久しぶりに、染色・洗い加工の福井プレスにお邪魔した。

その際の記事を掲載した。

https://independ.tokyo/column/%e7%a6%8f%e4%ba%95%e3%83%97%e3%83%ac%e3%82%b9/

以前にお邪魔してから仕事内容については大きな変化がなかったので、今回は、掲載した記事とは別に感じたことを少し。

まず、記事中にもあるように、家業だったクリーニング屋とは別にこの染色洗い加工を開始したのは16年前の2000年だった。

fukui004-factory

この当時は97年に起きた北海道拓殖銀行、山一證券の倒産によって不景気感が一気に高まっていたころで、繊維業界は低価格化に対応する目的から雪崩をうったように中国へ工場が移転していた時期であり、製造加工業の倒産廃業が多かった。

そんな時期にわざわざよくも染色洗い加工なんて始められたものだとその胆力に感心するほかない。
しかし、苦しいなら苦しい時期なりのメリットもあるようで、倒産廃業した会社から機械をタダ同然で手に入れられたそうである。

次に疑問に感じたのがそんな「中国移転時期」に国内でどうやって新規事業が受注をとれたのかということである。

その答えは当時ホームページと呼ばれていたウェブサイトを立ち上げたことである。

今は企業ウェブサイトがあって当たり前の時代だが、2000年当時を思い返してみてもらいたい。サイトを所有していた企業は大手か先進企業に限られていたはずだ。
ましてやサイトを所有していた工場は少ない。2016年の現在だって繊維の製造加工業の大半はウェブサイトを所有していない。

いち早くウェブサイトを所有したことで、ウェブ検索で引っかかりやすくなり、あまり苦労することなく受注が舞い込んだという。

「知られていないのは存在しないのも同然」なのである。

いくら技術に自信があろうが、いくら設備が良かろうが、ウェブ検索でモノを調べる時代に、ウェブサイトを所有していなければウェブ検索には引っかかってこない。表示されない会社や工場を、検索者は知ることができない。
だからウェブ検索で表示されない会社や工場は、世間一般にとって「存在しないのも同然」なのである。

受注が欲しければウェブサイトかせめて公式ブログは所有すべきである。

数年前から繊維製造業の救世主のように扱われているファクトリエだが、ウェブに引っかからない縫製工場を探すために電話帳を調べまくったそうだ。

もし、ウェブを持たない製造加工業者が第二のファクトリエの出現を待っているとしたら、それはほぼ徒労に終わる。ファクトリエのような行動をしてまで製造加工業者を調べたいという意欲のある人間はほとんど皆無だからだ。第二のファクトリエ的な取り組みをしたいという稀有な人間が出現する可能性は年末ジャンボ宝くじの1等当選と同じくらいに低確率だろう。

そんなものの出現を待っている間に国内製造加工業者の多くは廃業か倒産に追い込まれる。

筆者からすればそれは自業自得としか感じないのだが、もし、生き残りたいと強く望む製造加工業者がいるなら、今からでもウェブサイトか公式ブログを開設すべきである。それもせずに嘆くだけなら、単なるワガママに過ぎない。

また、福井プレスは個人向けに「染め直し屋」というサービスも行っている。

基本料金は5000円、あとはアイテムによって200グラムで400円というように料金設定されている。

http://somenaosiya.jp/

これもネットで受注が集まっており、ここでもネットの重要性がよくわかる。

世間的にリユース、リサイクルが大きな潮流となる少し前から取り組んでいる。小規模工場という不利な点を逆手にとって、個人向けという極小ロットに対応したことになる。

ただ、最安価格でも5400円くらいになるので、その値段以下の洋服の染め直しを依頼する人はほとんどいない。逆にいうと高額ブランド品を持ち込む人ばかりだということで、三陽商会のバーバリーが終了するにあたって、着古したバーバリーのトレンチコートを持ち込む人が多かったという。
もう三陽商会製のバーバリーコートは買えないから、染め直して寿命を延長させたいという人が多い。

しかし、一方で課題もあって、そういう高額ブランド品を所有しているのは35歳以上の人で、それ以下の若い世代は高額ブランド品を持っていないので、顧客にはならないということである。
5000円も払うくらいなら低価格ブランドの新品を買った方が安くつくからだ。

今後、新規客層をどのように獲得するかについては福井プレスの福井社長も頭を悩ませている。

ここから話はそれるが、先日やっと冬物への衣替えを完了させた。

その際に、捨てたい洋服が結構出てきた。
正確にいうと捨てる決心がついた洋服である。

しかし、不燃物に出すのはなんだかもったいない。
大半は着用可能だからだ。単にサイズが合わなくなったとかデザインが古臭くなったとかが理由だからだ。

幸いというか不幸にもというか、今、筆者のワードローブはほとんどがユニクロと無印良品で占められている。両方とも古着回収を行っているという点では幸いだが、こんな価格の服しか買えないほどの低収入だということは不幸だといえる。

で、ユニクロと無印良品に何度かにわけて古着を持ち込んだ。
ユニクロの受け取り方はかなり大雑把で内容物を確認されることもない。
受け取ったあとは難民に寄付される。

無印良品の場合は、自社製品かどうかタグを確かめられて、1000ポイントを付与される。
受け取ったあと、どうなるかというと藍色に染め直されて、re-mujiとして限定店舗で販売される。

天神大名、 名古屋名鉄百貨店、有楽町、京都BAL、アトレ恵比寿、グランフロント大阪の6店舗でしか販売されていない。

大規模チェーンだからたくさん持ち込まれるとはいえ、安定的に持ち込まれるわけではないから、この程度の店舗数で展開するのが正解だろう。

染め直された商品の販売価格は2900円だという。

無印良品側とすれば持ち込まれた商品の仕入れ値はタダだから、純粋に染め直す工賃のみということになる。

極小ロットならそれこそ工賃が上乗せされるから福井プレスのように最低でも5400円くらいになるが、無印良品のように大量に持ち込まれるなら、そういう基本料金はほぼ不要になり、単に工賃を枚数で割り算するだけになる。しかも藍色のみで効率的に染め直せるから工賃自体もそれほど高くない。だから2900円での販売が可能になる。

買う側とすると古着だからいくら「エコ」だ「リユース」だといっても、あまりに高額になれば消費意欲は落ちる。
5000円を越えるとちょっと手が出にくい。

こう考えると、無印良品は大規模チェーン店の利点を上手く生かして染め直し品を低価格販売しているといえる。やはり「数は力」なのである。

一方の福井プレスの染め直し屋は、藍色のみということなく制限はあるが、もっと色数が多い。またラベルなどは一度取り外してから染めて、染め直した後に再度縫製する。このためラベルが染まってしまうことはない。

これは小ロットを逆手に取ったサービスだし、無印良品のやり方と差別化できていて、低価格競争に巻き込まれにくい取り組みといえる。

それにしても無印良品のように大手にも「数の力」を効率的に生かした染め直しサービスが出現しており、創意工夫のない染め直し業者はうかうかできない情勢になりつつあるといえる。