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南充浩 オフィシャルブログ

衣料品1枚あたりの平均価格は2400円

2016年7月12日 考察 0

 今日も比較的お気楽に。

【何の値?】2400円―高い安い?
http://www.senken.co.jp/news/sales/averagepricefashion/

記事によると、正確には2405円である。
何の値段かというと、日本で売れている衣料品一枚当たりの価格の平均、だそうだ。

記事中には過去10年間くらいの平均価格の推移のグラフがあるのだが、2004年ごろは2500円くらいで、08年から09年にかけて急激に低下している。
その後も下がり続け、2011年の2136円を底値にして上昇に転じ、13年から14年にかけて急激に上昇して2405円になっている。

さて、この記事では

ここからどんなことが読み取れるでしょうか? 安いだけでは消費者は買わない!と気付いた企業が再び、値段を上げ始めた、ということです。

と分析しているが、これはどうだろうか?
個人的にはちょっと違うなあと思う。

まず時系列的に見てみよう。

急激に価格が低下した08年だが、この年にリーマンショックが発生した。
次にこの年にグローバルファストファッションが本格上陸した。

価格低下の大きな原因はこの2点だと考えられる。
グローバルファストファッションが上陸して、かなりのブームとなり、価格低下したあとにリーマンショックが発生して消費者心理をさらに冷ました。

09年はリーマンショックの実害が表面化した年でさらに消費者心理は冷えた。

そして底値の2011年は東日本大震災が起き、自粛ブームで消費者心理は極限まで冷えている。
12年に上昇に転じたのは別に何かが好転したわけではなく、自粛ブームの反動であろう。

13年にかけては横ばいだが、14年にかけて急激に上昇した理由は「企業が良い物を高く売ろうとした」わけではない。

まず、政権交代が起きて株価が急上昇に転じたこと、円安基調に転換したことが挙げられる。

14年にかけての価格急上昇の理由はまず3つある。

円安基調
アジア各国(主に中国)の人件費高騰
原材料費の高騰

である。

そこに付け加えるならアベノミクスが開始されて株価が急上昇した。
これによって富裕層の購買が活性化したことも要因の一つと考えられる。

この統計は2014年で終わっているが、おそらく2015年は横ばい、2016年は再び価格低下に転じているのではないかと推測される。

2015冬くらいからユニクロは再び値下げに転じた。
理由は売上高が伸び悩んだからだ。

この動きを指して、「政府のデフレ脱却路線にノーを突き付けた」みたいな評論の記事があったが、それも首を傾げざるを得ない。別に政府の経済政策云々ではなく、単純に値上げによってユニクロに客離れが起きつつあったからだ。
それは単にユニクロのブランド政策の問題に過ぎない。
もっとも消費者心理がデフレマインドであるということは事実だろうが。

ちょっとこの記事の分析が乱暴だなあと思うのは「価格訴求だけでは消費者が動かなくなった」という結論付けである。
もしかしたら結論ありきで記事を組み立てたのではないかとも思う。

価格訴求だけでは消費者が動かないのは以前からも同じである。
かつて、グローバルファストファッションに注目が集まったのは安さだけではなく、トレンドの取り込みが早いことにも要因があった。
安さ+トレンドが評価されたといえる。

ユニクロの場合は、安さ+品質である。

ジーユーが急成長しているのは、安さ+トレンドだろう。

こう見ると、常に安さプラスワンのブランドが支持されているといえる。
安いだけで良ければ青山商事のキャラジャはもっと拡大成長しているだろうし、マルトミは倒産しなかっただろう。
200円以下のヒラキの靴はもっと売れているだろうし、ハニーズも苦戦しないだろう。

平均価格の推移は貴重な資料といえるが、もう少しシビアに分析したほうが良かったのではないか。



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