三陽商会が2016年12月期業績の見通しを発表したが、営業・経常・当期損益ですべて大幅な赤字となり、来年上半期までにさらに5ブランドの廃止も明らかにした。

三陽商会、今期95億円の最終赤字へ 追加で来期5ブランドを撤退
https://www.wwdjapan.com/business/2016/07/29/00021116.html

三陽商会は、2016年12月期業績が95億円の最終赤字を計上する見通しだ。期初予想は3億円の黒字だった。

過去最大の赤字になる。昨年6月末で契約終了した英「バーバリー」の後継として投入した「マッキントッシュ ロンドン」および「ブルーレーベル・クレストブリッジ」「ブラックレーベル・クレストブリッジ」の販売が計画を大幅に下回ったため。

売上高は700億円(期初予想は770億円)、営業損益は68億円の赤字(同20億円の赤字)、経常損益は66億円の赤字(同17億円の赤字)にそれぞれ下方修正する。

とのことで、経営危機に陥ったといえる。

原因は明言されているように「バーバリー」がなくなったあとの「マッキントッシュ ロンドン」と「ブルーレーベル・クレストブリッジ」「ブラックレーベル・クレストブリッジ」の不振である。

多くの方が書いておられるように、「バーバリー」亡き後をこの3ブランドに託すことを三陽商会は甘く見すぎていたのではないか。

英バーバリー社とのライセンス契約打ち切りに懲りて、日本の企業である八木通商が経営権を持っている「マッキントッシュ」とライセンス契約を結んだ。
たしかに外資ブランドのように突然に契約打ち切りを行うようなことはないだろうが、バーバリーとマッキントッシュとではブランドの知名度に雲泥の差がある。
現在のバーバリー顧客がすんなりとマッキントッシュなんぞに乗り換えるはずがないことは素人にでもわかる。

三陽商会もそれくらいは覚悟はしていたと思いたい。

中長期的にブランドを育てるほか、マッキントッシュの浮上策はない。

業界に携わる人にも考えてみてもらいたいのだが、20万円のコートを買うときに、バーバリーと無名ブランドのどちらを買いますか?

マッキントッシュは一般的には無名ブランドの立ち位置に近い。
同じ20万円のコートを買うときにバーバリーとマッキントッシュのどちらを選ぶか。
おそらく9割の消費者はバーバリーと答えるだろう。
2000円のコートなら無名ブランドを買って失敗しても惜しくはないが、20万円という大金なら失敗は絶対に許されない。
失敗しないためには定評のある方を買う。

バーバリーというブランド名はファッションに興味のない人でも多くに知られている。
マッキントッシュというブランド名はどうだろうか?ファッションに興味のない人にはほとんど知られていない。

だったらどちらを買うかは目に見えている。
これがいわゆる「ブランド力」とか「ステイタス性」とか言われるもので、こうなるまでには長い月日と多額の費用が必要になる。

おそらく、三陽商会もマッキントッシュが定着するまでに長い月日と多額の費用が必要なことは理解していただろう。理解していなかったらおしまいである。

そういうわけでマッキントッシュの推移は今後見守るしかない。

個人的には、マッキントッシュよりもクレストブリッジの方が問題だと思う。

今回、追加で廃止される5ブランドについて具体的名称は挙がっていないが、個人的には「クレストブリッジ」の両ラインを廃止したほうが良いと思う。

三陽商会はクレストブリッジは旧両ラインのファンがすんなりと乗り換えてくれることを期待していたのだと勝手に想像する。
なぜなら、クレストブリッジはバーバリーとのライセンス契約から生まれたブランドだからだ。

三陽商会からすれば、バーバリーとの新たなライセンス契約から生まれたクレストブリッジを、旧両ラインのファンはすぐさま支持してくれると考えていたのではないか。
しかし、それは甘い想像にすぎない。甘すぎる。

一般消費者はクレストブリッジがバーバリーとのライセンス契約によるブランドだとはほとんど知らない。
もしかしたら業界人ですら知らない人がいるかもしれない。

となると、消費者からするとバーバリーとクレストブリッジは全く別ブランドなのである。
去年生まれたポッと出のブランドとクレストブリッジは同一線上にいるのと同じだ。

知名度はまるで違うのに、価格はバーバリー・ブラックレーベル、バーバリー・ブルーレーベルの旧両ラインと同じである。こんなバカ高い無名ブランドの商品を誰が買うというのだろうか。
三陽商会とクレストブリッジ関係者は本当にそれで「ある程度は売れる」と思っていたのだろうか。もし思っていたのなら本当におめでたい。

マッキントッシュを育成できる可能性よりもクレストブリッジを育成できる可能性の方が低いのではないかと、個人的には見ている。だから廃止をお勧めしたい。

バーバリー社との契約内容にもよるのだろうが、三陽商会の自社ウェブサイトにもクレストブリッジは掲載されていない。クレストブリッジ単体で別にウェブサイトが開設されており、こんな扱いでは三陽商会にとっては何の旨味もなく、シビアにいえば、バーバリー社にライセンス料だけを搾取されていると言っても過言ではないだろう。

それにしても、バーバリーとの契約打ち切りで泣かされた三陽商会が、その穴埋めに選んだ方策が「別のブランドとのライセンス契約」というのはちょっとギャグかコントにしか見えない。
違うのは、マッキントッシュの経営権が日本の企業である八木通商が握っており、外資ほどドラスティックな契約更新はしないだろう(という期待感)という点だけである。

自前ブランドを育成してこなかったツケが一気に押し寄せており、ライセンスブランドに裏切られてもまだ自前ブランド育成に踏み出せなかったことが今回の経営危機を招いているといえる。
一時期はバーバリーの代わりとしてポール・スチュアートというブランドを想定したこともあるが、これとてもライセンスブランドであるから、根っからのライセンス依存体質なのだといえる。

しかし、ライセンスブランドが効力を発揮するのは、ブランドの知名度が高い場合に限られる。
無名のライセンスブランドは自前ブランドを育てるのと同じくらいに労力と費用がかかる。
自前ブランドなら労力と費用の持ち出しだけで済むが、ライセンスブランドはそこからライセンス使用料がさらに徴収される。どちらが資金的に苦しくなるかというとライセンスブランドの方である。
だから、自前ブランドを育てるよりも、無名ブランドとのライセンス契約の方がリスクが高いといえる。

自前ブランドの育成が三陽商会には最善の策だと思うが、すっかり長い間にライセンスブランド依存症となっている。当然、自前ブランド育成のノウハウがなくなっているだろうから、どちらの道を採ろうと苦戦は免れ得なかっただろう。
追加のブランド廃止があるということは、さらなる人員整理もあるということである。
三陽商会の苦境は当分続く。




クレストブリッジ チェックトート 37.5×42.5×11cm cb-000362 CRESTBRIDGE レッド系 メンズ
ブラックレーベル・クレストブリッジ(BLACK LABEL CRESTBRIDGE)