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南充浩 オフィシャルブログ

若者がファッション業界を志望しなくなるのは当たり前

2017年2月13日 考察 0

 「若者のファッションに関する知識が浅い」という類の老害の嘆きは百害あって一利なしではないかと思う。

老害感丸出しのこんな事例が繊研プラスのコラムに先日掲載されていた。

http://www.senken.co.jp/column/eye/assistant0125/

あるプレスルームがアシスタントのアルバイトを募集したところ、20人を超える応募があったという。人手不足のおり、うらやましいと思いきや、結局採用は見送ったそうだ。「どの子もそれっぽい格好はしてるけど、ベースとなるファッションの知識がなさ過ぎて」とのこと。

 面接での情報を総合すると、皆、服を買っているのはファストファッション。東京ブランドなどは、人気どころを一つ二つ知っていたらいい方で、海外ブランドは関心も無い。情報は、タレントなどのインスタグラムや、昨今物議を醸したまとめサイトなどから得ており、雑誌は読まない。なので「はやりものは分かるけど、感覚的で、すごく浅い。これから10年も経ったら、ブランドビジネスはどうなるのかと不安になった」と。

感想は一言「アホか」である。
繊研プラスがということではなく、このプレスルームがである。

何年もこのプレスルームでアルバイトをしていた若者に対して、こういうならまだしも、これからアルバイトをする人に対してどれほどの技能を要求しているのか?
ここまでの技能や知識を要求しているのだから、さぞかし良いギャラを払うのだろうと思う。

これで時給1000円以下とかだったら、笑えてくる。

いくつかのプレスルーム、プレス業者と付き合ってきた経験上から言えば、プレス業者の知識もあまり大したことがない場合が多い。

たしかにブランド名はよく知っている。それこそコレクション系と一部セレクト系で扱われているブランドに限られているが。
しかし、生地、売り場、流通のことはまるで知らない。
だから彼らが作ったプレスリリースはまったく要領を得ないポエムのようなものが多い。

あれを読んで理解できる人間は同じくポエトリーな人間に限られるだろう。

記事中のファッション雑誌とは何を指しているのかわからないが、ファッション雑誌の多くはかなり間違った知識で書かれている。

そもそもファッション雑誌の記事を書いている人は、織物と編み物の区別も出来ていない人もいる。(全員がそうだとは言わないが)

大まかにいえば、ジーンズやワイシャツ、チノパン、ネルシャツ、ダウンジャケットなどで使われている生地は「織物」である。
Tシャツ、ポロシャツ、セーター、トレーナー(スエットシャツ)などで使われている生地は「編み物」である。

にもかかわらず、「〇〇産地で織り上げたスエット生地」みたいな文章が掲載されていることも珍しくない。正しくは「編み上げた」と書くべきだろう。

その程度のファッション雑誌を読んで一体何の知識が身に付くと思っているのか。

その程度の物をありがたがるプレス業者がこれまで跳梁跋扈してきて、ファッションビジネスをこんな体たらくに追い込んでしまったのではないか。
プレス業者には感覚的ですごく浅い人も多い。そのコメントはまさしく自己紹介だとしか思えない。

こんな勘違いをした輩が幅を利かせていることも、ファッション業界に若い人が入ってこなくなった一因ではないのか。
「感覚的ですごく浅い」業怪人たちがカッコを付けられた時代は2005年ごろまでで終わっている。

不要になった事物や業界が衰退し、消滅するのは当たり前のことで、ファッション業界が衰退しているのは若者のせいではなく、その手の輩が大衆に支持されなくなったからだろう。
このプレスルームの言いぐさが当然だと業怪人連中が思っているのなら、早晩、旧来のファッション産業は消滅してしまうだろう。まあ、それは市場で不要になったということだからさっさと消滅すれば良いと思うが。

最近、つくづくと思うのだが、ファッション産業は先駆けて衰退したさまざまな他産業と同じような足跡をたどっていると思う。
ファッション業界は、頑迷固陋で性質の悪い伝統産業のようになりつつあると個人的に感じている

ドキュメント 社長解任―三越"岡田商法"の崩壊
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日本経済新聞社
1982-11


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荻原 康昭
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2000-10



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