百貨店の中間決算が軒並み悪い。
百貨店に依存していた旧大手アパレルの決算も基本的に軒並み悪い。

業績の悪化した企業が行うのは、店舗閉鎖、ブランド廃止、人員削減というリストラである。
リストラをすることは応急手当、止血作業としては必要である。
しかし、応急手当は所詮応急手当であり、根本的治療ではない。

いくら店舗を閉鎖しようが、ブランドを廃止しようが、人件費を削減しようが、反転浮上にはつながらない。
むしろ、マンパワーが減るから労働負荷が増えて現場は疲弊する。
疲弊した現場から「売れる商品」「売れる売り方」なんていうものは開発されるはずがなく、そのまま縮小スパイラルへ落ち込む。

百貨店もアパレル各社も大型スーパーも専門店も、浮上する施策として「トレンド商品を増やす」「感度を高める」「ファッションの楽しさを云々」などとフワッとしたことを口先だけで唱える。
これらは施策でもなんでもなく、単にイメージを口走っているに過ぎないが、「施策がありません」とは口が裂けてもいえない。社員にも株主にも示しが付かない。
だからとりあえず、フワッとしたイメージを口走るのだろう。
これを「施策」だと思っている経営者がいるならよほどおめでたい人といわねばならないだろう。

昨今の大手アパレルはほとんどがSPA化しているから、百貨店、大型スーパー、専門店と業績低迷の原因は共通している。卸売りアパレルは売り先の動向に左右される要素が大きいので、自社だけの取り組みで改善されるものではない。

百貨店、大型スーパー、専門店、SPA大手アパレル各社は売り上げ不振の原因をどう分析しているのだろうか。
もちろん各社によってもその原因は異なる。

中間層が下層化して、とか、可処分所得が減少して、とか、平均年収の減少によって、とか、そういうマクロな分析はさておき、自社・自店の苦戦理由はなんだろうか?
それをちゃんと分析できているのだろうか?

売上高の減少理由は2つしかない。

1、来店客数は変わらないのに購買率や客単価が低下していること
2、購買率や客単価が変わらないのに、買い上げ客数が低下していること、もしくは来店客数が低下していること

である。

これについて、坪井秀樹さんがわかりやすくまとめられているのでそちらを参照いただきたい。

一つの問題は、いくつかに区分けして考えてみよう
http://tosboi.com/marketing/6401/

例えば、売上が落ちているとします。
要因はなんですか?と聞くと、
「以前より高額商品が特に売れなくなってきているよ。ですから、低額の品揃えを強化したいと思っています。実は低額商品だけではいけないということで、ここ数年は高額系を増やしたんですけどね・・・・。」
といったように、商品面と価格面の原因とその対策のお話になったりします。
 
なるほど、と思いながら、次に、
「お店に来ているお客さんの数そのものが減っているか、お客さんは来ているけど購入率が減っているか、どっちかというとどっちですか?」
質問をし直します。
 
「あぁ・・・・、お客さんそのものが減ってますかねぇ・・・・。」
と答えたとします。
 
だとすると、この場合、品揃えと価格帯を変えても、そもそもの集客そのものの課題に対しての直接の解決策にはなりません。
 
こういうズレは実はよくあったりします。
 
①来店するお客さんの数が落ちていることに対する施策と、
②来店したお客さんが買う率が落ちていることに対する施策は、
全く違います。
 
闇雲に、品揃えと価格帯だけを変えるだけの施策は、下手をすると泥沼に陥ります。

とのことであり、ほとんどのSPAアパレル、百貨店、専門店、大型スーパーはここを混同して自ら泥沼にはまり込んでいっているというのが、取材を通して受ける個人的な感想である。

もちろん、品揃えと価格は大きな要因であり、軽視はできない。
坪井さんもそのことは記事中でおっしゃっている。

しかし、来店客数が少ない場合、品揃えと価格をいじってもその問題が解決される可能性は少ない。
それを解決できるのは販促や広報・宣伝活動ということになる。

客自体が来ていないのに、いくら品揃えと価格帯だけをいじってもほとんど効果はない。
もちろん、口コミやネット情報でジワジワと増えるということはあるが、それにはかなりの時間が必要になる。
それをのんびりと待てる体力があるなら、それはお好きにどうぞ。
もし、待てないなら、販促や広報・宣伝活動を積極的に行わねばならない。

またアパレル、ファッション関係者には、「欲しくなる商品」と「買える商品」を混同している人が多く、メーカーの場合なら「10万円でも欲しくなるダウンジャケット」の開発に注力すべきだが、SPA型や百貨店、専門店の場合は、自店の客層はそれを「買えるか買えないか」を冷静に考えるべきで、坪井さんも

例えば、

①欲しい・欲しくない、という動機に対する解決策と、

②買える・買えない、という条件に対する解決策と、

これもまた全く違います。

と指摘しておられる。

これを混同する人が多いから、「〇〇ショップでン十万円のコートが売れたから、うちもン十万円のコートを仕入れる」なんてアホなことをいう人が続出するのがこの業界の特徴である。

〇〇ショップとあんたの店の顧客層は同じなのか?
あんたの店の顧客層の収入は〇〇ショップの顧客層と同じなのか?

思わずこう突っ込まずにはいられない。

例えば、偏差値38くらいのFランク大学の首脳が「東大には冷房がないからうちも冷房は設置しません」というのと同じである。
東大は冷房がなくても入学したい人が山ほどいるが、偏差値38のFランク大学なんて利便性がなければ入学する価値もない。

これと同じことをそこら辺の専門店や百貨店、アパレル業界のオジサンたちは四六時中口走っているのである。

もちろん、第三者の気楽さからそういうことが見えるわけで、当事者になったらなかなか冷静にはなれない。それでも一歩立ち止まって考えなおす必要があるのではないか。

マクロな分析と「品揃え」と「価格」だけに頼っているから大手アパレルも百貨店も専門店も凋落し続けるのではないか。

ニトリ 成功の5原則
似鳥昭雄
朝日新聞出版
2016-08-19


運は創るもの ―私の履歴書
似鳥 昭雄
日本経済新聞出版社
2015-08-26