洋服もその他も含めて、物作りの姿勢は大きく2つに分かれる。

1、従来通りの商品を作り続ける
2、市場の売れ行きに合わせて作る商品・作り方を変える

である。

様々な意見があるのは承知しているが、ビジネスの観点からいえば個人的には2が正しいと考えている。
1の姿勢は否定しない。ニッチ層に向けて作って売るという自覚があるなら。

しかし、1の姿勢を取りながら、「マス層に売りたい」と考えるのはいただけない。
さらにいうと「昔ながらの良さがわからない方が悪い」「マス層に売れてしかるべき」と考えるのはもっともナンセンスである。そういう業者にはまったく共感を覚えない。

例えば、大ヒットしている「カレンブロッソ」のゴム底草履がある。
大ヒットしているといってもユニクロやGUのように百万枚とかそういう数量ではない。
しかし、生産キャパいっぱいの状態が続いている。将来的な不安もあって生産キャパを増やすことはしないそうだが、それがまた値崩れを防いでいるという側面もある。
需要が供給を上回り続ける限り、値崩れは起きない。

ヒットの要因は、コルク芯+革底で作られていた従来の草履をEVA台+ゴム底に改良したことにある。
これで格段にクッション性が高まり、足が疲れなくなった。
また従来品よりは雨でも滑りにくくなった。

要は機能性が格段に向上したということである。

15499_01

和装関係の展示会やイベントに出向いても、この草履の着用者が多い。
普段は「伝統ガー」とか言ってる人も、この草履を履いている。
言ってしまえば、人間は誰しも楽な方が良いのである。伝統か快適さかどちらかを選べと言われたら、ほとんどの人は快適さを選ぶ。もちろん筆者もそうだ。

筆者はマゾヒストではないから、苦痛を我慢する趣味は持ち合わせていない。

カレンブロッソの廣田裕亘社長とは定期的にお会いしていろいろと話を伺うことがあるが、これがヒットしたのは、ご自身でも予想外だったとのことだし、運やタイミングの良さも大いにあったが、伝統に固執せずに機能性を向上させなければ、その運もつかめなかっただろう。

それとあと、履物というところも定期的な買い替え需要を産んでいる。
洋服と違って、履物は地面と直接摩擦するので、絶対に定期的に傷む。
だから補修か買い替え需要が絶対に生じる。その買い替え需要に至るまでの期間は洋服よりも格段に短い。

後から考えればヒットする理由はそろっているのだが、そこにたどり着けたのは廣田社長の話を聞けば聞くほど「たまたまだった」としか思えなくなる。(笑)

それはさておき。

このゴム底草履がヒットすれば、当然、世の中に広まる。
もしかすると、近い将来、草履といえばすべてゴム底草履になってしまう可能性もゼロとは言えない。
そうすると「伝統」の草履作りの技術は廃れる。
不要な技術は廃れても当然じゃないかという考えもあるが、従来の技術を守りたいと考える人もいる。
その存在は否定しない。

そういう人が、従来品を作り続けて「売れなくては困る」「本物の良さがわからない人が増えた」という理屈にたどり着くと思うのだが、そこは大いに疑問である。

例えば、ゴム底草履を収入の柱としながら、そこで得た利益で細々と従来型草履の技術伝承をすれば良いのではないか。
売れる物を作って売って、その収益で伝統技術の継承をするのがもっとも理論的で効率的ではないか。

豆腐のため、ファッションショーにも通う
相模屋食料 鳥越淳司社長
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/269473/033000078/?P=1

ザク豆腐を開発した相模屋食料の社長インタビューが掲載されているが、この豆腐メーカーは通常の豆腐も生産し続けている。
その一方で話題になりやすいザク豆腐やデザート向けのナチュラル豆腐といった「変わり種」を開発している。

どちらか一方だけだと売上高200億円は達成できなかっただろう。
通常の豆腐だけの生産だと面白みもないし話題性もない。需要だってそんなに広がらない。
広報販促の手段はありきたりな「安心・安全」とか「手作り」とか「大豆の本来の味」とか打ち出しに終始してしまう。

この打ち出しは同業他社と同じであり、埋没してしまって消費者には見向きもされない。

他方、ザク豆腐やナチュラル豆腐などのおもしろ商品だけだと、売れ行きが不安定になる可能性が高い。
話題性はあるかもしれないが、大いに外す場合もある。

それを考えると従来品と飛び道具という二刀流は非常にリスクが低いといえる。

繊維やその他商品の物作りも同じではないか。
そこを理解した業者だけが生き残ることになるのは、自然な流れで当然の結末だろう。