先日、東京に行った際に、フリーランスのMDとして活躍されている佐藤正臣さんとお会いした。
アパログでマサ佐藤のペンネームでMDブログを書いておられる。

http://www.apalog.com/fashion_soroban/

最初に登場されたときに「マサ佐藤」を「マサ斉藤」に見間違えて「プロレスラーのマサ斉藤がブログを書くのか、アパログは斬新やなあ」と感心していたら、別人だと気付いた。

プロフィールにも書いておられるようにずっとノーリーズの販売員として勤務したあと、MDを担当されたとのことで、いろいろと実際のマーチャンダイジングをご教授いただき、非常に参考になった。

その中で、意見が一致したのが「トレンドアイテムをすべて作る必要があるのか?」ということだった。

世間一般に「トレンド品」とひとまとめにされることが多いが、トレンドのアイテムは毎シーズンいくつかある。
一つきりではない。

こんなことは業界の人なら当たり前であろう。

例えば、今はワイドパンツがトレンドになっているが、それ以外にもトレンドとして人気のあるアイテムがある。
もう数シーズン目になるがMA-1タイプのブルゾンもトレンドだし、今の時期なら「ヘソ出しルック」ができるような短い丈のトップスもまだトレンド品だ。

それぞれ、ブランドにはブランドコンセプトというものが存在する。
もちろん、やっつけで看板だけのコンセプトを掲げているブランドもたくさん存在する。

ブランドコンセプトやターゲット設定に沿えば、本来なら取捨選択するアイテムがあって当然である。
ひどくわかりやすくいえば、ナチュラルテイストのブランドなのでMA-1タイプのブルゾンは作りません、という選択はあっても当然だということである。

しかし、現在の各ブランドの店頭は「トレンド品」といわれる商品をほぼすべて並べている場合が多い。

消費不振といわれる状況下にあるから余計に売上高を確保するために、なるべく多くのトレンド品を並べたい気持ちは理解するが、それが店頭の同質化をより加速させており、逆効果になっている。

どのブランドでもすべてのトレンド品がそろうなら、一番よく目立つ店、一番安い店、一番利便性が高い店が消費者に選ばれやすくなる。
どのブランドを見てもほぼ同じに見えるから、消費者はそういう選び方をしやすくなる。

先ごろの経産省の提言でもあったように、「安易なトレンド品を並べて同質化している」という指摘は正しい。

個人的にはその解決策が「個性的な商品を作るクリエイターの育成」だけでは片手落ちではないかと思っているのだが、それは今回は関係ないから言及しない。

ブランドコンセプトとターゲットに沿って、例えば、「MA-1タイプのブルゾンは作らないが、コーディガン(コートとカーディガンの中間的なつくりをした上着)は作るとか」「ワイドパンツは作らないが、ひざ下丈のスカートは作る」とか、そういう取捨選択がブランドごとにできれば、店頭の同質化・均一化は防げる。
あくまでも理論上は。

とはいっても洋服は売れてナンボだから、トレンドを全く無視するというのもおかしな話になる。
じゃあ、MA-1タイプのブルゾンを作らなかったブランドも、その中に着られるようなセーターやらトレーナーは企画製造すれば良いのではないか。
そしてそれを販売員がキチンと接客できれば、売上高を維持できるのではないか。

「ブランドコンセプトに従ってMA-1タイプのブルゾンは製造していませんが、インナーとして合わせれば映えるセーターやトレーナーはあります」というような売り方は可能なのではないかと思っている。

マサ斉藤マサ佐藤さんとはそんな内容のことを話した。

少し思い返してみると、バブル期とかバブル崩壊直後くらいのブランド店は、ずいぶんと個性的だったように感じる。記憶補正で美化されてしまっている可能性は否定できないが、93年か94年ごろは、トレンド品を買うのにもいろいろと店を回らなければならなかった。

なぜなら、どの店でもそれを扱っているとは限らなかったからだ。

当時はまだDCブームの残り香もあったし、商業施設内にもそういう店が数多くあった。

当時の筆者の目からすると「トレンド無視かよ」と思えるような商品を置いたブランドもたくさんあった。
それでも各々のブランドにはファンがいて、トレンド無視とも思える商品を買っていた。
それも決して安くはない価格で。

ファストファッション、グローバルSPAブランドというものを目にした今の消費者が当時の消費者と同じような消費行動をすることは考えにくいが、店頭の同質化・ブランドの均一化を打破するためには、ブランドコンセプトとターゲット設定に即してのトレンド情報の取捨選択が重要なのではないかと改めて思う。

クリエイターの個性的な商品なんかを強化するよりも、ブランドとしての情報の取捨選択をもう一度再構築する方が効果的ではないかと思う。

なぜなら個性的なデザインの洋服は着る人を選ぶから、そういう物が市場に大量に出回れば、結局売れ残りが増えるだけであり、その売れ残りが大幅値引きされて投げ売られるだけなので、結果的には洋服の価格低下は止まらないということになりかねないからだ。

それよりも一般ブランドがブランドコンセプトとターゲットに沿ってトレンド情報を取捨選択して、独自の企画に落とし込んだ方が、着る人を選びにくいデザインでしかも同質化しないので、結果的には各ブランドが住み分けできるのではないか。

まあ、そんなことを考えた。