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南充浩 オフィシャルブログ

自社・自ブランド・自店の強みは何ですか?

2016年10月19日 企業研究 0

 98年のユニクロブーム、08年のファストファッショブームを受けて、自身の長所を見失っているアパレル、ブランドが多い。それが今のアパレル不振の一因ではないか。

ユニクロブームもファストファッションブームも一服感があるが、結局のところ、業界を挙げて価格競争に追随してしまった。
しかし、ユニクロもグローバルファストファッションも数の論理で、低価格・高品質をある程度維持しているのに対し、国内アパレルは販売枚数が少ないため数の論理が使えない。それを無理やり低価格に当てはめるために、生地値を圧縮し縫製工賃を叩いた。その結果、低価格・低品質の商品が市場に溢れることになって、却って自分たちの首を絞めている。これが業界の現状ではないか。

しかもその「低価格品」もユニクロやジーユーに比べて1000円とか2000円高めになっており、価格でも競争できていない。

98年のユニクロフリースブームのころ、1900円に対抗して2900円のフリースを発売した百貨店アパレルがあったが、「企画した人は何を考えていたのか、それを許可した会社の上層部は何を考えていたのか」と不思議でならないが、そもそも1000円高い時点で消費者はユニクロを選ぶ。また百貨店に買い物に来る客が1900円フリースを求めているのだろうか。
消費者はユニクロも買うし百貨店でも買うという行動をとる。
じゃあ、ユニクロで買える物はユニクロで買うし、百貨店で買うならユニクロで買えない物を求めている。
ユニクロと同じ物がほしければユニクロで買う。当たり前のことだ。

例えば百貨店で売るなら、「ユニクロとは違ったおしゃれなデザインのフリース9800円」ではないだろうか。もしくは「ユニクロよりも機能性に優れた9800円のフリース」ではないか。

自社・自ブランドの長所は何かをもう一度考え直す必要があるのではないか。

とはいえ、外野から見ていて長所や強みといえる部分がないアパレルやブランドが多いのも事実である。
そういうところは淘汰されるべきで、そのことに対して同情はない。

逆に長所や強みを自らで発見できたら強いと思う。

少し前に、ある仕事でトランジットジェネラルオフィスの中村社長にインタビューする機会があった。
よくも悪くも軽快な感じの人という印象のみで、話されていることは一応は理解しやすいが、そこに深い共感はほとんど覚えなかった。
筆者とは人間性がまったくかみ合わないのだろう。たぶん、その一回で今後お会いすることもないと思う。

しかし、ウェブ上で掲載されていた彼のインタビュー記事を拝読して、ああ、なるほどと腹に落ちたこともある。
これはこれですごいなと。
たぶん二度とお会いすることもないと思うけど。(重要なことなので二度言いました)

http://fashionpost.jp/portraits/3777

そう。僕30歳手前くらいまでは、すごくミーハーで飽きっぽい自分にコンプレックスがあったんです。でも、あるとき、いろんな友達が僕に聞いてくるようになったんですよ。「中村くん、いまなにが流行ってるの?」とか「いま、女の子とデートするんだったらどこがいい?」とか。

そのころは、“歩く東京ウォーカー”って呼ばれてた(笑)そう言われて頼られるようになると、それがプレッシャーになって、新しいお店ができるとどんどん行くし、そもそも新しいもの好きなんで、レストランとかお店とか、話題のスポットはひたすら誰よりも早く行く、もちろん映画だって観に行くようにしていたんです。

そんなことをやってるうちに、スペシャリストの人が100×1だとしたら、僕は1を100持ってると気づいたんですよ。そうしたら、100×1も1×100も同じじゃん!って霧が晴れて、ミーハーとして生きる道が開けたんです(笑)

この部分である。
確かにご自分でおっしゃっているようにミーハーなにおいをぷんぷんと醸し出されておられた。

で、単なるミーハーならミーハーな人のままで終わる。実際にそんな業界人を数多く見知っている。
しかし、「1を100個知っていることが才能だ」と自分で強みを定義できたところはお世辞や追従なしですごいと感じる。

普通の人はなかなか長所を自己定義できないものである。
しかもここで言われる長所は短所と同一の事柄である。この短所を「それが自分の長所だ」と再定義できる人は本当に一つの才能である。だからこの人は強い。

物事の長所と短所は同じ事柄である。
即断即決は悪く言えば浅慮、軽挙妄動である。
徹底した成果主義は、成果に結びつかない地道な作業を嫌うことである。

徹底したミーハーは、徹底したジェネラリストだともいえる。

これは個人の事例だが、こういう作業がアパレル各社にも必要ではないか。
自社、自ブランド、自店の長所、強みはどこにあるのか?
その定義を確立するということはけっこう重要な事柄で、これができていないために、アパレル各社は今の体たらくに落ちたのではないのか。

国内8000億円の圧倒的規模を誇るユニクロを後追いしたところで、物量差で押しつぶされる。
しまむら、ジーユー相手でも同じことである。

もし、長所や強みのないブランドやショップならそれは存在価値がないということであり、それなら資金的に余裕があるうちに廃業されることをお勧めする。

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