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南充浩 オフィシャルブログ

著名ブランドとコラボする目的をまったく理解しない大手量販店

2016年10月6日 企業研究 0

 いまだに40年前のチェーンストア理論に縛られ続けている大手スーパーに衣料品のブランド化ができるとは思っていなかったが、やはり失敗に終わった。

イトーヨーカ堂「セットプルミエ」など4ブランド廃止へ
http://www.fashionsnap.com/news/2016-10-05/iy-brand-close/

そごう・西武とイトーヨーカドーのプライベートブランド「セットプルミエ(SEPT PREMIERES)」含む衣料品3ブランドと、「フランフラン(Francfranc)」を運営するバルスとの雑貨ブランド「ボンボンホーム(BON BON HOME)」の計4ブランドを2017年2月期中に廃止する。

ファッションスナップには書かれていないが、他社の報道では、メンズ2ブランドも廃止になり、これで合計4ブランドの廃止である。

「セットプルミエ」はちょうど1年前にゴルチエとのコラボ商品を発売した。
今秋冬商品として高田賢三とのコラボ商品を発売しているが、秋冬商戦がようやく本格化するこの時期に廃止を発表するのはまったくタイミングが悪いと思う。

買う側も売る側もモチベーションはまったく上がらない。
ボンボンホームはすでに以前に廃止を発表しているから、セットプルミエの廃止発表をもう少し遅らせることはできなかったのだろうか?

それにしてもバルスとコラボして雑貨ブランドを作る必要性があったのだろうか?バルスに破格の条件でテナント出店してもらったほうが成功したのではないか。

「追加」という形で年末年始ごろにセットプルミエ終了を発表したほうが良かったのではないかと思う。
流通大手のえらいさんの考えていることはいつもピントが少しズレている。

鳴り物入りでデビューしたゴルチエとのコラボ商品だが、「好調だった」というセブンアイの大本営発表とは裏腹に「売れていない」という評判が業界には流れていたし、SNS上でも広く流れていた。

実際、今夏バーゲンの末期に、昨年秋冬のゴルチエの売れ残り在庫が半額で投入されたのを見たときに、「ああ、これは本当に売れていなかったんだな」と理解した。そして「あとどれくらい不振のイトーヨーカドーがこのコラボ商品を我慢して続けられるのだろうか」と不安に思ったのだが、イトーヨーカドーの我慢は予想以上に短かった。

IMG_1627

(売れ残り在庫を半年寝かせて半額で投入されたゴルチエとのコラボ商品)

ブランド廃止は不採算なら当然だという意見がある。その意見も確かに間違いではないが、我慢して一定期間をやり続けないとブランドなんて認知されない。
たった2シーズンで認知されるなら、みんながブランド衣料を商売にしている。
巨額の赤字なら2シーズンで撤退するのもやむを得ないが、そこまでの赤字でないなら3年~5年は最低でも我慢し続けないとブランドの認知度は高まらない。
今回我慢できなかったイトーヨーカドーは今後何度やってもブランドとのコラボを失敗し続けるだろう。

以前にも書いたが、ユニクロもそうだが大手量販店はすべからく根本的にコラボ商品の扱い方を間違っている。
低価格ブランドが著名ブランドとコラボ商品を発表する意図をユニクロもセブンアイも他の量販店もまったく理解していない。

自社の低価格品のみではブランドのステイタス性が向上しないから、著名ブランドの力を借りるのである。
著名ブランドとコラボをすることで一般消費者から「おお、あのブランドとコラボできるとは、あの著名ブランドからも評価されているんだな。ちょっと見直したわ」と思われることが目的である。
そしてそれによって、自社のステイタス性を向上させられる。

著名ブランドとコラボできるということは、表面的にはそのブランドが相手先をそれなりに評価しているからだ。
(内実は別として)

なら、そういうものはいわば「おかず」だったり「付け合わせ」だったりする。
「米の飯」は自社の通常商品で、おかずや付け合わせと一緒にすることで「米の飯」を美味しく食べてもらうのが理想だ。
通常の食事なら「米の飯」の分量がもっとも多く、おかずや付け合わせは少な目である。

おかずや付け合わせだけで満腹になろうとする人は炭水化物ダイエットをやっている人くらいだろう。

コラボ商品も同じでおかずや付け合わせ程度の数量を製造すれば良いのである。
低価格ブランドの製造枚数は破格に多いから、コラボ商品は経済ロットを最低限クリアできる程度の数量を製造すれば良いと思うのだが、ユニクロも含めて「機会損失」を病的に嫌うために過剰生産を行っている。

その結果が、アンドルメールやゴルチエコラボの投げ売りである。
投げ売りをすることでコラボ商品のブランド価値を毀損している。
また過剰数量を店頭に投入しているから、消費者は「これだけたくさんあれば、値下がりするまで待っても売り切れない」と安心して、定価では買わなくなる。

だったらコラボ商品は1万枚程度作って、売り切れ御免にすればよい。
次シーズンからは売り切れを恐れる消費者は定価で購入する比率が高まる。
コラボ商品でも「機会損失」をなくそうとして過剰生産するのは本当にバカじゃないかと思う。

「過剰な機会損失恐怖症」を克服しない限り、コラボ商品なんて100年やったって絶対成功しないし、ステイタス性は永遠に向上しない。

ダイヤモンドオンラインで、セブンアイの前会長の鈴木敏文氏が連載をされている。

http://diamond.jp/category/s-shuhitsu-suzukitoshifumi

これの2回目だか3回目だかで、珍しく明確に「チェーンストア理論」を否定しておられるくだりがある。
理論そのものを否定しているのではなく、現代社会に理論が適合しなくなってきたという論調で、その認識は正しいと感じる。
それに続けて「コラボしたセットプルミエは売れている」と書いておられるのだが、ああ、この人はやっぱり衣料品に関してはまったくダメだなと感じた。
売れていなかったから、半年間寝かせた売れ残り在庫を半額で店頭投入したり、ブランド廃止になったりするんじゃないか。

この手の経営者がトップであり続ける限り、食品や日用消耗品はどうだかしらないが、量販店の衣料品部門が復活することは絶対にない。

大手総合スーパーの衣料品部門はまだまだ低迷し続けるだろう。
どこが真っ先に音をあげて衣料品部門を廃止するのか見物である。




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