これまで続いたタイトシルエット、ジャストシルエットにも飽きが来たのか、ルーズなシルエット、ビッグシルエットが2015年ごろからトレンドに浮上してきた。

最初にレディースで動きがあり、メンズがそれに続いている。
マスを狙うユニクロでさえもカットソー(いわゆるTシャツ類ね)やトレーナー、セーターなどでビッグシルエットを打ち出しており、衣料品業界関係者はこの動きを見て「ユニクロでさえ発売し始めたのだから、このトレンドは定着化する」と指摘しているが果たしてそうだろうか?

男性、とりわけ中年・高年層がこのビッグシルエットを安易に取り入れるのは非常に危険だと個人的に見ている。
30代以上の男性がビッグシルエットを着こなすことは、若い男性よりも難しいと感じる。
また、男性の方が女性よりも全般的に年代を問わずビッグシルエットを着こなすことは難しいと感じる。

シルエットの変化について大雑把なおさらいをしてみよう。
80年代半ばからダボダボのシルエットのソフトスーツが流行となった。
カジュアルアイテムも軒並みゆったりシルエットになった。

90年代半ばまではその傾向は続いており、90年代後半からローライズジーンズが流行するにしたがって徐々に細身シルエットへと変わっていったが、当時は現在ほどストレッチ混素材が発達していなかったため、着用できる人は限られていた。
要するにスマートな人しかタイトシルエットの洋服は着られなかったということである。

そのうちにストレッチ混素材が普及するとともに2004年ごろ、エディ・スリマンがディオールのコレクションで超タイトシルエットを打ち出してから、タイトシルエットがマス化して定着した。

そして、現在、ビッグシルエットがトレンドに再浮上しているからエディ・スリマンから数えても12年目、その兆候が出始めたころから数えると、20年弱ぶりということになる。

今の若い世代はその前のビッグシルエットの時代を記憶にすらとどめていない世代だといえる。
だからビッグシルエットが「目新しい」と映るのである。

オッサン・オバハン世代からすれば「あ、ワシらが若いころに着ていた服やわ」ということで何の新鮮味も感じないのだが。

ビッグシルエットはひとまず復活を果たした。
現在のトレンドはタイトシルエットとビッグシルエットが混在しているというのが正しい姿だろう。

上下ともにビッグシルエットの洋服は着用しない。
そんなものは90年代のだらしないヒップホッパーだけで十分だ。

ビッグシルエットが復活したことで、今、店頭ではこんなセールストークが使われている。

「ゆったりしたシルエットなので着やすいですよ」
「ゆったりしたシルエットなので体型が隠れてスマートに見えます」
「ゆったりしたシルエットなので着る人を選ばずに誰でも似合います」

果たして本当だろうか?中高年男性でビッグシルエットが似合う人は恐ろしく少ないのが実情である。

ビッグシルエットの似合う順番でいえば、やせ形から普通体型に限定すると、

若い女性>中高年女性≧若い男性>>>>中高年男性

という順番になっている。中高年男性はビッグシルエットが最も似合いにくいと思う。

例えば、グローバルワークの写真で比較してみよう。

まず、ビッグシルエットのニット。正式には「7ゲージリブビッグニットプルオーバー」である。

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http://www.dot-st.com/globalwork/disp/CSfGoodsPage_001.jsp?ITEM_CD=742437


どうだろうか?比較的容姿が整ったモデルの男性が着て、このダボつきである。
容姿が整っておらず、中年太りした巷の中高年男性がこれを着るとどれほどダボついて見えるか想像は容易ではないか。

続いてジャストシルエット、ややタイトなシルエットのニットである。
正式名称は「ミラノリブカタボタンボーダープルオーバー」(長ッ)である。

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http://www.dot-st.com/globalwork/disp/CSfGoodsPage_001.jsp?ITEM_CD=737489

こちらはこの15年間ほど主流だったジャストサイズ、タイトシルエットのニットであり、ちょうど同じモデルさんが着用していて比較しやすいが、こちらの方が圧倒的にスマートに見えるのではないか?

くどいようだがもう一度並べるので見比べてもらいたい。

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上の画像の方が太って見え、下の画像の方がスマートに見えるのではないか?

ビッグシルエットはたしかに着ていて楽だというメリットはあるが、よほどに容姿と体型が整っていないと着こなすことは難しい。

ビッグシルエットがなぜダボついて見えやすいか、なぜ太って見えやすいかということを考えたい。

まず、例えば先ほどのモデル男性を例にとって考える。

このモデル男性は中年太りしていない。お腹は出ていない。
タイトシルエット、ジャストシルエットならそれがわかる。
しかし、ビッグシルエットの場合、そのあたりはダボついていてわからない。
だから「ごまかせる」と考えられがちだが、逆にダボついているがために却って、お腹が出ているように感じられるのである。

また、肩幅が広くてお腹が出ていない格闘家体型の男性がビッグシルエットを着ると、広い肩幅でシルエットが固定されて、それがズドンと下まで続くので、却って太って見える。お腹が出ているか出ていないかはダボついたシルエットによってまったくわからなくなってしまう。

だから格闘家体型の男性はピタっとしたシルエットの服を着た方が、広い肩幅と引き締まった腹回りが強調されてスマートに見える。

次の落とし穴は、首の長さと顔の大きさ(輪郭のごつさ)である。

ビッグシルエットの場合、ウエストがどれだけ細く引き締まっていてもそれは外部からはわからない。
首が長くて顔の輪郭の小さい男性がビッグシルエットを着た場合、ビッグシルエットとのアンバランスさで、細さが際立つことになるが、首が短くて顔の輪郭がごつい男性が着た場合は、首と輪郭に引きずられて外部から見えない腹回りも、それなりにゴツいのではないかと、脳が勝手に想像する。

首が短くて顔の輪郭がデカい中高年男性はもっとも太って見えやすい。

仮にタイトシルエット、ジャストシルエットを着た場合は、顔がデカくて首が短くても、腹回りが細いことは簡単に外部から見える。よって、他人は「あ、首が短くて顔がデカいけど体は痩せている」ということが認識できるわけである。論理的にも視覚的にも。

ビッグシルエットの場合、体型が隠されているため他人からはその確認ができないのである。

だから肩幅が広くて首が短くて顔がデカいオッサンはスマートに見えたかったらビッグシルエットを着るのは避けて、タイトシルエット、ジャストシルエットを着るべきである。

ビッグシルエットは体型が隠れてしまうからこそ、首が長くて顔が小さくて肩幅が広すぎない、やせ形からスマートな体型の人間しか似合わないのである。

首が長くて顔が小さくて、肩幅があまり広すぎない体型の男性は残念ながらビッグシルエット以外の洋服も似合いやすい。人間は生まれながらにして不公平に作られているのである。

女性の方が男性よりも似合いやすいのも同じ理屈である。

女性は肩幅が狭い。
首の長短は様々あるが、顔の大きさは男性よりは小さい。
だからビッグシルエットを着ていてもそれなりにスマートに見える。

肩幅が広くて首が短くて顔がデカい男性がビッグシルエットのTシャツ類を無造作に着ていると、リングへ入場してくるプロレスラーか、休日の柔道家みたいに見えてしまう。

それに40代以上の中高年男性がビッグシルエットの服を着ると、新作を買ったように見えずに、バブル期に買った物をタンスの奥から引っ張り出してきたように見える。
これにセカンドポーチを小脇に抱えたら完璧にバブル期のオッサンが出来上がる。

「新作の洋服を買うオサレに敏感なオッサン」ではなく、「バブル期の服を今まで大切に保管していた物持ちの良いオッサン」になってしまう。

しかし、いくらタイトシルエット、ジャストサイズが理想といったところで、タイト過ぎればピチピチになりすぎて、「動物戦隊ジュウオウジャー」の変身後みたいになる。

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http://akkinews.net/archives/117821

極端なピチピチを避けつつも、ジャストシルエット、タイトシルエットを基本にワードローブをそろえた方が、中高年男性や容姿の整っていない男性は、まだマシに見える。

容姿の整っていない男性や中高年男性が、考えなしにビッグシルエットのトレンドに飛びつくのはかなり危険である。