2年ほど前のことになるが、筆者にインポート業界の基本を教えてくださった方が引退された。
最終的には某ブランドの社長にまで上り詰められたが、親御さんの介護に専念するということで退職された。

退職のお知らせをメールでいただいたきり、その後は音信がない。

その方がまだ現場で部長をなさっていた2006年ごろのことである。
そのとき、「インポート業界には最近、20代の新入社員があまり入ってこなくなった」と自嘲気味におっしゃっていた。
理由を尋ねると

1、バブル崩壊後のファッション市場の冷え込み
2、インポートも含めたファッション業界の待遇の悪さ
3、ITなどの成長企業への注目(当時)

などを挙げられていた。

インポートブランドは景気の良し悪しは別にして高級で華やかなイメージがあるから派手好き・ミーハーな若い人がそれなりに入ってくるのではないかと思っていたが、意外に若い人たちは賢明で堅実だった。(笑)

そうこうしているうちに10年以上が経過した。

国内アパレル企業も新入社員が確保できずに人手不足が顕著になり始めたし、昔だと手軽なアルバイトと見なされてそれなりに人手が集めやすかった販売員も求人難に陥り始めた。

理由は10年前の挙げられていたインポート業界と同じだろう。

さらに2015年ごろから大卒の求人倍率は好転し始めており、少子化の影響もあり、今後はさらに大卒の就職は有利になると考えられる。
そういえば高卒の就職率もかなり高くなってきた。
2006年ごろよりも今の方がはるかに就職にとっては有利となっている。

大卒求人倍率1.78倍、学生の「売り手市場」続く リクルート
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ26H98_W7A420C1000000/

こうなると、国内アパレル企業やインポートアパレル企業にはますます人は入らなくなる。
今の状況なら好待遇の大手企業にも入社できる可能性が高まっているのである。

筆者がもし就活生の親なら、間違いなくアパレル業界ではない大手企業への入社を勧める。

以前に大先輩が、「アパレル業界は、業界間競争に負けて人材獲得が困難になった業界である」とおっしゃっていてまさしくその通りだと感じる。

アパレルが業界間競争に負けたのは何も今に始まったことではなく、バブル期から負け続けてきた。

終戦から我が国の経済を立て直す際、最初の輸出品となったのは繊維製品だった。
1ドルシャツが米国に輸出され、貿易摩擦を引き起こした。

「990円ジーンズなんてありえない!」と目を三角にしている自称クリエイターたちはこういう歴史を知らないだけであり、重化学工業が発達していない国は、低価格繊維製品を製造輸出して外貨を稼ぐのである。それが常道である。
我が国だってそれをやって経済復興の礎を築いた。
それを今、他の発展途上国がやっているだけのことである。

その後、我が国は重化学工業へと舵を切り、その後は、金融やITなどの産業に力を入れた。

繊維は国としての重点産業ではなくなり、このころから産業間競争に負けていたというのが大先輩のおっしゃる趣旨である。

アメリカ合衆国だって繊維製造業は脇役となり、金融やIT、機械製品でGDPを拡大し続けている。

昨今注目されているIT系アパレルの成長企業の多くは、業界外から来た若い経営者が動かしている。
産業間の人材獲得競争で勝った業界から来た人なので、アパレル業界たたき上げの人間よりは随分と優秀である場合が多い。

今後、アパレル産業がある程度回復することがあるとするなら、異業種出身者が業界を完全にけん引するようになったときではないかと思う。

70年代~90年代前半の繊維業界黄金期に内部で若い時代を過ごした今の年配層では、成長プランを描くことは決してできないだろう。

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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25