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南充浩 オフィシャルブログ

Rニューボールドの撤退は、90年代の手法が通用しないことを証明している

2017年2月1日 企業研究 0

 相変わらずブランド廃止ラッシュが止まらない。

ジョイックスコーポレーションのRニューボールドは2016春夏物でブランド廃止となった。

https://www.wwdjapan.com/375791

この記事によると、

渋谷店と京都店は同社が撤退を決めた「アールニューボールド(R.NEWBOLD)」の路面店を「サイコバニー」に業態転換する。

とのことで、他のRニューボールドの直営店は2016秋には完全閉店していたのだろう。
どうせ秋物は企画製造していないのだから、秋口に閉店するのは当然である。
ちなみにZOZOTOWNの店は、昨年10月で閉鎖となっている。

それにしても感慨はある。

Rニューボールドというブランドはポールスミスのセカンドラインとして業界では20年来知られてきた。
しかし、もともとはポールスミス氏が始めたブランドではない。
途中で買収したのであるが、そのあたりのいきさつはこちらにまとめられている。

https://www.fashion-press.net/brands/1849

1885年、イギリス・ダービーのペアツリーロードにロバート・ブリュースター・ニューボールドが服の工場とショップを開いた。

1900年に入ると工場の生産品目も拡大し、炭鉱夫の作業服や軍服、警察・消防・救急隊のユニフォーム等も製造を始めた。また、70年代初めに当時独立したばかりだったイギリス人デザイナーのポール・スミスとも親交を持ち、ポール・スミスのシャツを生産していた。

1990年に倒産の危機に陥った際、ニューボールド社の買収をポール・スミスに依頼。

とのことである。

それ以来、ポールスミスのセカンドラインという位置づけで日本では展開されていた。

なぜ、感慨があるかというと筆者も90年代後半にはRニューボールドを買っていたからだ。
筆者の記憶では、Rニューボールドというブランドは、スーツよりもカジュアルがメインである。
ブランドを国内展開していたジョイックスコーポレーションはどういう見解かしらないが、店頭の雰囲気、商品構成を見ると、90年代後半は明らかにカジュアル色が強かった。

なぜ筆者が買っていたかというと理由は2つある。

1、ファーストラインであるポールスミスが高くて、バーゲンで値下げされても買えなかったから。
  要はポールスミスよりも安かったからである。ただし、テイストは別物。

2、ポールスミスよりもカジュアル色が強くて筆者の好みだった。

この2つである。

例えばTシャツが2900円とか3900円くらいで、90年代後半のバーゲンではそれが30%オフになっていた。今から思うと、何のいわくもないTシャツによく2000円以上も払っていたなと感心するほかないが、当時はこれでもまだ安い部類だった。

中でも覚えているのは、ユニクロのフリースブームが始まる直前か始まった直後、96年~98年のどれかの年に、なんとジップアップの前開きフリースを9800円で買ったことである。

IMG_2326

(20年前のRニューボールドのフリース)

今から思うと、よく洋服1枚に9800円なんて支払ったなあと驚くほかないのだが、当時はこれでもまだ安い部類だった。これ以下だとユニクロの1900円しかなかった。

実はこのフリースジャケットをまだ持っている。
なんといつの間にか所有してから20年も経過してしまった。
まだときどき着ている。

この当時もシルエットはタイト気味が流行していた。
多分、チビTシャツブームの影響なのではないかと思う。
だから2000年代でも着用していてもおかしくなかった。

一番直近だと昨年の年末に着用している。
これを着て、29日~31日にかけて自宅で大掃除をしたのである。

フリースは風を通すことと燃えやすいことを除くと、ほぼメンテナンスフリーの楽ちん素材である。

しかし、この当時のフリースはアンチピリング加工されていないものが多いので、毛玉がつく。
これは当時のユニクロのフリースも同様で毛玉だらけになった。
そこから、フリースのアンチピリング加工が急速に進んだ。

このRニューボールドのフリースは御覧のように細かい毛玉がびっしりである。

IMG_2329

一方、これも買ってから7年くらいが経過したユニクロのフリースだが、まったく毛玉がない。
たしか2009年とか2010年に1990円に値下がりした時に買った記憶がある。

IMG_2327

(7年くらい前に買ったユニクロのフリースパーカ)

IMG_2328

(7年経過しても毛玉がつかない)

生地もRニューボールドのフリースよりもユニクロの7年前のフリースの方がソフト感がある。

もしもユニクロが1900円で売り出していなかったら、このユニクロフリースはもっと高値で売れたのではないかと思う。それほどに品質が高い。

それでも20年間断続的に着ているからこのRニューボールドのフリースにはそれなりに愛着がある。
20年前の服で手元残っているのはこれを含めて数少ない。

ところで、Rニューボールドで買わなくなったのは、やっぱり2005年前後からだ。

このころになると、ユニクロをはじめとする低価格ブランドの商品の見た目がグンと向上している。

比較的安いとはいえ、Rニューボールドの商品はそれらよりは高いのである。
おまけに見た目はそんなに変わらなくなってきたとなると、人間は誰でも安い方で買う。

だから買わなくなった。

Rニューボールドがブランド廃止にまで追い込まれたのは、

1、値段が中途半端に高いままだった。
2、販促、広報、PRがファッション雑誌に偏重し過ぎていた。

この2点が理由だと見ている。

カジュアルは低価格ブランドのおかげで市場での平均価格が下落した。
本来、Rニューボールドは値段を下げて(激安にまで下げる必要はない)、低価格ブランドに対抗すべきだったのではないかと思う。

それに加えて、広報・告知活動がファッション雑誌に偏重しすぎていたのが致命的だった。

実はこれはRニューボールドだけではなく、ジョイックスコーポレーションという会社全体に共通する宿病である。SNSが急速に普及した現在においても、社全体がファッション雑誌一辺倒の広報告知体制で動いており、ポールスミスに次ぐブランドを育てられないの要因の一つはここにあると個人的に見ている。

そう。90年代後半はメンズファッション雑誌の常連だったRニューボールドだが、同じやり方では2010年代は生き残れなかったというわけである。
そして、これはジョイックスコーポレーションだけではなく、他のアパレル企業、他のブランドにもいえることである。

アパレル各社はもうそろそろ2000年までのやり方は通用しないことを直視してはどうか。




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