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南充浩 オフィシャルブログ

ファッション化が進む低価格衣料品

2016年7月1日 考察 0

 最近は本当にトレンド商品の供給が、いわゆる「ブランド」と低価格店で差がなくなってきたと感じる。
ほぼ同時に同じアイテムが店頭に並んでいる。

ユニクロやらジーユーやらしまむらやらの低価格ブランドがそうなっていることは一般的にも広く知られているが、スーパーマーケットでもこの傾向は同じである。
GMSと総称される大型スーパーの衣料品売り場は結構なトレンド物が並んでいる。

もう1,2か月前のことになるが、また西友を覗いた。

例えば、半袖のスタンドカラーシャツが並んでいる。
また、デニム調のジョガーパンツが並んでいる。

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見た目もそれなりの雰囲気に見えるし、生地が格別に安っぽく見えるわけでもない。
黙って着ていたら、専門店やセレクトショップで買ってきた商品と区別できないだろう。

ちなみにこのデニム調のジョガーパンツは「VALMAN(バルマン)」というブランド名が下げ札に表記されているので、西友の自社企画商品ではなく、コイズミクロージングから仕入れた商品だということがわかる。
有名な高級ブランドにBALMAIN(バルマン)というのがあるが、日本に本格的に上陸できないのは、このコイズミクロージングのバルマンとの兼ね合いだと聞いたことがある。

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(VALMANの下げ札)

20年前だったらここまでジャストタイムでトレンド品がGMSの売り場に並ぶことはなかった。

記憶の中にあるジャスコやイズミヤの衣料品売り場はやっぱり専門店、百貨店、セレクトショップと比べるとトレンドが遅れていた。
トレンド商品がほとんどなく、そのトレンドが終わるころにやっと売り場に並ぶということが多かった。

それが今ではほぼ同時である。
GMSの衣料品売り場はあまり消費者に顧みられることが少ないが、以前に比べるとずいぶんと変わってきている。

通常、業界ではこのようにわけられてきた。

専門店、百貨店、セレクトショップはファッションを売る
低価格店、量販店は実用品を売る

と。

しかし、現在はこの構図は事実上崩れ去っている。
低価格店、量販店もファッションを売っている。

なぜなら、実用品を持っておらず困っているという人は現在、ほとんどいない。
明日穿く肌着のパンツが1枚もないなんて人はほとんどいない。
手持ちの靴下が3足しかなくて、それが全部穴が開いているなんていう人はほとんどいない。

もちろん、実用品の買い替え需要はあるが、買い替え需要程度だから、毎年衣料品を購入してもらうためにはファッション衣料を売るほかない。
低価格店、量販店がファッション衣料を販売するのは当然といえる。

日経ビジネスオンラインに先ごろ掲載されたしまむらの社長インタビュー記事がある。

しまむら、新・成長モデルで復活の兆し

制度疲労の効率経営に“はさみ”を入れる
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/061300048/?P=1

で、その中でこういう発言がある。

「閉店した地方百貨店や専門店の顧客が『しまむらも捨てたもんじゃない』と来てくれるような店を目指したい」と、野中社長は野心を隠さない。

とのことだ。

百貨店や専門店の顧客の取り込みを目指している。
正直なところ、今のあの内装のあの店舗で百貨店や専門店の客を取り込むことはけっこう難しいのではないかと思う。チープ感が漂いすぎている。
また陳列方法も垢抜けていない。

しかし、商品力はそれなりに評価されており、掘り出し物がある。
「しまらー」と呼ばれるファッション好きのしまむら顧客もすでに存在している。

もうすでに一部の顧客はとっくの昔に取り込みに成功している。

今後、この傾向はさらに強まる。

しまむらだけではない。
おそらくGMS各社の衣料品もさらにファッション化するはずだ。
西友の例でもあるように、かなりファッション化が進んでいる。

こうなると、「ブランド」はどうするのか?
「俺たちはファッションを売ってる」なんていうのは単なる独りよがりにすぎなくなる。

ほとんど同じような商品が並んだら、低価格のほうで買う消費者が増えるのは自然な流れである。
グローバルファストファッションは成長が止まりつつあるといわれるが、今後も低価格衣料品はなくならない。
かつてダイエーを筆頭とするスーパーマーケットで低価格衣料品が売られて、売上高を稼げた時期があった。
紳士服チェーンも低価格を武器に成長した。

グローバルファストファッションが仮に今後凋落しても、また新しいやり方の低価格衣料品が必ず登場するだろう。

それにしてもなぜ、衣料品だけは「低価格追放」のようなキャンペーンが起きてしまうのだろうか。
不思議でならない。

家電でも自動車でも超破格値商品は必ず登場する。
スマホも飽和状態なのでどんどんと低価格スマホが登場している。

低価格衣料品が登場するのはそれと同じである。

さて、今日から夏のバーゲンが正式にスタートする。
前倒しだとか言われているが、全然そんな気がしない。
これまでならもっと早い時期に開始された年もあった。
7月1日スタートなら驚くほど早いとは思わなくなった。

そんなわけで、投げ売りの掘り出し物探したいと思う。
低価格衣料品万歳。



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