物販において「物」は重要である。
「物」の良し悪しが売れ行きを決めることが多い。

「物」の良し悪しに差がなくなったり、明確な差が分かりにくかったりしたらどうなるか?
価格が安い方が選ばれるのである。
これは自動車も家電も食料品も衣料品もすべて同じである。

リーバイスの501というジーンズが3900円に値引きされてウェブストアで販売されていたら、知っている人は誰でもそこで買う。

先日発売されたスペルガの防水スニーカーがほしくてウェブ通販をあちこち見ていたら、6300円くらいで売られているサイトを発見した。定価よりも1500円くらい安い。
残念ながらまだ買っていないのだが、買うとしたらこのサイトで買う。

商品が同じで、価格が異なるだけだからだ。そして一番安い価格のサイトで買うのがもっとも効率的である。

「物」が同じ、もしくは差がなくなると究極的にはこういう買い方になる。
モノヅクリガーとかイシキタカイ系の人がいくら泣こうが喚こうがどうしようもない。自然の摂理だからだ。

「物」を売っている限りは価格競争に巻き込まれるわけだが、そうではないという売り方も中には存在する。
先日、掲載されたメガネスーパー復活の記事だが、「物」以外を販売した好例だといえるのではないか。
ご紹介したい。

瀕死の「メガネスーパー」が上場廃止目前に起こした奇跡の黒字化
http://news.livedoor.com/article/detail/11651557/

メガネスーパーは株式売買でときどき触っていた。
60円とか80円くらいの株価で、ときどき100円を超える高騰を見せる。
100株で売買して小銭を稼ぐにはちょうど良い銘柄なのである。

それはさておき。

メガネスーパーは14日、2016年4月期決算を発表しました。売上高は157億700万円、本業の儲けを示す営業利益は5億2,300万円、当期利益は2億6,000万円となりました。増収増益と黒字転換を実現しました。

同社の業績は長らく低迷していました。通期(非連結)の業績で見てみると、07年の売上高は346億円、営業利益は22億円、当期利益は11億円となっていました。しかし、08年には営業利益と当期利益が赤字に転落してしまいました。その後、赤字の業績が続くことになります。

直近10年の業績(通期・非連結)を見てみます。売上高は07年から15年まで一貫して減少していましたが、16年になって前年同期比9.9%増となり、減収から増収に転じました。営業利益と当期利益は08年から15年まで全ての期で赤字となっていましたが、16年でようやく黒字に転換することができました。

同社は債務超過に陥り上場廃止の猶予期間入り銘柄となっていましたが、継続的な資本増強策により16年4月期末の純資産は1億9,600万円となり、債務超過の状況を解消するに至りました。

同社は長期的な低迷からようやく脱出することができました。来期も増収増益を見込んでいます。

とある。
債務超過を乗り越えることに成功したのである。

その要因はなにか?

特に、不採算店舗の閉鎖、DMやLINE、顧客紹介施策、ポスティングといった費用対効果の高い広告販促に選択と集中を行ったこと、地域密着型の出店戦略として住宅街や小商圏の商業地に出店し低家賃を実現したことが販管費を下げることに大きく貢献しました。

そして、業績改善の要因において見逃すことができないポイントがあります。それは、同社は「モノ」を提供するというよりも「コト」を提供することに注力してきたということです。

同社は「目から元気に!」をコンセプトに、眼の健康寿命に配慮したアドバイスや、視力検査やフィッティングといった「アイケア」を重視したサービスの提供に注力してきました。

近年に広がりを見せていた低価格専門店の台頭による販売単価の下落やコンタクトレンズの普及によりメガネ市場は縮小傾向にありましたが、一方で、高齢化の進展による老眼鏡市場の拡大や、マルチメディアの普及に伴う近視用メガネ需要の拡大という市場機会が顕在化していました。同社はこの市場機会に焦点を絞るために、「アイケア」を重要視するようになったのです。

「アイケア」はコンサルティング技術や丁寧な接客が不可欠です。問診スキルの向上やメガネに起因する眼の負担を軽減させるアドバイスの提供、加齢対応型の検査の拡充といったことが必要です。また、専門的な知識を顧客に的確に分かりやすく伝えることも必要です。同社はそのための従業員研修などには積極的に投資を行ってきました。

「アイケア」を強化するために、2014年10月に「アイケア研究所」を立ち上げました。有識者や企業と提携し、眼の健康寿命を延ばすための解決策の研究や商品・サービスの開発を行っています。

15年3月には「アイケア」を重視した新業態店舗「DOCK」をオープンしました。店舗レイアウトやコンサルティング等の接客を徹底的に見直しています。

とある。

メガネは単なるファッションアイテムではなく、元来は医療器具である。
衰えた視力を補完する器具である。
そのため、スペックが重視される側面がある。

ここが洋服とは異なる部分である。
洋服でスペックが重視されるのはユニフォーム系くらいだろう。
それ以外のデイリーユースの洋服なんてそんなに高スペックは必要ない。

メガネの場合はスペックはやはり重要だ。
そこでその機能に対するコンサルティングを行うという「コト」販売は理に適っている。

百貨店からギフトショップ、場末のスーパーマーケットまで昨今では「コト」販売を呪文のように唱えている。
その結果できた売り場が、ベンチが多めに置かれていただけとか、休憩スペースが広くなっただけとか、わけのわからんモニュメントが設置されただけとか、そんな程度である。
ベンチが多めに置かれたら「コト」販売なのか?まったく意味がわからない。

そんなあまたある「コト」販売の失敗例だが、メガネスーパーの取り組みは数少ない成功事例といえる。

洋服にはメガネほどのスペックは求められないから一概に同列には論ぜられない。
それでもコンサルティング販売のエッセンスを導入できるのではないか?

そのためには販売員がファッショントレンドやコーディネイトだけではなく、素材や原料のことまで広く知識を網羅しておく必要があるのではないか。
筆者がもっとも苦手とする縫製やパターンについての知識も必要になる。

長年販売に携わってきた人たちでも素材や原料のことは驚くほど知らないことが多い。
それほどに素材や原料と販売員は距離が隔たっており、同業界のメンバーでありながら、ほとんどお互いのことを知らないのが現状である。
ここの距離感を縮めることはできないだろうか。それができれば、販売方法も変化すると思うのだが。

流通業界やアパレル業界には「なんちゃってコト」販売が掃いて捨てるほどある。
いや、ほとんどの「コト」販売は「なんちゃって」レベルである。

メガネと異なり、それほどのスペックは求められない衣料品だが、何とかメガネスーパーのような成功する「コト」販売を企画立案し、実行してもらいたい。
それだけが価格競争から抜け出せる唯一の道だからだ。