普段は、物作りも重要だが、売り方の工夫も重要ということを書いている。
しかし、それは物作りの技術が一定の水準を満たしているという前提があってこそだ。

アパレル不振はさまざまな原因があるが、企画・デザイン担当者の劣化ということもあるのではないかと感じる。
アパレル企業が経費削減を目的として、外部にデザイン・企画を丸投げにし始めたのは90年代くらいからだと、業界ではいわれている。

バブル崩壊、拓銀・山一ショックを経て、その丸投げ度合いは強まる一方だった。

2000年代に入ると、丸投げはさらに強まり、OEM(生産請負)は当たり前、ODM(デザインからの請負)も当たり前、OBM(ブランド設計からの請負)まで登場して、じゃあアパレル側は金を払うだけかよという状況にまで堕ちた。

この丸投げ度合いに比例して、デザイン企画担当者の技能も落ちに落ちている。
そういう意味では今の若いデザイン企画担当者は、入社直後からODM、OBMが当たり前の環境にあるため、デザイン企画の技能が伸びるはずもなく、学生時代レベルにとどまっているのは当然であり、見方によっては彼らも被害者だともいえる。

近年、瀧定やタキヒヨー、サンウェルなどの大手生地問屋が展示会に製品のサンプルを展示することが増えたが、それはアパレルのデザイン企画担当者が生地を見てどんな製品を作ったら良いのか想像できなくなったからだ。

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(瀧定名古屋の2017冬素材展示会に出品された製品サンプル)

生地を洋服にまで仕立ててそれを展示する。そうするとその生地はよく売れるそうで、最近ではその製品サンプル自体を何十枚と発注するアパレルも珍しくない。
最早、考える力を捨て去っていると言っても言い過ぎではないだろう。

先日、ニット生地をいろいろと見ていた。
だいたい、30~40センチくらいの各種編地を見せて、それを元にアパレルや雑貨ブランドから受注をもらうのだが、ニットの業界もブランドのデザイン企画担当者の劣化が止まらないそうだ。

マフラー・ストール担当デザイナーという名刺を持った人間が堂々と「30センチくらいの編地を見ただけではマフラーの完成図が想像できないから、180センチの長さまで編んで、先端にはフリンジを付けてほしい」と寝言を言ったそうだ。

180センチの長さでフリンジまでついていたら、それは生地サンプルではなく、製品であり完成品そのものである。
なら、このマフラー・ストール担当デザイナーなんて存在自体が不要ではないか。
この生地屋にデザイン企画から丸投げしてしまえば、無能なデザイナーの人件費も削減できるではないか。

あと、恥ずかしげもなく、サンプル生地を見て、生地屋や糸商社に「柄は同じで、ほかの配色も考えてくれ」とか「柄は同じで、違う配色を15種類作って見せてくれ」と堂々と妄言を吐くデザイナーや企画担当者も珍しくない。

いやいや、その「ほかの配色」を考えるのがデザイナーや企画担当者の仕事であり、それを生地屋や原料メーカーに求めてどうするのか?

だったら、そんな無能なデザイナーや企画担当者の存在理由はない。
全員解雇したほうが人件費を削減できてアパレル、ブランド側も利益が確保できるだろう。

いまや、ド素人でも金さえ払えばオリジナル製品が簡単に作れてしまうほど、繊維業界の業界インフラは整備されている。
このことが、もともと低かったアパレル業界への参入障壁をさらに低くして、もはや無いのと同じ状況になってしまった。

メリットとしては常に新しいプレイヤーが参戦できて業界に流動性が生まれるということだが、デメリットにはデザイナーや企画担当者の技能が極度に劣化してしまったことが挙げられる。

まあ、そんな似非デザイナー、パクリエイターが闊歩する業界が作った製品が売れないのは不思議でもなんでもなく、むしろ当然といえるだろう。