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南充浩 オフィシャルブログ

取り扱いブランドしかセールスポイントがない小売店は確実に滅びる

2016年11月24日 考察 0

 先日、知り合いから呼び出されて相談をされた。
その知り合いの友人が、今年春に洋服店を開業したのだがさっぱり売れないそうで、どうしたらよいのかという相談だった。

そんなものが即座に打開できるなら、今頃筆者も洋服店を開業しているし、コンサルタントとしてももっと高額な報酬を得られるだろう。

で、どんな概要の店かというと、堀江だとか南船場だとか中崎町といった「大規模繁華街に隣接した地域」に小規模な路面店を出店したらしい。
扱っているのはおもにヤング向けメンズカジュアルブランド。価格は高い。
もちろんオリジナル商品はなく、すべて仕入れている。

扱っているブランドは、雑誌「RUDO」に載るようなオラオラ系?チンピラ系?みたいなブランドらしい。

そもそも高額なヤングメンズカジュアルなんて一番消費が低調なジャンルだし、RUDO的なテイストはその中でもあまり広い層には好まれない。
ニッチな中でもさらにニッチな方向に入ってしまっている。

手持ち資金であと何年暮らせるのかしらないが、手持ち資金が尽きるまで、地道に固定客づくりに励むしかない。
例えば、手書きでサンキューレターを送ったり、新商品入荷の案内を送ったりだ。

知り合いからの与えてもらったその店とオーナーの情報を分析するとすべてにおいての見通しが甘い。甘すぎる。クリスピークリームドーナツくらい激甘である。

たとえば、現在仕入れているブランドにしても自身がファンだったため、「このブランドを扱えば、ファンが買いに来るだろう」という根拠なき楽観論に支えられている。

しかし、冷静に考えてもらいたい。
小規模な専門店、ブティック、セレクトショップは、その「Aブランド(仮名)」の商品を全型扱っているわけではない。数型~10数型程度である。
なぜならオンリーショップではなく、専門店だから。

当然、いくつかのブランドから何型かだけを仕入れて店頭に並べて販売する。

そうすると「Aブランド」のファンからすると、わざわざそんな無名の小規模店に行くよりも、ブランドの直営店やオンリーショップ、またはブランドのネット通販に行った方が、そのAブランドの全型が見られる。
ブランドファンなら、数型を抜き出して並べている店よりも直営店・オンリーショップ、直営ネット通販に行くのは当然である。

逆にブランドファンのくせになぜファン心理が読めないのか不思議でならない。
ブランドファンからするとその小規模店へわざわざ行くメリットがまるでない。

となると、そのブランドを扱っていることがセールスポイントではなく、その店で買うセールスポイントをほかの部分に求めなくてはならない。
オーナーはブランドを扱っていること以外のセールスポイントを作らねばならないし、それを多くの消費者に知らしめなくてはならない。
知られていないのは存在しないのも同然だからだ。

その時、知り合いが「RUDOなんて柄の悪い雑誌に載っているブランドなのに、そのオーナーがコーディネイトすると非常に上品なカジュアルになる」と言った。

じゃあ、それを強みにしてみてはどうだろうか。

オーナーのコーディネイトをセールスポイントにする。
「あのガラの悪い〇〇ブランドを使ってもこんなにトラッドに仕上がります」みたいな感じでだ。

何なら、毎週とか毎月とか期間を決めて、自店の商品で作ったオーナーお薦めコーディネイトを撮影して、ブログに掲載したり、メールで購入実績者全員に送るとか、そういう販促をしてみてはどうか。
店でコーディネイト大会とかコーディネイトセミナーを開催してみても良い。

もちろん即効性はない。しかし、何もしなければ状況は絶対に好転しないことだけは確実だから、中長期的な効果を期待して地道な取り組みをするほかない。

業界の多くの方々はこのオーナーの見通しの甘さに苦笑しておられるのではないかと思うが、ちょっと残酷な言い方をすると、苦戦傾向の専門店の多くがこの激甘オーナーと大差のない思考をしておられると感じる。

いわく「一番受注が付いた品番をちょうだい」
いわく「人気ブランド〇〇が入荷できたから期待できる」
いわく「大手の〇〇も仕入れているブランドを入荷した」

などなどである。

どれも展示会場でよく耳にする妄言である。

人気ブランド〇〇がほんの数型入ったところで、そのブランドのファンはあなたのお店には来ません。
なぜならブランドの直営店やオンリーショップの方が品ぞろえが良いから。

「デュベティカのダウンジャケット入荷」なんて言っても、デュベティカの直営店やオンリーショップに行った方がはるかに選択肢が広がる。ファンなら絶対にそっちへ行くだろう。

大手の〇〇が仕入れたブランドだから何ですか?

大手の〇〇の方が、店も広いし取扱型数も多い。何なら大手の〇〇はまだ資金的に余裕があるから様々な広報宣伝・販促活動ができるからそちらの方が消費者を集めやすい。

一番受注が付いた商品ということはどの店にも並んでいるということですよね?

じゃあ、品ぞろえが一番豊富な店が勝つということになる。

もちろん、店において取り扱いブランドは重要だが、それのみに過度に依存していると、直営店やオンリーショップ、大型店に絶対に負けてしまう。

激甘オーナーと同じく、個々の店が「取り扱いブランド以外」のセールスポイントを作り上げる必要がある。
それができない小規模専門店は残念ながら淘汰されるほかない。

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