先日の日経ビジネスの特集だけではないが、アパレル業界の問題点をかなり率直に指摘する傾向の記事が増えた。昨日紹介した繊研新聞の記事もその一例で内容としてはまずまずだといえる。

これまで「楽しさ」とか「センス」とか「ライフスタイル」とかの薄っぺらい言葉だけで問題点を総スルーしてきたことに比べると、格段に良い傾向だと感じる。

しかし、これに対して「解決法も示してほしい」という声が聞こえるのももっともな話なのだが、この「解決法」についてはあまり有効な手法が示されていない。もちろん、筆者も示せていない。もし示せるのなら今頃もっと金持ちになっている。

ただ、直感的にいうなら、「これまでの延長線上の衣料品事業のやり方」では解決は絶対不可能だと感じている。

例えば、先日、ファッションワールドという大規模展示会があり、そこで栗野宏文・ユナイテッドアローズ上級顧問クリエイティブアドバイザーの講演があったらしい。この内容を逐一、野田大介氏がツイートしてくれていたのだが、そのツイート内容を総合した栗野氏の示す「解決法」は極めてスモールビジネスの観点に終始しており、では栗野氏が所属するユナイテッドアローズという売上高1000億円を越えた上場企業でそれが実現可能なのかというと、到底不可能だといえる。

なぜなら、それほどの収益にならないことは目に見えており、株主からの激しい反発が予想される。
栗野氏が示すスモールビジネス的解決法をユナイテッドアローズでは実現できない。とすると、彼は誰に向けてその解決法を示したのかという疑問になる。

うちの会社では実現不可能だけど、興味がある会社は取り組んでみては?

という提案なら不誠実極まりないといえる。

その内容はまた別途紹介するとして、人のつながりだとか楽しさだとか、そういう情緒のみに依存する解決法を取りうるのは、せいぜい地域密着型の10~20店舗くらいまでの規模までだろう。

あとの著名な人々が示す解決法も似たりよったりで、ほとんど効果的な提案はない。
極めて情緒的なスモールビジネスか、極めて物作り脳か、ネット通販を魔法の杖のように見ている能天気派か、時代遅れのチェーンストアオペレーション遵守派か、だいたいその4通りである。
冷静に読めばどれも効果的ではないことはすぐにわかるのだが。

数少ない有効的な解決法だと感じるのは、河合拓氏の記事である。

Made in Japanブームは終わる。大変革を余儀なくされたアパレル業界
http://news.livedoor.com/article/detail/11470311/

かなりの長文なので全文はクリックして読んでいただきたい。

大手アパレルは日本製を次々に打ち出している。しかし、今のMade in Japanブームは一時的なもので終わる可能性が高い。これは、日本企業が「価値」を「ブランド化」してこなかったことと関係がある。

先日、ある業界団体の討議会に参加した。アパレル業界をどうしてゆくべきかという議論が活発になされていたが、業界の常識にどっぷりつかった人は昔のフレームワークから抜け出せず、物事を「XXX系」という括りで語り、「この系」は流行る「この系」は廃れるという具合に昔から繰り広げられている「トレンド議論」を繰り返していた。

しかし、ユニクロや無印など、世界的に成功している企業は、むしろ「トレンド」とは真逆のところにあり、その商品や世界観が持つ本質的な強みで勝負している。一時的なブームに乗っているわけではない。一見「トレンド」を追いかけているように見えるファストファッションも、実は、背景には高度なロジスティックスやデジタル技術という「ビジネスモデル」が競争力の源泉として存在し、トレンドという不確実なばくちで勝っているわけではない。

今、個別企業に求められているのは、多少トレンドを外しても競争力を維持できるブランドを確立することだ。「トレンド論」でなく「システム論」、「ビジネスモデル論」こそ重要なのである。分析の軸が間違っているのだ。

との指摘で、業界内外でのユニクロ論は、価格がどうだとか、デザインがどうだとかの極めて近視眼的な論評に終始している。消費者的視点でいえばそれらは重要な一つの要素だが、大勢にはあまり影響がない。

「ユニクロは良い物を作っているのだから、良い値段で売るべきだ」論なんて噴飯物で、そんなものはユニクロのビジネスモデルには反するからユニクロが顧みることは絶対にない。これを真顔でいう業界人が多いから呆れ果ててしまう。
ユニクロに値段を上げてほしいのはそちらの都合であり、そちらの都合になぜ勝ち組のユニクロがわざわざ合わせる必要があるのか。常識的に考えればわかるではないか。

このあと、アパレル業界の予想将来像として3つの業態をあげている。

1. 高価格帯 百貨店アパレル(メーカー)
2. 中・高価格帯 総合ファッションリテーラー
3. 低価格帯 SPAアパレルリテーラー

そのうえで、

昨今の改革事例をみていると、2のプレイヤーが3をおこなったり、3のプレイヤーが2を行ったりとちぐはぐ感が目立つ。自社のポジショニングを明確にしたい。

とあり、まさしくその通りである。業界の人は直観的に、または「隣の芝生が青い」的考えで業態や取り組みを変える。その結果、わけのわからないブランドが無数に増えることになる。

河合氏は結論として

日本が産業政策としてアパレル業界に取り組むべき課題は、生産地であるアジアのIT、金融、物流といった周辺産業のスタンダードを作り上げることだ。

を挙げる。
もうすでに洋服の97%が海外(とくにアジア地域)生産品となっている現状から考えるとその通りで、アパレル業界や繊維業界が単独でどうこうしようとする取り組みは現在で限界を迎えつつある。
IT、金融、物流などの周辺業界との取り組みが必要になるという指摘はその通りだろう。

これを国内に置き換えてみると、やっぱり個々の機屋だとか染色工場だとかが単独でどうこうできる事案ではなくなりつつあり、それこそ自動車や家電メーカーが構築したような原料から店頭までの有機的な連合を組むことが必要になるだろう。IT、金融、物流との協業も国内といえども不可欠である。

もっともこの国内論は筆者の自前の説ではなく、業界の先輩からの受け売りだが、小島健輔氏のブログでも似たようなことが提案されており、現在考えうる唯一の解決法ではないかと思う。

個々の機屋がデザイナーのアドバイスでチョチョっと商品を作って、店頭に並べたらめちゃ売れて、ハッピーになってしまう。みたいなそんな奇跡はほとんど起きない状況になっているし、もう産地ブランドなんて掃いて捨てるほどある。

単なる産地ブランド、単なる日本製の衣料品なんて珍しくもなく、百貨店では連日その手のブランドのポップアップショップが開催されており、あるプロデューサーがいうように「産地、日本製に対して消費者は食傷気味」という指摘は至極もっともである。
別に「産地、日本製」を否定するつもりはないが、それにプラスされた新しい取り組みがないと、陳腐化してしまい日本製ブームはブームとして終わってしまう。
そしてそろそろ日本製ブームも飽和点に達しつつあると感じる。

もし、繊維・ファッション業界を変革できるとしたら、業界にどっぷりつかって育ってきた人間ではなく、必ず異業種からの参入者になるだろう。
「業界の業界による業界のため」の施策はこれまで散々失敗を重ねており、これ以上はもうノーサンキューである。

ブランドで競争する技術
河合 拓
ダイヤモンド社
2012-05-25