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南充浩 オフィシャルブログ

リストラ時には、優秀な人から辞める・優良なブランドから売れる

2017年3月24日 企業研究 0

 瀧定大阪がスタニングルアーをジャパンイマジネーションに売却した。
瀧定大阪は赤字続きのブランド事業の縮小を発表したが、その中にあって、スタニングルアーは優良なブランドだった。売却額は公表されていない。

おそらくスタニングルアーなら欲しいという企業はほかにもあったのではないかと思う。
企業でリストラが行われると優秀な人から先に辞めていくが、それと同じで優良なブランドほど早く引き取り手が見つかるものである。

ジャパンイマジネ、スタニングルアー譲り受け
https://senken.co.jp/posts/STUNNING-LURE-Japan%20imagination

セシルマクビーなどを展開するジャパンイマジネーションならスタニングルアーとのシナジー効果はあると考えられるから、スタニングルアーにとっては瀧定大阪傘下でいるよりも良かったのではないかと思う。

ここ数年瀧定大阪は経営の多角化を目指して、ブランド事業を積極的に買収したが赤字が続いていた。

瀧定大阪がブランド事業を大幅縮小、17年1月期に特損300億円を計上
https://www.wwdjapan.com/338457

オリーブ・デ・オリーブを中心にした消費ブランド事業の2017年1月期の事業見通しは、売上高が前期比15.1%減の87億円、営業損失が22億円(前期は18億円の赤字)、経常損失が22億円(前期は20億円の赤字)、税引前純損失が51億2500万円(前期は21億3500万円の赤字)と、赤字が拡大する見通し。

220億円のデリバティブ取引の大型損失と構造改革費用100億円の計上に伴い、瀧定大阪(単体)の純資産は521億円から221億円に減少、自己資本比率は74.4%から50.6%になる見通し。

という状況にあり、ブランド事業そのものは減収赤字が続いており、その額は増える一方だった。

瀧定大阪はスタニングルアー以外に、オリーブ・デ・オリーブ、ミリオンカラッツ、シアタープロダクツ、ライオンハートなどのブランドがあるが、

この数年積極的にM&Aを進めてきたブランド事業は大幅に縮小。売上高の9割を占め、子会社のスタイレムが展開するテキスタイルとOEM事業に経営資源を集中する。

とのことなので、各ブランドは売却先を見つけるか、独立するか、しなければ縮小や廃止になることは間違いない。現在の規模のままで活動が継続できる可能性は極めて低い。個人的にはその可能性はゼロだと見ている。

だが、関係者の多くはブランドの売却先を探すことはかなり難しいという意見を述べる。
なぜなら、先ほどの記事にもあるように事業自体が赤字だったからである。
赤字だということは経営状態が悪いということになり、現在の厳しい衣料品業界において、わざわざ不振ブランドを引き取ろうという会社は極めて少ない。

「売るんじゃなくて、逆にカネを付けるくらいでないと難しいのではないか」とまで言い切る業界人もいるほどだ。

個人的にはこれらのブランド群は、顧客ターゲット層も商品価格帯も商品テイストもすべて異なっており、シナジー効果を発揮するのが難しい組み合わせだと感じていた。
相互補完にも相互競合にもなりえないので、単に存在するだけということになってしまいがちになる。

本来は本業である生地販売との連動が目的ではなかったかと思うのだが、業界で尋ねまわると、それが積極的に行われた形跡もほとんどない。

そうなると何のための多ブランド買収だったのかと外野のオッサンからすると首を傾げたくなる。

本業との連動も、ブランド間の連動もないとなると、ブランド事業そのものを瀧定大阪がやる意味すらないといえる。

おまけにブランド事業全体で赤字拡大しているということは、商品政策か販売政策、広報販促政策のどれか、もしくはそのすべてが間違っていたということになる。

200億円以上にも上る巨額デリバティブ損失が今回のブランド事業縮小の引き金になったとはいえ、仮にデリバティブ損失がなかったとしても減収赤字続きの実績を見ると、早晩、縮小という結末が待っていたことは変わりなかっただろう。今回の巨額デリバティブ損失によって縮小開始時期が少し早まっただけだろう。

瀧定大阪が抱える残りのブランドはどのような結末を迎えるのだろうか。





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