業界の常識というか商売の常識として、

売上高=客単価×買い上げ客数

であることは疑いもなく確立された理論だといえる。

だから売上高を上げるためには客単価を上げるか買い上げ客数を増やすか、またはその両方を増やすかでしか解決ができない。

これも常識といえる。

だからデフレに苦しむ衣料品業界は、高価格商品を売ろうとする。
その方向性は間違っていないが、筆者のような貧乏人からすると、「そんなバカ高い物をどれだけの人間が買えるの?」と疑問を抱く。

筆者はいつも6個パック138円(税抜き)の卵を買って毎日1個食べている。
6個パックの卵は300円くらいまでならまあ、ありえると感じる。
500円を越えると「高すぎる」と感じるし、1000円になったらめちゃくちゃ高いと感じて、買おうとは思わない。

これが卵という食品に関する価格相場だろう。

洋服だと1枚1000円は安いし、それ以下なら激安品だ。
商品のアイテムによっても相場は異なると思うが、一般庶民が気軽に買える価格としては3万円くらいが上限ではないかと思う。
5万円を越えると、髙い部類に入るし、10万円を越えると完全に高額品で、一般人はよほどのことがない限り買おうとは思わない。

洋服の場合はブランドによって価格帯を棲み分けている。
ポール・スミスには8万円くらいのスーツがあるし、バーバリーのコートは今では20万円を越える。
10万円ならデサントの水沢ダウンだろうか。

新進デザイナーブランドや産地ブランドは毎年無数に生まれてそして大半が数年内で消えていくのだが、そういうブランドの商品は「高すぎる」と感じることが多い。

例えば、10万円を越えるコートなんていったら、それこそポール・スミスとか水沢ダウンと同等の価格になる。
無名のデザイナーズブランドや無名の産地ブランドとそれらのどちらを買うかというと、多くの人はポール・スミスや水沢ダウンを買うだろう。おそらく90%の人はそうすると思う。
もちろん筆者も無名のわけのわからんブランドではなく水沢ダウンを買う。

そういう新進デザイナーや産地ブランド側の価格設定に対する理由はもちろんあるだろう。
ただし、ミニマムロットに達しなくて工賃でアップチャージを取られたからだという理由だけは意味がない。
そんなものはブランド側の都合だけであり、嫌ならミニマムロットに達するように販売力を強化すれば良いのである。

多くの新進デザイナーや産地企業は、高価格帯の商品は一流ブランドが競合になるということを念頭に置いていない。20万円を越えるコートはバーバリーと競合するのである。
新進デザイナーや産地企業が展開するブランドはバーバリーと同等のブランドステイタスがあるのだろうか?
同等のステイタス性がなければバーバリーと同じ価格では売れない。
そのことをまったく考えていない。

先日紹介した坪井秀樹さんのブログにこんな一節がある。

http://tosboi.com/marketing/6401/

例えば、

①欲しい・欲しくない、という動機に対する解決策と、

②買える・買えない、という条件に対する解決策と、

これもまた全く違います。

とのことで、欲しくなる商品と買える商品は多くの消費者にとっては別物である。

できればバーバリーのコートは1着くらい欲しいが、20万円を越える価格では買えない。

そういうことである。

新進デザイナーや産地企業が作ったブランドは、「欲しくなる」ことは追求しているが、「買える」ということはあまり考慮してないことが多いように感じる。

これは一般規模のアパレルブランドにも通じることで、デフレ対策については

「デザイン性を強化して、使用素材も向上させて高付加価値商品を作って、価格を上げます」と大概のアパレルブランドは答えるが、果たしてその「価格」は、どれほどの人が「買える」価格帯なのだろうか?
100人しか買えないような商品なのに1000枚も作ってしまえば900枚は余ることになる。

そして900枚の処理に苦慮する。
捨ててしまえば莫大な損失だし、投げ売りすればもうそのブランドのステイタス性は壊れる。

最初から「買える人数」を見極めて生産すべきなのである。

以前、大先輩がおっしゃっておられたが、売上高を作る指標のもう一つに、

購買能力がある人の数 

ということも挙げられる。

15万円の気仙沼ニットは名品かもしれないが、1万人や2万人の人が買える値段ではない。
せいぜい数百人から1000人くらいだろう。
それがその市場規模で、気仙沼ニットの売上高の極大値ということになる。
欲しいか欲しくないかと問われると、気仙沼ニットを欲しいと答える人は多いだろう。
しかし、買えるか買えないかと問われると、買えないと答える人の方が多い。

そういうことである。

新進デザイナーや産地ブランドが店頭投入するその10万円のコートは何人の人が買えるのか?

要するに購買能力がある人はどれくらい存在すると考えているのだろうか?

そこを見極める必要があり、見極めずにムードだけで「職人が作ったこだわりの逸品だからン十万円でも売れるだろう」なんて考えるのは愚の骨頂といえる。

あなたのブランドは、「欲しくなる商品」と「買える商品」をどこまで一致させられていますか?