「作ってくれる人に申し訳ないと思わないのか」というのは、先日、報道されたルミネ社長の言葉だが、先日も書いたようにこの言葉にはナンセンスさしか感じない。

「産地保護のためにセール後倒し」

とか

 さんざん、ウェブで先行値引きをやっておきながら、「実店舗のセール後倒し」

とか

以前からルミネの社長の言動は全く賛同も共感もできない。
だれがこの人を支持しているのか疑問しか感じない。

まあ、それはさておき。

繊維製品、伝統工芸品、その他もろもろの製造加工業者は星の数ほどあり、下請け仕事が激減している彼らが志向してるのは、自社ブランド開発・自社製品開発である。

これは彼らが生き残るためには不可欠な取り組みとなっている。

しかし、彼らが成功したケースはほとんどない。
絶対に失敗するとは言わないが、どうだろうか、体感的に8割は失敗しているのではないかと思う。
他業界のことは浅学菲才にしてわからないから、繊維製品に限れば9割前後は失敗しているのではないかと感じる。

彼らの失敗する最大の要因の一つは、「売る場所がない」ことである。
せっかく作ったのは良いが、売る場所を持っていない、売る場所とのつながりがない、ことが彼らのオリジナル製品開発を失敗に導いている。

もちろん、作った物が全然ダメな場合も多い。
いわゆる「作り手気質丸出し」の自己満足商品も多い。
しかし、そうではない商品が出来上がる場合もけっこうな割合であるのだが、そういう商品が売れないのは、彼らに売る力・売り場とのつながりが全く欠如しているからである。

繊維業界をこれまで跳梁跋扈してきた旧型コンサルタントの多くがブランド開発で成功に導けなかった最大の要因が、旧型コンサルタントの多くが売り場とのパイプを持っていないことである。

商品のデザインやら、販促のやり方やら、そういうことを指導できても、出来上がった商品を売り場に持っていく力・人脈がない。だから、いくら良い商品が出来上がっても、製造加工業者は離陸できずに終わる。

産地ブランドでも多くの場合は、3年くらいやって、あとは記念品として開発した商品が残るという結果である。ナンタラ産地組合の事務所に行けば、過去の記念品がところ狭しと飾られている。

ほとんどの場合は「作ってお終い」というのがこれまでの実態だった。

で、こういう製造加工業の現実を見ると「作ってくれる人に申し訳ない」どころか、作ったは良いが売り先のない人の方が数多くおり、作るよりも売ることの方が大変だというのが実際のところといえる。

だから、ルミネの社長の考え方はおかしく、逆に売り場の人間は「こんなダサい商品作って、売ってくれる人に申し訳ないと思わないのか?」くらいを言ってもばちは当たらない。

製造加工業の有力なコンサルタントとして中川政七商店が注目されている。

https://medium.com/to-nine-blog/nakagawamasashichi-1-135cb582a248

ここにも記事が掲載されているが、中川政七商店が重宝がられているのは、自社で売り場を持っているからという要因が大きい。

もちろん、商品づくりのアドバイスも優れているとは思うが、出来上がった商品を売る場がすでに中川政七商店が持っているということが強い。

直営店があり、ウェブ通販がある。
あと百貨店や専門店へ卸すこともできる。

これまでの旧型コンサルタントが持ち合わせていなかった機能である。

これと似たような機能を持っているのが、セメントプロデュースデザインで、直営店はほぼ無いに等しいがウェブ通販、百貨店・専門店への卸売り、ポップアップショップはある。

いずれにせよ、これまで、繊維産地や繊維の製造加工業が、コンサルタントやデザイナーとの協業をやってもほとんど成功しなかったのは、「売り場」へのアプローチができなかったためで、現在注目されている新型のコンサルタントやプロデュース業は自ら「売り場」を備えている。

傍から見ていたら、「己が作らせた物を己の売り場で売って二重に儲けてすごいな」と思ってしまうのだが、製造加工業者からすると「これまでは売り場がなかったが、今回は売り場もセットになっていてありがたい」ということになるらしい。

感謝されながら二重に儲けられるというのは、何ともはや、美味しいシステムとしか言いようがない。

「売り場」を持たない旧型コンサルタントや旧型プロデューサー、旧型デザイナーは今後、ますます食い扶持を減らされることだけは間違いない。

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中川 政七
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