今回はジーンズの話でも。

3年くらい前から「若い人がリーバイスの古着ジーンズを買っている。しかも80年代とか90年代前半の物を」という話をよく耳にする。
40代以上の層からすると、若い人の嗜好が何とも奇異に感じる。

というのは、当時のジーンズは股上が深く、何よりも使用しているデニム生地がのっぺりしていてヒゲなどのアタリ感がまったくでないといういう特徴がある。

これは「カッコ悪いジーンズの象徴」として、少なくともこの20年間とらえ続けられてきた商品だから、30代半ば以上のオッサン層からすると、それを嬉々として買い漁っている若い人の嗜好が奇異に感じられるというわけだ。

そしてこの商品傾向は90年代半ばまで続いた。

ジーンズ、デニム生地の傾向は90年代前半と後半で丸っきり変わってしまうのである。

90年代前半にはレーヨンやテンセルなどの素材を交織・混紡したソフトジーンズブームが起きる。
95年・96年ごろからビンテージジーンズブームが起きる。

ビンテージジーンズブームによって、デニム生地の傾向はそれまでと180度、いや540度変わってしまう。

綿100%の厚くて固い、ヒゲやアタリが出やすい表面に凹凸感のあるデニム生地が喜ばれるようになる。
そしてヒゲやアタリと同時に「タテ落ち」と呼ばれる縦方向へ細かくスジが出るような落ち方が好まれるようになった。

いわば色落ちのメリハリがはっきりくっきりわかるようになる。
ソフトジーンズも含めたそれまでのジーンズの色落ちにはメリハリがほとんどなかった。

そして99年ごろからはローライズジーンズブームが始まり股上が浅くなった。

現在、主流となっているジーンズは90年代半ばのビンテージジーンズブームと99年ごろのローライズジーンズが合体融合したものといえる。

デニム生地に関していえば、95年ごろから「タテ落ち」が王道となって今に至る。
そういう価値観が元になって、80年代・90年代前半のあのジーンズはこの20年間「超ダサい物」と評価されていた。

もうすでにちょうど1年前にこのことを書いているブログがあるからご紹介したい。

ダサ・デニムは、もはや ダサくないのだ。そーなのだ。
http://ameblo.jp/tcd-co-ltd/entry-12147427811.html

先日、あるカジュアルブランドのデザイナーと話をしたが、その際、

「20代~30代前半の若い人が運営しているブランドでは、80年代の『あのデニム生地』が使いたいというが、国内でも中国でも『あのデニム生地』はほとんど製造されていないから困っている」

という話題が出た。

国内のデニム生地メーカーの多くは、80年代のあのデニム生地を作ることを嫌がるし、現在は大量生産を行っていない。また中国のデニム生地メーカーも日本ブランドにその感覚を合わせているから、中国でもあまり生産されていない。

おそらく、日本や中国が技術指導を行っていない東南アジアの工場では作られているのではないかと思うが、どうだろうか。

先に挙げたTCDさんのブログから画像をお借りする。
今のデニム生地と80年代のデニム生地ではこれほど見え方が異なる。
左が80年代のデニム生地、右が現在のデニム生地である。

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色落ちの違いがお分かりになるだろう。

だから、先のデザイナーは、80年代デニム生地を好む若い層を指して、「30代半ば以上と以下では洋服に関する感覚がまったく異なっている」と指摘する。

そういえば、ここ何日間かで20代前半と思しき、若い女性がモロに80年代調のジーンズを穿いているのをちょこちょこ見かける。
生地はもちろん、あののっぺりとしたデニム生地。
形はおへそまで隠れるであろうハイウエストで、それは昨今のデザイン的ハイウエストジーンズとも形状が異なっている。

どう見ても、25年前(四半世紀前!)、筆者が大学4年生くらいの時代の人にしか見えないのだが、それがよしとされる感覚はやっぱりだいぶと異なっているといえる。

どうしてこういうことになったのかというと、20代の人は物心ついたころから、ずっと今のビンテージ調デニム生地を使ったジーンズを見て育ってきた。
40代以上のオッサンは、その商品を「20年前にわざわざ選んで買った」のだが、彼らからすると「当たり前に在る物、なんの変哲もない物」ということになる。

そして、若者にとって記憶にない80年代・90年代前半の「あのジーンズ」は「見たこともない斬新な商品」に見えるのだろう。

オッサン世代からすると、ほぼゴミ屑同然だった80年代・90年代前半のリーバイスの古着が、人気沸騰で品切れ状態になるというのも信じられない話である。

前回も書いたが、老若男女を問わず、「色落ちしにくいデニム」が一定の支持を受け、若者層にのっぺりとしたデニム生地が受けている状況を見ると、これまでデニム生地業界やジーンズ業界が「ジーンズとは」「デニムの魅力とは」と力説してきたことがどうもニッチなマニア層だけのものとなりつつあるように思える。

ジーンズやデニム生地は特別なアイテムや生地ではなく、洋服や生地の一種に過ぎなくなっているということで、今後はますますジーンズやデニム生地への特別視はなくなるだろう。

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