洋服の値崩れを防ぐことについて、その防衛策として「供給量を減らす」ことが業界から提案されるが、実現は難しいのではないかと思う。

まず、これを提案している人々が、どちらかというと小資本だったり、負け組に属していたり、する場合が多い。

小資本や負け組の論理では、大資本の論理を止められないから、グローバルブランドや国内の勝ち組大手企業の供給量が今後、激減することは考えにくい。
良くて微減、少なくとも現状維持だろう。

じゃあ、そういう小資本組や負け組が示し合わせて、供給量を削減したらどうか?ということになるが、これは恐らく独占禁止法に引っかかるのではないかと思われる。
当方は法律にはあまり詳しくないから、詳しい人がおられたらご教授いただきたい。
多分、カルテルだとかトラストに当たるのではないかと思う。

だからこれも現実的ではない。

また、業界内の事情に目を向けると、近年、アパレル企業の倒産、衣料小売り店の倒産・廃業が相次いでいる。企業数が減るということは供給量も減ると一般的に考えられがちだが、業界内の特性として、倒産企業からは何社も独立ブランドが生まれる。

例えば、業界にはVAN倒産後に独立したブランド、企業がいくつあるのか?

それと同じように、アパレルや小売店が倒産・廃業すると、そのメンバーがそれぞれ独立してまたアパレル企業や小売店を始める。
最近だとOEM/ODM事務所を始める人も多い。
それぞれ個々の企業規模は小さいが、業界内のブランド総数は逆に増えるくらいだ。

1社が倒産すれば、そこから5~10社くらいは零細アパレルや零細ブランドが生まれる。

となると、業界全体の供給量はあまり減らない。逆に増えるくらいではないかと思われる。

それに、実際のところ、国内の流通総数は一時期(たぶん2014年ごろ)41億点だったのが、最近では39億点に減少している。
2億点くらいは3年間で減少しており、そういう意味では不振各社の生産調整・在庫調整が進んだのではないかと思う。

以前、日経MJの紙面でイシキタカイ系wの某ファッション専門学校生が、「一枚から服を作ればよいのに」と語ったことがあるが、既存の製造システムでは不可能である。
これに類した「イシキタカイ系のクリエイターw」も業界には多く、彼らの共通特徴として国内の製造加工業の保護・重視を訴えるが、「一枚から作る」と「国内の製造加工業の保護・重視」は矛盾する事柄で両立は不可能である。

中国や東南アジアの最新設備の工場と比べると、国内各工場の生産能力は少ないが、それでも国内各工場とて大量生産システムで運用されている。

織布ならたくさんのメートル数を織れば織るほど、1メートルあたりの生地値は安くなる。
染色も同じ。たくさんの数量を一気に染めれば染めるほど個々の染色加工賃は安くなる。
縫製も同じ。たくさんの枚数を縫えば縫うほど1枚当たりの縫製工賃は安くなる。

近年は国内工場への注文が減っているのでミニマムロットは下がっているとはいえ、1枚から縫います、1メートルから織ります、なんていう工場はサンプル工場以外存在しない。

となると、イシキタカイ系wがいうように「1枚で作る」システム確立を標榜しつつ、「国内の製造加工業を保護しろ・活性化しろ」というのは二律背反で、両立できないことがわかる。

国内の製造加工業を保護・活性化したいのなら、ある程度の数量を継続的に作らせ続けなくてはならない。

たまたま2017年7月だけ100枚の製造を注文してめでたしめでたしとはならない。

何年間も毎月100枚ずつの製造を注文しなくては工場を救ったことにはならない。
2017年7月だけの注文は単なる「スポット」でしかない。
スポットで「国内の製造加工業に貢献した」と思うのは単なる自己満足にすぎない。

洋服の値崩れを食い止めたいなら、個々の企業・ブランドが厳密に希望的観測を排除して「売り切れる」製造枚数をはじき出し、定価か少しの値下げだけで「売り切れる」販売施策をとるほかない。

各社・各ブランドは、製造枚数の設定が甘くないかを再度確認すべきだし、販売方法が本当にそれでよいのかどうかを再度確認すべきだろう。
それができなければ、洋服の供給量は減らないし、値崩れは永遠に止まらない。

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ユニクロ対ZARA
齊藤 孝浩
日本経済新聞出版社
2014-11-20