都心近郊の中型都市の百貨店、GMS閉店の発表が止まらない。
例えば、八尾西武、つくば西武、柏そごう、三越千葉店などである。

なぜ閉店するかというと売上高が減少し続けているからだが、売上高が減少する理由は2つある。

1、都心まで電車で1時間以内なので、ファッション衣料を買う場合は多くの人は都心へ行く
2、近隣に郊外型の大型ショッピングセンターが作られた

この2つである。
この手の中型都市の百貨店の多くは、総売り場面積が狭くて、品ぞろえが中途半端である。
そのため、品ぞろえが豊富な都心店か郊外型の大型ショッピングセンターのどちらかに客を取られるのである。

例えば、関西在住の筆者から言わせれば、近鉄八尾駅前に百貨店が必要なのかと疑問を感じる。
なぜなら八尾から近鉄電車で20分もかからずに難波に到着できる。
だったら売り場面積も広くて品ぞろえが豊富な高島屋難波店で買ったほう良いのではないか。
また難波に出れば近隣にファッション衣料を売っている商業施設がひしめいている。
高島屋で目ぼしい物が見つからなければ、なんばシティでもマルイでもなんばパークスでもいくらでも選択肢がある。

だったら八尾西武で買う必要はない。

つくば西武も柏そごうも三越千葉店も同じだ。
全部1時間以内に東京都心にたどり着くことができる。

従来型の中型百貨店であり続ける限り、これからも近郊地方都市の百貨店はどんどん閉店し続けるだろう。

「中元歳暮などの贈答品は百貨店で買いたい」という地方民からの要望もあるが、それなら、贈答品専門の百貨店地方分室のような売り場を作れば済むことであって、最大限に広くても50坪くらいの店を構えればよい。
従業員も5人くらいでローテーションを組めば十分にやりくりできるだろう。

贈答品需要がある人はこのプランを百貨店に提案すべきである。
このくらいのプランなら百貨店も即座に実行できるのではないか。

品ぞろえでは地方都市百貨店は絶対に都心大型百貨店と郊外型の大型ショッピングセンターには勝てない。

じゃあ、接客で差別化だとか関係性の強化で差別化だとかいう提案もあるが、そもそも「品ぞろえ」で劣っていて、客は購買意欲をなくしているのに、そこにいくら販売員がワーワーしゃべったところで買う気にはならない。
また関係性を強化しても、わざわざ品薄の店で買うことはほとんどない。

また、低価格に走っても郊外型の大型ショッピングセンターやユニクロやしまむらには勝てない。

となると、品ぞろえの豊富さでもなく、低価格でもない切り口の売り場を作る必要があるということになる。

先日、ある仕事でカルチュアコンビニエンスクラブ(CCC)の増田宗昭社長にお会いした。
断っておくと、初めてお会いしたし、増田社長は筆者のことなんて知っておられなかったし、今後すごく仲良くなることもなく、その場限りの仕事での関係ということになるだろう。知り合いでもなんでもない。

人脈を自慢したいのではなく、彼から枚方Tサイトの感想レポートを送れと言われた(たぶん冗談で)ので、書いてみたい。

品ぞろえの豊富さでも低価格でもない。

これを意識して作ったのが枚方Tサイトだという。
今年5月にオープンしたばかりの新しい商業施設で、CCCが運営している。

枚方も八尾やつくば、柏と同じで、京阪特急で10分くらいで京橋に着く。
天王寺や難波、梅田よりは店数は少ないが京橋もそこそこのターミナルなので、地方都市よりは店数が多い。

近鉄百貨店枚方店の跡地に開業しており、売り場面積は約5300平方メートルしかない。
坪数にすると約1600坪で、今時、ユニクロだって単独で1000坪店があるから、商業施設としてはかなり小さいといえる。

近鉄百貨店枚方店時代の売り場面積は約12000平方メートルあったというから、現在の売り場面積は半分以下にまで縮小している。
6階と7階がまるまる銀行なのでこの2フロアが売り場としては稼働していないためだろう。

訪れたのは9月上旬の平日の午後3時過ぎから4時過ぎまでである。
6階と7階の銀行は閉まっている。実質的に2フロア稼働してない状態である。
その割には店内はにぎわっている。
オープン景気ということも考えられるが、オープンから4か月が経過しようとしており、単なるオープン景気だけということは考えにくい。
固定ファンが付きつつあるといえるのではないか。

フロア構成は

地下1階 – フードマーケット
1階 – 食マルシェ
2階 – TSUTAYA
3階 – BOOKS & CAFÉ
4階 – 暮らしと美容
5階 – 子どもと学び
6階 – 三菱東京UFJ銀行
7階 – りそな銀行
8階 – レストラン

となっているが、ワンフロアはそんなに広くない。
1600坪を8階で割るなら、1フロアは平均で200坪しかないということになる。
今時1ブランドでも200坪くらいの売り場は珍しくない。200坪を何ブランド(何店か)で分けるのだから1ブランド(1店)あたりの面積は当然狭い。
狭いから、4階のアパレル&雑貨も、5階の子供服&雑貨、絵本もそんなに品ぞろえが豊富ではない。
8階のレストランも3店ほどしかない。

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(外観)

地下1階の食品売り場を覗いてみたが、ペットボトルの飲料が定価で販売されていて安くない。
大概の食品スーパーならコンビニよりもペットボトル飲料は安く割り引かれている。
筆者が愛用するスーパー万代なら、500ミリのペットボトルのコーヒーは80~90円である。
コンビニなら150円だ。

Tサイトは150円で売っており、定価販売である。
にも拘わらずそれなりににぎわっている。
もしかしたら近隣の京阪百貨店食品売り場の方が安いかもしれないのにである。

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(銀行)

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(5階の子供フロア)

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(4階のウェアと雑貨)

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(地下の食品売り場)

品ぞろえも豊富ではなく、安くもないのに地方都市駅前で集客ができている。

これは現在苦境にある地方都市百貨店が生き残るためのヒントになるのではないか。

増田社長から受けたレクチャーを少しかいつまんでまとめてみる。

今は商品もプラットフォーム(店、ウェブサイト)も溢れており、オーバーストア状態にある。
品ぞろえの豊富さを追求すれば中野区ほどの広さの倉庫を持つAmazonには勝てない。
安さを追求すればダイソーやユニクロ、しまむらなどのカテゴリーキラーには勝てない。

じゃあどうすれば良いか。

提案力を向上させる。
「あの人」がとか、「あのブランドが」とか「あの会社が」提案しているから、行ってみようか、買ってみようかと思わせられるようなブランド性を作り上げ、それによって提案力を向上させる必要がある。

そうすれば、品番を広げる必要はなく、逆に絞り込んだ品番でもお客様は買ってくれる。
価格が安くなくても買ってくれる。

とざっとそういう内容である。

それを実践してみたのが枚方Tサイトだということで、今のところそれは成功しているのではないかと見えた。

もちろんCCCの編集スタイルや提案する商品が気に入らないという人は存在するだろう。
しかし、誰にでも好かれるような品ぞろえや提案は郊外型の大型ショッピングセンターに任せておけば良いのである。またAmazonにでも任せておけば良いのである。

限られた小さい売り場面積でどうするのかという答えが、ブランド性を向上させて提案力をつけ、陳列品番を絞り込むしかない。

ここまでの売り場作りは成功ではないかと思う。今後、1年後、3年後、5年後と今の勢いが続くかどうかである。
もし今の勢いが続くようであれば、地方百貨店には格好のリニューアルモデルになるのではないか。
ただし、それもこれも地方百貨店の「ブランド性」を向上させられることが前提となる。
そこに対する取り組みを行わない限り、小手先のマイナーチェンジでは生き残ることは難しい。

中途半端な中型地方百貨店が小手先の接客強化だとか、掛け声だけのオムニチャネルだとかそんなことをしてもまったく効果がないだろう。

代官山 オトナTSUTAYA計画
増田宗昭
復刊ドットコム
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TSUTAYAの謎
川島 蓉子
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