そういえば、先日、「ファッション業界に若い人が入ってこないのが問題だというが、それよりも昔はどうして若い人が入ってきたのかを考えてみてはどうか?」という意見を目にした。

昔はどうしてファッション業界に若い人が大勢入ってきたのか?
これはいろいろな要因があって、当方一人で考え付くのは限界があるが、思いつくままに挙げてみる。
あとは各人で補足してもらうとありがたい。

1、成長産業、もしくはカッコイイ産業だと社会がみなしていた
2、今に比べて若い人の人口が多かった
3、ドンブリ勘定の横行する緩い業界で入り込みやすかった

ざっとこんなところではないかと思う。

1についてだが、戦後直後のガチャマン(ガッチャマンではない)時代、高度経済成長期、バブル期と繊維・ファッション産業は金回りの良い業界だった。

金回りの良い業界に人が集まるのは今も昔も、どこの国でも変わらない。
金回りが良いということ自体が人を集める装置となる。

ガチャマンというのは、紡績や合繊メーカー、織布工場などの素材メーカーが活況だったころで、ガチャと織機が動けば、万のカネが生まれるからガチャマンと呼ばれた。
1950年代のことである。

その後、大量生産・大量消費による既製服ビジネスが生まれ、アパレルメーカーが花形成長産業となった。何しろ、敗戦によってみんなが物を持ってない時代だから、作れば売れた。
とくにカジュアル洋服はこれまで戦前・戦中を通して日本には存在していない商品だったから、作れば売れたのは当たり前だ。
初期のiPhoneが高値でも飛ぶように売れたのと同じである。

70年代の高度経済成長によって国全体が経済成長し、人々の暮らしが上向き、80年代にはバブル景気を迎える。

このころまでは、各人のタンス在庫は少なかったし、経済成長で国全体のムードが明るかったから、少々高い服でも売れた。今の中国や東南アジアと同じである。

バブル崩壊直後も不況感はそれほど強くなかった。
世間のムードが変わったのは97年の山一証券・北海道拓殖銀行の倒産からである。
大手金融が倒産する日が来るとはそれまでは多くの人は思っていなかった。

今の我が国に70年代・80年代のような洋服の売れ方を期待するのは間違っている。みんなかなりのタンス在庫を抱えているので、今後、我が国の景気がどれほど回復しようとあんな買い方は二度と戻ってこない。

まあ、バブル崩壊までは、アパレルというのは成長産業・花形産業だとみなされていた。

この「みなされる」という非常に大きな要因で、時代によって同じ職業でも「みなされ方」が異なる。

先程の提起をした方は、35歳くらいなのだが、その年代になるとかつて横行した「デモシカ教師」をご存知なかった。

現在だと、教師や地方公務員は手堅い職業として人気が高いが、かつて、高度経済成長期やバブル期は、優秀な学生は給料がうなぎ上りの民間企業に就職してしまい、地方公務員や教師は、落ちこぼれや変わり者が「教師(地方公務員)にシカなれない」「教師(地方公務員)にデモなろうか」という感じで職に就いたので、デモシカと呼ばれた。

今とは「みなされ方」が180度、いや540度違っている。

繊維・アパレル産業もその当時と今では全く「みなされ方」が逆転してしまっている。

2についてだが、年代別の人口の多寡もあるのではないかと思う。

当方は1970年生まれだが、その年には193万人が生まれている。
73年生まれは210万人弱もいる。

http://shouwashi.com/transition-numberofbirths.html

一方で、就職を控えた96年生まれは120万人しかいない。

73年生まれと比べると約半分である。
ということは、単純に人口だけで考えても各業界へ就職する新卒は大きく減って当然といえる。

ちなみに47年生まれ・48年生まれはそれぞれ270万人弱ずつもいるし、52年までは毎年200万人をはるかに越える人口が生まれている。これがいわゆる団塊の世代である。

新卒の人口は年々減っているが、人気の職種・業界への競争率は高いままである。
例えば地方公務員なんて逆に競争率は年々上がっている。

となると、その割を食って志望者が減る業界が出てくるのは当然で、その一つがアパレル業界だといえる。

また、これは大先輩のご指摘だが、高度経済成長期からバブル期にかけて、我が国は重厚長大産業や金融業が発達した。そのため、優秀な学生はそちらに就職するようになり、その傾向は今も続いているともいえる。
産業間の人材獲得に繊維・アパレル業界は敗れ去ったということである。

それでもバブル崩壊までは就職者数が多かったというのは、新卒人口が多かったからだろう。
また、97年ごろから始まる就職氷河期には、優秀な学生でも企業には就職できなかったので、不承不承アパレルへ流れてくることもあった。
非正規でやるよりは、不承不承ながらアパレルでも正社員になった方が良いという判断で、その判断自体は間違ってはいないと思うが。

3については、本当にかつてはドンブリ勘定な業界で、その分、独特の緩い雰囲気があって、低学力の学生でも入り込みやすいということがあった。

しかし、今はかなり厳格に数値管理されるようになり始めており、「私、数字嫌いやねん」とか「俺、分数と小数の計算ができないっすよ」というような学生が入り込みやすい雰囲気ではなくなっている。分数と小数の計算は必須である。

企業側もよほどの事情がなければ、そんな低学力の学生を採用しようとは思わない。

これらの要因が重なりあって、アパレルには若い人が入ってこなくなっている。
じゃあどうすれば良いのかというと、各社が自助努力するしかあるまい。
決算実績を伸ばして、待遇を良くする。それしかない。

逆にいうと、ファッション業界に若い人が入ってこなくなったというのは、果たして問題なのかという疑問もある。

不人気産業に人が集まらないのはアパレルに限らず、当然であり、そういう産業はいずれ消えている。そうでなければ、いまだに江戸時代や明治時代の職種が今でもすべて残っているということになる。

人間は裸で生活するわけにはいかないので、今後も衣料品業界がゼロになることはない。しかし、不要な企業やブランドはさらに淘汰されることになる。それを回避したいなら、各社が自助努力するほかない。

若者が業界に集まらないのは若者に問題があるのではなく、業界の方に問題があるからだ。

今のアパレル業界は、低学力者にとっては入りづらく、高学歴者にとっては入る魅力が少ない業界ということなのだろう。

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