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南充浩 オフィシャルブログ

アパレルは他業種に比べて過剰生産対策への工夫が足りないのではないか

2016年10月27日 考察 0

 洋服の値崩れの原因はさまざまなあるだろうが、過剰供給がその一因である。
過剰供給すれば値崩れを起こすのは洋服も野菜も秋刀魚もミカンも同じである。
洋服だけが特別な存在では決してない。

現在、年間に国内に流通する衣料品は約40億点だとされている。

日本人は全員で毎年30枚以上の洋服を買わないとこれを消化できないということであり、実際これを実行するのは不可能ということになる。

逆に一部の「モノヅクリガー」みたいな人々がいうように手紡ぎに戻れだとか手織り、手縫いに戻れだとかそんなことは実行不可能だし、実際にやってみれば国内外の製造加工場は経営破綻して失業者があふれる。
ミシンや紡績機などを製造する機械メーカー、その部品メーカーも倒産が相次ぐだろう。
当然、アパレル企業も破綻して失業者だらけになる。
彼らがそういう社会を望んでいるならまだしも、単なるノスタルジーだけで主張しているならまったく有害でしかない。

容易な解決策は見いだせないが、やるとするなら、売れる見込みの枚数だけを製造するということになる。
過剰に最初から作らないことであろう。
中価格から高価格帯の国内アパレルはすでにこれをある程度実施しており、その結果、極端に製造枚数が減っている。しかし、過度にPOSデータに依存しているため、売れ筋追求か過去実績の焼き直し生産ばかりで各社ともに同質化している。同質化すれば値崩れを起こすのは当然である。
一方、低価格ブランドはこれをやっていない。
いまだに重度に「欠品させない病」を発症している。

例えばユニクロ、それからイトーヨーカドーやイオンなどのGMSである。
9月30日に鳴り物入りで発売が始まった「ユニクロU」だが、今週、さっそく一部商品が値下げされた。
これから随時各商品が値下がりしていくだろう。
ユニクロの商品を定価で買う人間はアホだと思う。

短期間で必ず値下がりするし、定価で売り切れるほど生産数量は少なくないからだ。
500~1000円値下がりするまで待てばいい。

さらにいうと、今春のアンド・ルメールのキャンバススリッポンはかなりの人気で店頭もネットも黒は即日完売だった。白はそれほどでもないが、もう少し期間をおいて完売に近い状況になった。
しかし、その後、一部店頭とネットは追加されて、白は1290円にまで値下がりして、いまだにネットではほぼ全サイズがそろっている。

これが過剰供給による値下がりの一例である。

なぜ、売り切れ御免のZARAのようなスタイルを採れないのか。
まったく理解に苦しむ。

イトーヨーカドーやイオンはもっとひどい。
売れる見込みもないのに過剰に製造して、毎シーズン投げ売りだ。
鳴り物入りで開始して、早々に廃止がきまったヨーカドーの「セットプルミエ」もまったくその手法から脱せなかった。
ゴルチエは半額に値下げされ、一旦格納されてから、また半年後に半額で店頭に並べられている。

だったら、高田賢三とのコラボモデルも半額くらいになるまで待っていても売り切れる心配はないだろう。

アパレルではZARAが売り切れ御免のスタイルだが他業種ではなるべく在庫を積まない工夫がなされている。

筆者は無趣味で、趣味は読書かガンプラを作ることしかない。
アウトドアは嫌いだし、スポーツは嫌いだ。せいぜい週に2回か3回、1時間ずつ走るくらいである。

で、ガンプラ(ガンダムのプラモデル)は意外に大量に製造して積んでいない。
ここからはガンプラ話なので興味のない人は流し読みしてもらいたい。

ガンプラはおもに

144分の1サイズのハイグレードモデル(HG)
100分の1サイズのマスターグレードモデル(MG)

に分かれる。

それ以外にもあるのだが、煩瑣になるのでここでは省略する。

HGはだいたい1000~2500円
MGはだいたい3000~8000円

くらいの価格帯で、筆者はサイズが小さくてお手頃価格のHGをいつも20~30%オフで、家電量販店で買ってきて作っている。
いわゆる素組というやつで、多少削ったりはするが塗装はめんどくさいのでしない。
最近のは塗装がほとんど必要ないほどパーツが色分けされている。

HG(正確にはHGUC)だと11月に201番目のモデルが発売される。
発売当初はそれなりの数量を作っており、広く各売り場に配布されるが、その後、よほどの人気がないと追加補充されない。
とくに201個もモデルがあれば、不人気品番も多数あるだろうが、そういうものは如実に追加生産せずに、たまに追加製造するという仕組みになっている。

だからAmazonでときどき「あの昔のモデルはあるかな~?」なんて探すと現在製造中止で、製造再開待ちだったりする。

家電量販店やAmazonでは発売当初からだいたい20%オフくらいで発売されるもののその後も大きな値崩れは起こさず、30~40%オフ程度で推移する。50%オフにまで下がる商品は相当に珍しく、だいたいが40%前後のオフ率で「お買い得品」となる。

70%オフでさらにレジにて20%オフ、とか、80%オフでさらにレジにて20%オフ、みたいな投げ売りが日常茶飯事のアパレル製品とは様相が異なる。

IMG_1875

(28%オフの1090円に下がったからAmazonで買ったHGガンダムアスタロトオリジン)

また、「どれだけ売れるかわからない」と不安があるモデルに関しては、見込み製造をせずに受注生産している。
「プレミアムバンダイ」、通称「プレバン」という仕組みで、ネット上で「〇〇モデル発売」と一定期間内告知して、その期間内に注文があった数量だけ製造して自宅へと送付する。

要望が多ければ、少しの期間を開けてから「〇〇モデルの追加募集開始」と、また期間を区切って受注を集める。それの繰り返しだ。

一般発売分だと家電量販店で発売日から20~30%オフ価格になるが、このプレバンだと家電量販店には流通せずに注文者とバンダイのやり取りだけだから定価販売される。値崩れは起こさない。
逆に注文者が転売する場合、ヤフーオークションなどでは価格が高騰する。

アパレル各社もアホみたいに見込み生産をせずにこういうやり方を考えてみてはどうか。
ZARAも売れ残りを値引き販売するが、その数量はあまり多くない。売り切れ御免だから初回投入を逃すと、同じ商品は二度と入荷しない可能性があるからだ。

今回はバンダイを事例に挙げたが、他業種では過剰な在庫を生まない手法を懸命に編み出しており、それを実行に移している。ネットの普及という環境を上手く取り入れている。プレバンなんていいう仕組みはまさにその典型だろう。

いつまでも、「トレンド頼みの見込み生産」と「欠品させない病」を発症し続けるアパレル業界は、他業種に比べて著しく工夫が足りないのではないか。

工夫が足りないことを棚に上げて、「物作り」だとか「クリエイション」だとかを必要以上に神聖化したところで、何の効力も出ておらず、投げ売り品を増やしているのが現在の状況だといえる。





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