製造加工業が下請け脱却を目指して、自社オリジナルブランドを立ち上げたり、小売店を立ち上げたりする事例が多く見られるようになり、それは企業存続のためには正しい方針だと考えられている。

もちろん、筆者もその考え方には賛成だが、それでもやっぱり自社オリジナルブランドを立ち上げて軌道に乗せるのは難しいと、改めて感じる。

先日、泉州の杉友ニットが破産申請をした。

杉友ニット(株)(大阪)/破産手続き開始決定
http://n-seikei.jp/2017/06/post-44479.html

ニット工場としてはそれほど知名度が高かったわけでもなく、売上高が大きかったわけでもないが、このニット工場はいち早く、自社オリジナルのニットブランドを展開していた。
「タップルーツ」というブランド名でだ。

このブログでも以前に採り上げたことがあった。

新事務所に移転してから1度お邪魔したが、その後、あまり行き来がなくなってしまい、ここ3年くらいは近況が聞けないでいたから、直近の状況がどうだったのかはわからない。

新事務所に移転した直後までは、自社製品を製造しつつ、工場としては他社ブランドの製品の製造を請け負っていたという二刀流の構えで活動していた。

「タップルーツ」も自社ブランドとはいうものの、卸売りが基本で、卸売り先の店舗の別注商品や他社ブランドの別注商品も積極的に受けていた。
また、ネット販売も楽天市場をメインに行っており、2002年ごろからネット販売を開始していた。
2002年というと今から15年前で、そのころに衣料品をインターネットで販売するなんてことは、業界の大多数が否定的に見ていた時期だ。

業界が猫も杓子も「ネット販売」と言い始めたのは2010年以降のことだから、先見の明はあったといえる。

しかし、それでも倒産してしまった。

自社オリジナル商品を開発しながら、他社の製造も請け負うというのは、いわゆる自立化のお手本みたいな取り組みであるし、2002年から楽天市場でとはいえ、ネット販売に着手するのも先見の明があった。

恐らく、今現在でも産地企業が、コンサルタントに相談するとこれと同じプランを提示するだろう。
違うのは楽天市場はあまり勧めないという部分だけだろう。

自立化のお手本みたいな取り組みを行っていても経営破綻に追い込まれてしまうということだ。

直近の状況がわからないから、数年前までの取り組みを思い返してみる。

上に書いたような取り組みは変わらず続けていた。
その取り組みから次の段階に進めなかった(進まなかった)というのがビジネス的に苦しくなったのではないかと想像している。

また、ブランド名、工場名の知名度があまり高まらなかった(高める取り組みが少なかった)ことも事業が好転しなかった原因の一つではないかとも思う。

自社ブランドを開発して卸売りしつつ、他社ブランドの別注商品も受ける。
また工場はこれまで通り他社ブランドの製造も請け負う。

こういう形態はこの15年間くらいである程度完成していたと考えられるが、そこから次の段階への移行ができなかったと断続的に見ていて感じる。

しかし、言うは易く行うは難しで、従業員数も少ない中では、次のことに取り組む(取り組ませる)のは容易ではない。どうしても目の前の日々の業務をこなさねばならないから必然的に従来通りのルーチンワークに比重の重きを置くようになる。

そのルーチンワークの中で少人数で新しいことにはなかなか取り組めない。

このルーチンワークに埋没してしまえば、それは製造業の自立化事業ではなく、単なる卸売り型ニットアパレルになってしまう。
小規模な卸売り型アパレルが苦戦しているのは業界全般に共通した話なので、その状況に巻き込まれてしまう。
出自が工場だとかは関係ない。

小規模な卸売り型アパレルが苦戦している状況に置かれてしまう。

それにしても、製造加工業者の自立化事業とはなんと難しいものか。
自社オリジナルブランドを開発してお終いではないのである。
開発したあとは、アパレルブランドとしての舵取りが求められ、その舵取りを間違ってしまえば、いかに模範的なモデルを作り上げようとも、経営は破綻してしまうのである。

繊維産地に向けて発信するコンサルタントの多くの主張を見聞きしていると、オリジナルブランドや直営店開設をまるでゴールかのように捉えているケースが多いと感じる。

なるほど、コンサルタントにとってはそれがゴールでその時点で報酬を受け取ってしまえば、お終いなのかもしれない。

しかし、事業者にとってはそこからが新たなるスタートであり、今度はアパレル企業、小売流通業としての企業活動が始まるわけで、その経営に失敗すると倒産に至ってしまう。

今回の杉友ニットの経営破綻は、改めてそのことを感じさせてくれる。

繊維産地の事業者も自立化を勧めるコンサルタントも改めて「そこがゴールではない」ということに思いを致すべきではないか。

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日本の工芸を元気にする!
中川 政七
東洋経済新報社
2017-02-24