ユナイテッドアローズの5月度売り上げ概況が公表されたが厳しい結果だったといえる。

全社売上高は対前期比4・2%減に終わった。
これだけなら「単に苦戦傾向だったのだな」という話だが、全社売上高の中に含まれているネット通販全店合計売上高は対前期比32・5%増と大幅に増えている。

ネット通販が32・5%も伸びているのに、全店売上高は4・2%減に終わっているということは実店舗売上高がどれだけ低かったのかということになる。

ちなみにアウトレット売上高も対前期比12・7%増となっているから、いかに正規実店舗の売上高が低かったかがわかる。

ネット通販が32・5%増、アウトレットが12・7%と伸びているにもかかわらず、全店売上高は4・2%減なのだから、2つのことが浮かび上がる。

1、正規実店舗の苦戦
2、ネット通販、アウトレットの売上高の小ささ

である。

また5月度は小売全店客数も対前期比3・2%減だから、相当に厳しかったといえる。

4月度も傾向は同じで、ネット通販合計が23・9%増にもかかわらず、全店売上高は1・3%減に終わっている。

ユナイテッドアローズの2017年3月期単体の決算では、ネット通販売上高は202億円、アウトレット売上高は170億円となっている。

このときもネット通販売上高は対前期比で39億円伸びているのに対して、小売(実店舗売上高)は3億1700万円縮小している。アウトレットは3億2900万円増えている。

アウトレットの増加を実店舗売上高の減少で相殺して、ネット通販だけが増えているということになる。

昨今、トレンドに流されやすいアパレル業界の経営方針は、「ネット通販強化」「ネット販売比率向上」を金科玉条のように振りかざして、全員で右へならえを繰り広げているが、これの実現は比較的容易である。

アパレル製品のネット通販売上高は各社とも元が低いので、売上高を伸ばすことは比較的たやすい。
例えば、1000万円の売上高を1500万円に伸ばすことは比較的たやすいが、500億円の売上高を600億円に伸ばすことはかなり難しい。

アパレルブランドの中でもっともネット通販売上高が大きいのがユニクロで、400億円超ある。
当たり前だが他のアパレルブランドのネット通販売上高はこれよりも小さい。

金額自体が小さいものを伸ばすのは比較的簡単だから、各ブランドのネット売上高はしばらくの間は伸び続けるのは当たり前の話である。

また、そうなると自然とネット通販比率は上がるし、ユナイテッドアローズに限らず実店舗売上高は下がるだろうから、ネット通販比率はさらに上昇することになる。

帳簿上の目標はすぐに達成できるだろうが、内実は各社・各ブランドともボロボロになってしまっているという事例は今後珍しいことではなくなるのではないかと思われる。

アメリカではすでに商業施設も含めた大閉店ラッシュが訪れているが、この要因の一つはネット通販の増加と反比例した実店舗売上高の激減だといわれている。

昨年前半ごろまでわが国で「オムニチャネルがー」と叫んでいたオムニチャネラーたちは、おそらくこういう事態を想定していなかったのではないかと勝手に推察している。

実店舗売上高は現状維持ないしは微減で、ネット売上高の大幅増加で、ブランド全体は微増ないし激増という未来図を「口だけオムニチャネラー」たちは思い描いていたのではないか?

しかし、いくら目新しい売り場・売り先が増えても、大衆の可処分所得が増えなければ、どこかほかの売り場での買い物を減らすだけのことである。
これは我が国だけのことではなく、アメリカ人も同じ傾向だったといえる。

ネット通販が増えた分、実店舗での買い物を減らしたというのがアメリカ社会の現在だし、ユナイテッドアローズの4月度・5月度売り上げ概況を見ているとそれと同じ状況であることがわかる。

今後、各社・各ブランドのネット通販売上高は増え続けるだろうが、それに反比例して実店舗売上高は減り続けるだろう。

アメリカと同じくらいの規模で起きるのかどうかはわからないが、商業施設も含めての大閉店ラッシュは近い将来起きると考えられる。
ワールドやイトキン、TSIなどの閉店ラッシュ、地方小型百貨店の閉店ラッシュを見ていると、もうすでに起こり始めているのではないかとも思う。

ネット通販売上高が増えてみんなハッピー.。゚+.(・∀・)゚+.゚

なんて、そんなおいしい話は日本にもアメリカにも存在していない。

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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25