JINSやZOFFといったSPA型低価格メガネチェーン店の出現によって、従来型のメガネチェーン店各社は長らく苦戦を強いられてきた。
そんな中で、メガネスーパーが息を吹き返しつつある。

低価格SPAチェーン店に後塵を拝しっぱなしのアパレル各社も大いに参考になるのではないかと思う。

ただ、気を付けねばならないのは、メガネというアイテムはファッション性もさることながら、いわゆる医療器具としての機能性がはっきりと求められる点である。
伊達メガネという人も増えているが、メガネをかけるひとの多くは視力に何らかの問題がある。
筆者もメガネをかけているが軽い近視である。

近視、遠視、乱視、老眼などさまざまな視力のトラブルがあり、これを解決することがメガネの第一義で、ファッション性はその次になる。

ここが衣料品と大きく異なる点である。
衣料品は特殊な用途を除いてはそこまでの機能性は求められない。
百貨店やファッションビルで購入する衣料品のほとんどはファッション性が第一義である。

だからメガネで使った手法が完全にアパレルでも使用できるとは思えない。
そこはアパレル流にアレンジメントが必要になる。

メガネスーパーの記事を紹介しよう。

9期ぶり黒字復活。死の淵から蘇ったメガネスーパーの「大いなる決断」
http://www.mag2.com/p/news/223169

メガネスーパーを立て直せたのは、プロ経営者の星崎尚彦氏の手腕だという。

アパレル関係の経営者の多くは、コストカットか直観的なファッションセンスの強調か、だいたいどちらかしかない。アホみたいに製造費を削減して利益率を高めるか、曖昧模糊とした「センス」なる無敵の呪文を唱えて、誰にも支持されない芸術作品みたいな商品を作るか、そのどちらかである。

詳しくは本文を読んでいただければわかるが、星崎氏が行った事柄はそういうことではない。
とくに曖昧模糊とした「センスwww」なんて欠片も登場しない。

例えば、J!NSには、コアコンピタンスであるSPA事業モデルがあり、低価格を実現するために、様々な効率化を推進しているからこそ強みである「安さ」を実現できているわけです。

一方でメガネスーパーには、J!NSと同じようなコアコンピタンスは持っていませんので、短期的に低価格にはできても、長期的には、低価格を続けることは難しく、業績悪化に至ったということです。要するに、相手の得意な土俵で戦っても勝つのは難しいということです。

星崎社長は、この敗因をしっかりと把握したうえで「戦略の転換」を図っています。一言でいうと、J!NSなどの競合他社が捨てている部分(力を入れていない部分)で勝負するという方向性に舵をきっています。

具体的には、検査の充実や品質保証、専門コンサルタントの配置やマッサージなどの顧客一人ひとりに寄り添うサービスですね。これらは、J!NS、 Zoffなどが、それほど力を入れていない部分だと思われますので、差別化できている、相手の得意な土俵ではないといえるでしょう。

とのことである。

また

■戦場・競合
戦場(顧客視点での自社の事業領域):アイケア
競合(お客様の選択肢):メガネトップ、パリミキ、J!NS、Zoffなど
状況:国内のメガネ市場は回復傾向にあるようです

■強み
1.眼の健康維持のためのサポートが充実
眼に関する悩みが相談できます

マッサージも受けられます(DOCKアイケアステーション)
2.検査が充実で安心
顔の測定やメガネが本来の力を発揮できているかも測定できます
品質保証も充実

3.自分にあったメガネを探せる
専門のコンサルタントが検査結果などをもとに、一人ひとりに最適なメガネを提案してくれます

そして、アイケアをキーワードに徹底的にサービスを強化する。
とくに驚くべきは、無料だった検査を有料化していることである。
通常、サービスを強化するといった場合、無料ないしは低価格化する。しかし、星崎氏はこれまで無料だった検査を有料化して、単価アップを図っている。

無料と低価格化が顧客サービスだと考えているアパレル各社は考えを改める必要があるのではないか。

ここまでの冷静な分析ができるアパレルの経営者が現在どれほど存在するだろうか。
大概が最終的には「センス」か「コスト大削減」のどちらか、あるいはその両方に逃げ込んでお終いである。

この星崎氏はいつまでメガネスーパーの経営者であり続けるのだろうか。またメガネスーパーの業績は中長期的にはどのように上向くのだろうか。いろいろと興味は尽きないが、個人的に印象に残ったことがある。

星崎氏の経歴である。アパレル企業クレッジの社長を務めたあと、2012年からメガネスーパーの再建に取り組んでいるそうだ。

さて、このクレッジだが、のちに社名を変更してオルケスと名乗るようになる。
「リップサービス」などのブランドを展開していたあのオルケスである。

オルケスは2014年に経営破綻して民事再生法を申請している。
星崎氏が離れてわずか2年未満である。

せっかく経営再建された会社が別の経営者によってわずか2年足らずで経営破綻してしまったのだ。
そのときの負債総額は60億円強。

如何に経営者によって企業の業績が左右されるかわかるではないか。

ちなみに星崎氏のあとにオルケスを引き受けた経営者は、オルケスを含めて携わった会社やブランドをことごとく破綻か赤字転落に導いている。
星崎氏の業績と真逆の功績を誇っている。

オルケスを経営破綻に追い込むまでわずかに2年足らずしか必要としないという手腕である。

これは裏情報として流れてきた噂だが、オルケスは新社長就任数カ月か後から突如として月次売上高が前年同月比を大幅に下回るようになったといわれている。
10%減どころではなく20%減や30%減が当たり前という状況だったと聞いている。
そしてそのまま一度として持ち直すことなく、オルケスは経営破綻した。

プロ野球では「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」といわれるが、アパレルブランド運営も同じだ。
まぐれで成功することはあるが、まぐれで失敗することはない。
これをやれば必ず失敗するといういくつかの手法がある。
オルケスを破綻に導いた「逆プロ経営者」にはその必敗の手腕が備わっているといえ、それはまさに天性の才能ではないかと思えてならない。

オルケスという企業の盛衰を見ると、企業の盛衰は経営者次第だということがよくわかる。