固定客、ロイヤルカスタマーを獲得できているアパレル企業、ブランドは別として、これまで通り一遍の「素材」や「製法」の打ち出しだけで価値を演出してきたアパレル企業、ブランドは取り巻く状況が年々厳しさが増している。

例えば、先日のファーストリテイリングと島精機製作所による合弁会社設立である。
これによって「ホールガーメント」という「製法」だけで商品価値をアピールしていたブランドは軒並み苦戦することになるだろう。

また、ハリスツイードの雑貨がついにダイソーにも登場した。

ダイソーにあの「ハリスツイード」がついに登場しました!~お値段もお手頃価格で手に入りやすい~
http://more.hpplus.jp/morehapi/article/sachiko/fashion_news/16138?page=1

キーケースや財布などサイズの小さな雑貨に限定されているようで、価格は500円だという。

ハリスツイードは、しまむらでも靴やバッグなどの雑貨に使用されて、にわかに大衆感が急上昇していたが、このダイソーとの取り組みはそれを極限まで推し進めることになってしまうだろう。

もちろん、高額なハリスツイード商品とは異なるし、何よりも小サイズ雑貨(ダイソーの場合)や靴やバッグ(しまむらの場合)での取り組みだから生地の使用量(用尺)は少ない。それゆえに価格も抑えられるのだが、一般消費者にはそんなことは知られていない。
あの高額な商品もダイソーの財布も「同じハリスツイード」として映ってしまう。

だから、「単にハリスツイードだから」という理由だけで高額な値段をつけていたブランドや、そういう売り方しかできなかった店の商品は軒並み売れにくくなるだろう。

別に客は「ハリスツイード」という生地を買いに来ているわけではない。
店やブランドのファンだったり、製品のデザインやコーディネイト提案などに惹かれるのが購入動機となる。
ハリスツイードという生地ブランドは最後にそれを後押しする要素である。

そういう売り方をしているブランドや店の影響は軽微だろうが、逆に「ハリスツイード」を前面に打ち出して「とにかくハリスツイードだからイケてるんですよ」なんて売り方をする店やブランドはダイソーの使用でとどめを刺されるのではないか。

カイハラデニムだって同じだ。
もちろんカイハラが製造するデニム生地にもグレードがピンキリである。
厚さだとか色合いもさまざまあり、ブルーだけで数百種類がある。

しかし、一般消費者にはそんなことはあまり知られていない。
「カイハラデニムだから良いんです」なんて売り方しかできない店やブランドは、ユニクロに脅かされるのは当然だろう。

コーンデニムだってGAPやグローバルワークに並んでいるし、しかも期末に投げ売りされる。

「コーンデニム使用」ということだけを前面に打ち出しているブランドでは売れなくなるのは当たり前である。

カシミヤだって同じだ。
グレードはピンキリだし、製品の良し悪しもピンキリだが、それでも「カシミヤだから良いんです」としか言えないようなブランドや店はユニクロやらGMSやらの製品と比較されてしまうことになる。

ダウンジャケットしかりである。

すべての製品はコモディティ化する。衣料品も例外ではない。

まだまだ素材ブランドは残っている。クールマックスだとかコーデュラナイロンだとかゴアテックスだとか。
しかし、いずれはコモディティ化すると考えておいたほうが良いのではないだろうか。

「コモディティ化反対」とか「ファストファッション不買」とかそんなキャンペーンをいくらやったって無意味である。
自動車もテレビも冷蔵庫も洗濯機もパソコンもスマホもすべてコモディティ化して大衆に普及した。
どれもこれも開発当時に比べると販売価格は何分の1にまで低下している。

なぜ、衣料品だけが例外に成りうると考えられるのか、その思考方法がまったく間違っている。

コモディティ化に巻き込まれないためには、ブランドなり店なりがロイヤルカスタマーを作るほかない。
その手法は千差万別だろう。それぞれのブランドや店に適した手法があるはずだ。

その手法は何なのかを各社・各ブランド・各店舗が考える必要がある。

もう「素材」や「製法」だけに頼った売り方は通用しない。
ダイソーのハリスツイード雑貨はそのことを象徴しているのではないか。