甲斐性無しの貧乏人たる筆者は普段、百貨店とは無縁の生活をしている。
以前も書いたようにここ10年間近くは百貨店で買い物をしていない。

例外は、大丸梅田店のユニクロで3度か4度買い物をしたくらいで、少なくとも2010年以降は百貨店で買い物をしたことがない。

ただし、仕事上、一応百貨店のニュースなり動向なりはチェックしているが、あくまでも「観察対象物」としてしか眺めていない。

先日、某ファッションアクセサリー大手の役員の方と久しぶりにお会いしたが、今年も100人を越える新入社員があったという。その100数十人中で、百貨店で買い物をしたことがあると手を挙げた人は、1割程度しかいなかったらしい。

10~20人程度だったとのことで、「若い人の百貨店離れはここまで進んでいるのかと驚いた」とおっしゃっていた。

若い人どころか今年47歳になるオッサンだって利用していないのだから、百貨店離れは全年代通じた傾向ではないかと思う。

そのアクセサリーの新入社員の中で百貨店を利用していると答えた人は、何を利用しているかというと「食品」「スイーツ」で、洋服を含めたファッションを利用していると答えた人はゼロだった。

食品は消え物で一度食べてしまえばなくなってしまうから、愛好者は定期的に購入する。
また、食品は衣料品を含めたファッション用品に比べて全般的に価格が安い。

酒とか肉とか魚介の一部には例外があるが、他の食品やスイーツで何万円もするような商品はあまり売っていない。せいぜい5千円とか1万円くらいだ。

一方、百貨店のファッション用品で5000円だと、催事の投げ売りセール品くらいで、ちょっとマシなものを買おうと思うと1万円は軽く越える。

スイーツだと高くても1個500円とか1000円で、2000円を出せば2~4個くらいは買えるから、所得の少ない若い人でも買える。1個500円のショートケーキは高いが、普通に働いていれば月に何個かは買えるが、3万円の洋服を年に何枚も買うことは所得が低い人間にとっては難しい。

そうなると、筆者も含めて百貨店ではファッション用品をなかなか買わなくなるが、スイーツや食品は定期的に買うようになる。

実は、これはファッションを売りにしている伊勢丹新宿本店でも同じで、食品売り場が活況を呈している。
3月に電撃解任された大西洋前社長も昨年夏の取材時には「地下の食品売り場が最近は好評です。ファッションを売りにしている新宿本店なのでちょっと複雑ですが」と答えておられた。

最近、好調だと報じられる大丸東京店もその要因として、地上1階をスイーツ売り場にしたことが挙げられている。

通常の百貨店1階は化粧品売り場だったり、ラグジュアリーブランド売り場だったりするが、大丸東京店はスイーツを中心とする食品売り場にしたことが集客装置となっている。

ターミナル駅隣接という特性もあるのだろうが、実際に大丸東京店を訪れると1階は平日昼間でも活況で、上の階に行けば行くほど閑散としている。
8階あたりは平日昼間だと恐ろしく閑静である。

小売店やブランドには2つのやり方がある。

1、啓蒙活動を行いながら、消費者や顧客のニーズを作る、または誘導する
2、消費者や顧客のニーズに合わせて品ぞろえやサービスを変える

この2つである。
どちらが正しいとはいえないが、即効性があるのは、2のやり方だろう。
1のやり方は時間も根気も必要になる。

今の多くの消費者はファッションよりも食品のほうが興味が高い。
だったらそのニーズに対応して、1階を食品売り場にした大丸東京店のやり方は適切だといえる。

他の百貨店も見習ってもよいのではないか。

何せ、百貨店内にも入店するファッションアクセサリー大手に入社する新入社員全員が、百貨店でファッション用品を買ったことがないという時代になっている。
百貨店で買い物するのは1割程度で、しかも食品とスイーツしか買っていない。
これが現実である。

啓蒙活動を行いながら、需要を喚起しニーズを作るというやり方は否定されるべきではないが、今の百貨店にそれを根気よく続けられる環境があるとは思えない。
業績が下がればリストラが行われ、首切りが行われる。

Jフロントリテイリングは大丸と松坂屋でかつて大規模な人員削減を行ったが、大丸、松坂屋の店舗の中にはさらなる人員削減の計画案を練っている店舗があるという噂も聞こえてくる。

いずれにせよ、従来通りの「百貨店でござい」という姿勢では消費者ニーズを作ることも、沿うこともできない。
そのことは百貨店関係者は自覚すべきだ。