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南充浩 オフィシャルブログ

レナウンの低価格ブランド計画は「隣の芝生」が青く見えただけでは?

2017年4月24日 企業研究 0

 また今年も月に何度かのファッション専門学校での講義が始まったのだが、若い人たちとの業界認識の差に驚かされる。

何かの話の拍子にレナウンという企業を取り上げたのだが、10人くらいの新1年生は全員、レナウンという社名を知らなかった。また2年生もレナウンという企業名を知らなかった。
身の回りの少人数に対する調査なので「若者全体」に敷衍することは難しいが、レナウンという企業は、年配層やレナウン社員が思っている以上に、若者への認知度は低い。

今回も「若者は不勉強」という老害の批判は相手にしない。
なぜなら、業界人でもない若い人が勉強するのは興味を持つ事柄に限られていて当たり前だからだ。

少なくとも彼らの生活においてレナウンはこれまで、まったくかかわりがなかったということだし、下手をすると彼らの親もレナウンの製品とはかかわりのない生活を送っているということになる。

昨日でめでたく?47歳になった筆者でもレナウンの製品を買うことなんてほとんどない。
昨年に4枚1000円のレナウン製のボクサーブリーフを西友で買ったくらいしかない。それ以外のレナウン商品は10年間買ったことがない。

その昔、Jクルーをライセンス生産していたことがあり、その時にバーゲンで1枚か2枚くらいを買ったことがあったかもしれないが、愛用するには至らなかった。
当時、GAPやユニクロが台頭していたので、比較対象すると割高感があった。
またチノパンやらジーンズも製造販売されていたが、リーバイスやエドウインの7900円、8900円ラインに比べても割高感があった。

次に、サイズ感が異様にデカかったことも愛用しなかった理由である。
アイビー調のカジュアルテイストは好きだったが、他ブランドに比べるとサイズが異様に大きかった。
メタボのオッサンをターゲットにしていたのかと疑問を持ったほどだ。

余談だが、レナウンとの契約を解消したJクルーはアメリカで人気ブランドとなったが、現在は巨額の赤字に苦しんでいる。3年くらい前に突然巨額の赤字転落をしたので、それまでの好調は不良在庫を計上していなかっただけなのではないかと疑っている。

現在、レナウンのブランドラインナップは10年前同様にパッとしない。

ステイタス性があって、「憧れ」対象になるのはアクアスキュータムくらいだろう。
シンプルライフもエンスイートもシルバー向けブランドという認識しかない。バッタ屋で投げ売られても買わない。
アーノルドパーマー、プレイボーイは微妙な印象だ。

合併されたダーバンのスーツはそれなりに評価が高いが、それ以外は完全に存在感がない。

業界人ならレナウンという社名はご存知だろうが、注目しているブランドがあるだろうか?
おそらく業界人と言えどもほとんどないのではないか。

そんなレナウンが、SC(ショッピングセンター)向け・ECサイト向けの低価格ブランドを開発すると発表した。

レナウンが低価格ブランド 18年春発売
https://www.wwdjapan.com/411021

薄ら笑いを浮かべながら「へぇ~」と生返事をするほかないのだが、よほどの「仕掛け」が無い限り失敗に終わると予測する。

SC向け・EC向けの低価格ブランドはレッドオーシャンの血の海状態である。

ユニクロ、ジーユー、ウィゴー、H&M、グローバルワーク、センスオブプレイス、ストライプインターの各ブランドなどなど強豪が犇めきあっている。

これらの強豪(競合ではない。レナウンとは比べ物にならないからだ)各社は、良し悪しは別としてローコストオペレーションを確立している。今まで百貨店を主体にしながらそれでも売れなかったレナウンが付け焼刃で参戦して太刀打ちできるはずがない。

格闘技でいえば、これらの強豪は段位や達人クラスで、新参者のレナウンは白帯の入門者だといえ、まともな勝負にはなりえない。

売上高は早期に50億円を目指すと伝えられているが、そこまでたどり着けずに終わるのではないかと見ている。

今回のレナウンの発表を読むと、「百貨店で売れないからSC・EC」という安易な発想が背景にあると感じられる。そんな安易な発想でやれるほど、SC向けの低価格ブランドは甘くない。

強豪はすでにスケールメリットで収益体制を確立できている中で、今からスケールメリットを目指して構築していくレナウンがどれほど不利なのかは、ビジネス経験者なら容易に予測できるのではないか。

また、ECサイトへの言及も今更ジローであろう。
すでにレナウンもECサイトで各ブランドの販売を行っているが、売上高は7億円とか8億円規模にとどまっている。
赤字とはいえ、650億円もの売上高があるにもかかわらずである。

これまでどれほど、ECサイトでの販売に力を入れてなかったか、どれだけ下手くそだったかが明らかである。
それが新ブランドを発売するとはいえ、急にECサイトでの売上高が増えるようにはならない。
ECこそ、よほどの仕掛けが必要で、レナウンという会社の知名度は自社が思っているほど高くないから、知名度で多くの人がウェブ検索をして流入してくれることを期待はできない。

百貨店でも売上高が回復せず赤字転落し、新ブランド開発も成功しなかったため、これまで自社では手つかずだったSC/EC向けの低価格ブランド開発という結論に達したのだろうが、これは単に「隣の芝生は青かった」というだけに過ぎないのではないかと思う。

自らの会社を有名だと過信しているならそれはすぐさま捨て去るべきで、そうでなければ、今回のSC/EC向けの低価格ブランドが成功することはかなり難しいだろう。





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