流行がマス層に行き渡ると、新しい流行が生まれる。
この新しい流行は局所的な盛り上がりで終わる場合もあるし、それが新たな定番化する場合もある。

前者は、有象無象の湧いては消える地域限定のストリートトレンドで、数え上げるときりがないが、キャップの内側のタグ(素材表示やメーカーを表記してあるタグ)をわざと出してかぶるという意味のわからないトレンドも昔はあった。どこがかっこいいのかさっぱりわからなかったからマス化することなく消えた。

パンツの腰穿きはマス化したトレンドだといえるが、それを股下30センチくらいまで極端に下げた穿き方は不便な上にペンギンみたいなヨチヨチ歩きになって不格好だったのでマス化することなく消えた。

後者の代表例は、ローライズパンツだろう。パンツの股上は2000年ぐらいに低くなってそれが新定番になった。
パンツの腰穿きも好き嫌いはあるだろうがそれなりに定番化している。

メンズの細身シルエットも2003年ごろにトレンドに浮上して新定番化した。

ニッチ層を狙う極小ブランドならそういう泡沫トレンドに飛びついて商品化するのはありだが、何十億円規模以上の売上高を狙うブランドはマス化するトレンドを選別して商品化する必要がある。

一部の例外もあるが、だいたいは「意味のわからない」もの、「見た目かっこわるい」もの、「似合う人が少ない」ものは、泡沫トレンドで終わりやすいと感じる。
その逆の要素を満たしているものはマス化しやすい。

スキニーパンツも新定番化した代表例だろう。

次のトレンドという声は2年ほど前からあったが、ワイドパンツの着用者が増えたのは昨年秋くらいからだと感じる。2015年の春夏シーズンにはすでにワイドパンツがトレンドだという声が上がっていたが、東京に出張した際に、東京駅、原宿、渋谷あたりで路上観察した限りにおいては着用者はほとんどいなかった。

目に見えて着用者が増え始めたのが昨年秋ごろからだと感じている。

エドウインやカイタックファミリー、ジョンブルなどのメーカーによると、いまだにスキニーパンツの需要は「定番商品」として一定量あるとのことだが、ワイドパンツの需要も増えている。

逆に路上観察していて、気が付くのが、スキニーもしくはそれに類した細身シルエットのパンツを穿いたオッサンの姿が増えたことである。

この場合のオッサンは見た目の年齢が40~60歳くらいの男性を指している。
もちろん、筆者自身もこの中に入る。

どうだろうか、2年ほど前から細身のカジュアルパンツを穿いたオッサンが増えたように感じている。

ジーンズメーカーによると、大手ネット通販で40代男性が買ったパンツの売れ行き1位商品はなんと、スキニーパンツだったという。

それも「かなり細めのスキニー」だという。

今現在、路上観察の範囲では、ワイドパンツ着用者は女性が多い。
女性でも若い世代が中心で、40代以上でワイドパンツを着用している女性は、見るからにファッション好きな人に限られている。

男性のワイドパンツ着用者は圧倒的に10代、20代が多く、30代以上はスキニーもしくは細身パンツである。

逆にいうと、スキニーパンツは本当に定番化してマス化したといえる。
なにせ、40代のオッサンが買った1位商品がスキニーパンツなのだから、どれほどマス化したかわかるだろう。

オッサンは女性、若い男性に比べて、トレンドに飛びつきにくい。
そのオッサンが愛用するようになったということは、トレンドは終わりに近づいており、これは本当の意味で定番化したといえる。

オッサンが愛用するほど大衆化したなら、脱スキニーを考えるファッション好きが増えるのは無理もない。
それが今春夏のワイドパンツ着用者が増えた理由の一つだろう。

加齢なるオッサンど真ん中の筆者もこの3年くらいは細身のパンツばかり買っている。
脚が太いので、レオタードみたいなピチピチのパンツは買わないが、レギュラーストレートより細めのパンツしか買っていない。

こんな風にマストレンドは徐々に、緩やかに移り変わる。

今日までスキニーを穿いていた人が、いきなりワイドパンツだけを穿くようになるなんてことはない。

レディースのかつてのブーツカットパンツだってそうだ。
40代・50代までが着用して定番化してしまうと、2008年からはスキニーがトレンドに浮上した。
2010年ごろに学校の保護者会に行くと、女性保護者はほぼもれなくブーツカットを穿いていた。
30代・40代はブーツカットで、20代はスキニーという別れ方をしていたが、2015年ごろになると、40代ももれなくスキニーを着用するようになった。
そこまでスキニーが行き渡れば次のトレンドに移り変わる。

もう子供たちが大きくなったので保護者会に出ることもなくなり、今の女性保護者はどんな服装が主流なのかわからないが、服装を観察するのはなかなか面白く、世の中のマストレンドの移り変わりが顕著にわかった。

今のワイドパンツが数年後に新定番化するかどうかはわからない。
もし、新定番化するなら数年後に買ってみたいと思う。
これがオッサンの代表的な消費行動といえる。