ほかのこと(ワールドやら三陽商会のことやら)を書こうかと思っていたが、ちょっと予定を変更して、今日はこのブログをご紹介したい。

アウターからスーツの裾が出ているのを見て思うこと
http://www.apalog.com/fashion_soroban/archive/139

要するに、スーツの上に羽織ったコート(ブルゾンも含む)の丈が短くて、ジャケットの方が丈が長い人を良く見かけるという話である。

ひどい場合は、スーツの上にショート丈のブルゾンを羽織っているサラリーマンも少なくない。
かっこいいかかっこ悪いかというと、かっこ悪い。特にブルゾンはダサい。強烈にダサいと思う。

それについての佐藤正臣さんの考察を見てみよう。

通勤時に見かけるサラリーマンのコート・アウターからスーツの裾がはみ出ていることです。それもここ数年はかなりの確立でこれを見かけます。(ときに50%超えてるのではとも思えます。TVドラマでもよく見かける。)

gr6Cs4KinJU

しかしながら、ファッション好きの常識からすると、このありえないことも、私なりに違う視点で見てみると、このようなことを考えます。以下箇条書きすると。

・そもそも、そんなこと気にしない。
・通勤用・プライベート用のアウターを使いわけるほどお金がない。
・長いコートはおっさんくさい。ダサい。(昔の刑事スタイル)
・防寒できれば、なんでも良い。

他にも色々ありますが、こんな推測が成り立つのではないでしょうか?

とのことであり、非常に賛同できる。
一つ付け加えるとすると、ロング丈コートは日常生活において「不便」だという点である。
例えば自転車に乗りにくいし、電車で座席に座るときには尻の下に裾を敷くことになって、シワになりやすい。
階段を上る際には、上の段に裾が擦らないかどうかも気を付けないといけない。

ショート丈、ハーフ丈に比べてめんどくさいことが多い。

だからロングコートは敬遠されるのである。

また、お金のあるなしにかかわらず、通勤用とカジュアル用のコートを分けることに興味を持たない人も多い。
コートとはいささか異なるが、息子がまだ保育園に通っていた時分だから、もう15年ほど前である。

ほかの児童の保護者と顔を合わせることも多かったが、その中に、パジャマと会社の制服しか持っていないというお父さんもいた。
たしかに、朝8時とか9時に出勤して、9時ごろに帰宅してあとは寝るだけという生活を続けるなら、カジュアルウェアはほとんど必要ない。
効率的に過ごすなら、肌着とホームウェア代わりのパジャマ類(スエット上下を含む)、それと会社の制服があれば十分だ。通勤は制服を着ればよい。

週1回か2回の休日を過ごすための服をわざわざ買う必要もない。

良い悪いではなく、こう考えるサラリーマン男性がそれなりの人数で存在するのは事実である。
下手をするとそれがサイレントマジョリティではないかとも思う。

そこで佐藤さんは次のようなブランド側への解決策を提案する。

もしも、私がどこかの紳士服のMD・バイヤーなら、上記の推測を基にこんな手を打ちます。

・長いコートは大幅に商品数を減らす。なくす。
・アウター自体の構成比を減らす。スーツ専用のアウターは作らない。
・着丈はあまり気にしない(MA-1ほどの短丈は作らないが)
・単純にサイズは大きくしないが、パターン・アームホールの調整等でスーツの上に着られるようにする。
・女性の意見を聞きまくる。


とのことで、これにも賛同する。

要するにオンオフ兼用のコートを作るということである。
そしてロングコートの品ぞろえを減らすということである。

ビジネスという観点からするとこれはまことに正しい選択だといえる。

しかし、こういう考えに対しては、オシャレを自認する業界人wwwは反発するだろうと予想される。
そんな反発なんぞは何の意味もないから無視するだけだが。

彼らは「正しいオシャレが否定された」と思うのだろう。
別に誤解されたままでも何の痛痒もないが、否定はしていないということを明言しておく。

本来はロングコートがもっとも格調高いし、筆者個人もロングコートが好きである。
正しく着用すれば、かなり細身に高身長に見える。
かっこよく見えやすくなる。
おまけに尻も暖かい。

だからそういう着こなしがあるということは伝え続けるべきだと思うが、ビジネスという観点から見ると、そういう物を好む層は少数派でニッチである。
じゃあ、ロングコートはニッチ向けに作って採算を確保すれば良いことであり、その売上高は1億円とか5億円程度で満足するべきなのである。

オシャレを自認する業界人wwwwの思考が圧倒的に間違っているのは、ニッチ層しか好まない「正しいオシャレ」を大衆向けに売りたいと考えている点である。
ロングコートで言えば、大衆にとってメリットよりデメリットが大きいから大衆はロングコートを敬遠するのである。
それに対しての啓蒙活動は必要だろうが、要らない物は要らないのである。

だったら、マジョリティが必要と感じるような商材を作って提供するのが「正しいビジネスの姿勢」だろう。

もし、何十億円とか何百億円という売上高を作りたければ、マジョリティが必要と感じる商品を発売すべきであり、防寒アウターでいうなら、世のサラリーマンは圧倒的にオンオフ兼用のショート丈・ハーフ丈を求めている。

フランス革命前まで貴族と平民では服装が異なっていた。
大雑把にいうと貴族はキュロットと呼ばれる半ズボンをズボンの上から重ね穿きしていた。
平民はキュロットを穿かずにズボンのみで、サン・キュロット(半ズボンなし)と呼ばれていた。

フランス革命で貴族が没落し、フランスはあまねくサン・キュロットになったのだが、それを指して「サン・キュロットは文化として正しくない。おしゃれではない。キュロットを穿く文化を継承すべきだ」などと批判しても意味がない。今更その当時には戻れないし、物事・文化というのはそういう風にして変化をしていくものだからだ。

サイレントマジョリティがオンオフ兼用のショート丈コートを求めているなら、それを提供するのがビジネスである。

オシャレな業界人wwwwが「正しいファッション」と「正しいビジネス」を混同し続けているから、アパレル業界は混迷しており、不振を極めているのではないか。
己の好みであるロングコートを無理やりに押し付けてもそれは大衆からは支持されない。そういう商品は仲間内のニッチ向けに作って満足しておけば良いのである。