる。
彼らは意外に狡猾なところがあるから、圧倒的戦力をそろえている大手ブランドにこの手のことは絶対に仕掛けない。仕掛けるとすれば、力の弱い小規模零細ブランドに対してである。
小規模零細ブランドや小規模零細デザイナーは注意が必要だ。
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