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南充浩 オフィシャルブログ

犬も歩けばLeeとチャンピオンに当たる

2016年7月29日 売り場探訪 0

 久しぶりにファッションビル、セレクトショップを覗いた。
夏バーゲンの中だるみの時期である。
店頭はほとんどバーゲン品だが、目ぼしいものはあらかた売れてしまったが、もう一段の値下げはまだである。
晩夏・秋冬向け新商品はそれほど入荷していない。
そんな時期である。

8月に入ったらもう一段の値下げに入るが、それまでは中だるみの時期が続く。

商品の見た目も品質も、低価格ブランドとそれほど変わらなくなったから、2005年以降ファッションビルブランドでセール品を買うことが少なくなった。
2010年以降は百貨店ブランド、ファッションビルブランドで商品を買っていない。
2010年以降に買ったのは、ユニクロ、ライトオン、ジーンズメイト、無印良品、レイジブルー、GAP、バナナリパブリック、ジーユー、ウィゴー、チャオパニックティピー、グローバルワーク、ZARA、イトーヨーカドー、西友である。
しかも全部値引き品だ。定価では1品も買っていない。

それはさておき、買わないが、ときどきはファッションビルも覗く。

今夏、ファッションビルのテナントに入店しているセレクトショップ系チェーン店で目に付いたのが「Lee」と「チャンピオン」のダブルネーム、別注品の多さである。

IMG_2657
デニムとコーデュロイのクラッチバッグ

猫も杓子もLeeとチャンピオン、犬も歩けばLeeとチャンピオンに当たる、そんな感じである。

独立系デザイナーやら小規模ブランドは資本力がないから、直営店を複数まとめて出店することは難しい。
必然的に卸売りで売上規模を拡大するということになる。
専門店やセレクトショップに向けて卸すことになるが、その際、問題になるのが「バッティング問題」である。
野球のバッティングではない。そんなものは張本勲にでも任せておけば良い。

英語のスペルはまったく同じだが、「予定などがかち合うこと。物事が競合すること」という意味もある。
業界でバッティングというとこちらのことを指す。

要するに近隣店や競合店に同じ商品が入荷するのを嫌うということである。

隣り合った店に卸すことはさすがに避けた方が良いとは思うが、少し離れた(といっても3キロ~5キロくらい)離れた店に卸すことまで禁じようとするのはどうかと思う。
ケツの穴の小さい店は、業界外の人が想像するより多い。

衣料品不振といわれる状況だから百歩譲って、そういうことを言い出す気持ちはわからないではない。
わからないではないが、じゃあ、このLeeとチャンピオンであふれかえっている店頭をどう説明するつもりなのか?

自分たちが争ってLeeとチャンピオンの商品を並べたのだろう。
同じフロアにそれを扱っている店舗が何店舗もあるというのに。
これこそ究極のバッティングではないか。
それでよくぞ、小規模ブランドに「バッティングが~」と抗議できたものだと呆れ果てる。

自分らが勝手に同質化しているくせに。

これはまた別途書いてみるが、先ごろ話題となった経産省からの提言には、「無難な売れ筋追求に終始して同質化した」とあったが、それはメーカーだけの責任なのか。
小売店は放っておいても勝手に同質化しているではないか。

さらにいうなら、メーカーがいくら「変わったもの」を作ろうと、販売する小売店がそれを拒否するなら、そういう商品は店頭に並ぶことがない。
経産省も業界のエライサンも何か勘違いしているんじゃないか。

経産省も業界のエライサンも基本的に物作り脳しか持ち合わせていない。
だからいまだに「個性的な商品を作る」ことだけを重点的に考えているのだが、いくら作っても小売店や流通業者がそれを選択しなければ結果は同じなのである。
店頭にそういう物作り脳の人々が好むような「個性的な商品」は並ぶことがない。店頭に並ばないということは消費者の目に触れる機会はほぼなくなるということだ。

これだけLeeとチャンピオンで同質化しておきながら、「バッティング問題」を言い出す小売店側の身勝手さにも驚くばかりだ。

こういう店頭の同質化は今にはじまったことではない。
何年も前から変わっていない。並んでいるブランドがそのシーズンによって異なっているだけである。
ラベンハムだったりニューバランスだったりノースフェイスだったりしただけのことである。

小規模ブランドをバッティングで締め上げながら、人気ブランドはバッティングを気にせずに店頭に並べる。
そういう小売店は自らは気が付いていないだろうが、ブランドにおんぶに抱っこの状態である。

ブランドに頼り切っているだけだと、自らカミングアウトしているに等しいことになぜ気が付かないのか。

「ブランドを並べていたら売れる」という高度経済成長かバブル期の思考から抜け出せていないのが、そういう店のスタッフであり、バイヤーであり経営者である。
そういう店は実は存在価値がなくて、現在の顧客は店ではなく、品ぞろえを評価しているだけなのである。

しかし、もし、同じ品ぞろえの店があれば、その店はまったく要らないということになる。
同じ品ぞろえでさらに値引き販売する店が近隣にできればすぐさま潰れる。

「他店で人気があるから」とか「世間的にブームだから」とか「有名店や大手で扱っているから」とか、そういう理由だけでLeeとチャンピオンを並べることに何のためらいも感じない小売店に、小規模ブランドをバッティングで縛る資格はまったくない。





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